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log-093 狙いはゆったりせまって

…大闘争会の昼休憩中、生徒たちは午後の部に備えての作戦を練ったりしていた。


 今のところお互いに発散しまくり、様々な溜まっていたものが失われて、すっきりとした表情を浮かべるものが多いだろう。


 だがしかし、それでも抱え込むものが多いものはいるもので、健全であれと学園で習っていたとしても、腐ったものをどうしても持ってしまうものだっているのだ。


 

「くそっ!!平民風情に貴族側が後れを取るだと…!!そんなこと、有って良いわけがない!!」

「ええ、そうでやんすそうでやんす!!」

「我らが力が劣るはず等もあるはずがございません!!」


 闘技場内の、とある廊下にて、壁に手を打ち付けて怒りをあらわにしているのは、貴族側の学園の生徒。

 その取り巻き立たちと一緒になって、今の戦況に対して文句を言っていた。



 もしもジャックがこの場にいれば、この光景を見て典型的なコテコテの貴族至上主義のおぼっちゃんたちだろうとつぶやいただろう。


 どれほどの教育を盛ったとしても、性根のねじ曲がった者はどうしようもないことがあり、彼らはまさにその例の一つとしてあげられる不名誉を持っていた。




「だが、妨害は厳しいか…この大闘争会自体、事前に不正ができないように色々とされていると聞く」

「ええ、かつてあった事件の中で、グレートゴンザレス爆殺事件とか、国王陛下不毛の悲劇などの例があって…開催数日前からギルドの手によって調査が入れられ、仕掛けられないようにされているときくでやんす」

「悲しいかな、本番でも警備の人たちが目を光らせているそうです。今年はその中に、首無し騎士が…デュラハンが混ざっていて、全力で妨害を辞退したいと泣きを入れた人もいるとか」

「やばいモンスターが混ざってないか、ソレ」



 取り巻きの言葉に、ツッコミを入れるが、間違っていない事実でもある。

 実際に、デュラハンのルミがこの場では警備隊として混ざっており、不正に対してしっかりと眼を光らせていたりするのだ。


「まったく、大体モンスターがいる時点で相当あれだと思うがな…観客席にも確かいたな」

「ええ、確か蜘蛛と木の…平民側のやつが、主にいるらしいでやんす」

「はっ、恐ろしいものをよくもまぁ扱えるものだな」

「でも、美人だったなぁ…人間でないとはいえ、それでも一夜を共にしたくなるような」

「気持ちはわかるが…だが、相手はモンスターだぞ。下手すればあの、モンスター狂いのエルフに狙われる要因にもなるだろ…」


 いくら腐っている部分があっても、怖いものは怖い。

 正直言ってモンスターよりも、トラウマを植え付けるような相手のほうが恐ろしくあるのだ。


「まぁ、そんなことはどうでもいいとして、今はこの得点差か…午後の部では得点が大きいものもあるから逆転もできるが、圧勝したいな…」

「しかし、それができるでやんすか?」

「難しい。一丸となっても、うまくいくかは…」



「---お困りのようですが、それならばどうにかしましょうか?」

「「「!?」」」


 突然話しかけられ、三人が思わず振り向けば、そこに一人の男が立っていた。


「何者だ?」

「ははは、単なる一平民でございます。尊き貴族のご子息様方が何やら悩まれている様子を見まして、力になりたいと思いまして、声をかけたのでございます」

「力になりたい、だと?妨害工策ができるのか?」

「いえいえ、流石に無理でしょう。今更用意したところで、間に合いません。しかし…妨害はできずとも、あなたがたのパワーアップぐらいであれば、手を貸せますなぁ」

「パワーアップだと?」


 首をかしげていると、その男は彼らの手に何かを手渡した。


 それはキラキラとした宝石のような見た目をしているが、薬の一種らしい。


「これは今、商売のために作っております特製のパワーアップ薬『デルデタンG』!!ひとつだけでなんと百人力に値するだけのパワーアップを、遅効性ながら与える薬です!!」

「遅効性?今すぐにではないのでやんすか」

「それだとちょっと、意味がなさそうだが」

「いえいえ、そればかりは仕方がないこと。薬を飲んで急にパワーアップすれば、不自然がられますよね?だからこそ、後半になるにつれてじわりじわりと力を増して…最後に一気に圧倒的な力を見せつけて、一躍その場のヒーローになるような演出のために、調整されているのです!!」


 不自然なパワーアップよりも、じわじわと覚醒していくような演出にすることで、疑われにくくするらしい。

 その説明を聞き、彼らは考えこみ…怪しいと思うところもあるが、魅力的な提案には抗いたかった。


「最初からできないが…なるほど、それならば確かに怪しまれにくく、ゆっくりと力を付けるか…良いだろう、これをいただこう!!いくら、必要だ?』

「いえいえ、お題はいただきません。ご立派にその力を発揮していただければ、それだけ十分価値がありますでしょう。もしも、気に入っていただけたのであれば、将来的により深い商売のお話をさせていただきたいところですが」

「ふむ、それならば今はありがたくいただくとしよう」


 怪しいところが多いとはいえ、勝利の誘惑に彼らは引っ張られ、意気揚々とその薬を飲んで会場へ戻っていく。



「---ええ、確かにいらないですとも。必要ないですし、何よりも…蟲野郎や魔物狂いのやつらとは違う、『ヒト』としての都合の良い実験台として見せてもらうだけですからねぇ」


 その姿を見て、後に残されたその男はにやりと怪しい笑みを浮かべて、こっそりとその場を後にする。


 大人よりも、こういうちょっと勘違いしているような輩を利用する方がやりやすいのだ。


…その薬は、確かに超人的な力をゆっくりともたらすだろう。

 そこはしっかりと、約束は守られている。


 しかし、その代償に関しては…話されていないのだ…






それはこっそりと行われたこと

彼らは気が付くこともない

いや、気が付いた時にはすでに遅く…

次回に続く!



…王道っぽいけど、割と単純に引っかかる人は多そう…

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