第十一章 シュブラウス城の騎士たち(5)
(竜眼と邪眼は似ている)
キリウ・リンドの眼には、何か得体の知れない力が宿っている。それは魔法を見抜くだけのものではなく、邪眼と同じように人の心を魅了する力を持っているのかもしれない。あるいは、人を操る力を。
ギレンの動揺を知ってか知らずか、特に構う様子もなくキリウはグウェイに向かって説明を続けた。
「スレイブズ隊長は、よく言えば誇り高く、悪く言えば融通の利かない性格です。彼は女性の騎士というのを認めたがらない。以前入城されたとき、それをこぼしていましたから」
「ふむ。それで、たとえば試合に負ければどうなると?」
グウェイは淡々と切り返した。外では気弱そうに見えたキリウだが、今この部屋の中では、ルーン王国の最高精鋭部隊・騎竜百人隊の元隊長である英雄ル・グウェイに対して、いささかも畏れるところがない。
「負ければ、彼らの『規律』に組み込まれます」
「具体的に」
「……隊長命令に従わなければなりません」
「もし、従わなかったら?」
キリウはいったん口を噤み、周囲に気を配った。それから、おもむろに言葉を継いだ。
「彼らの『規律』により、私刑に処されます」
「シドは知らんのか」
反射的にギレンは首を竦めた。グウェイが語気を強めるときは、彼の中に怒りが渦巻いているときだ。キリウは深く溜め息をついて、低い声で答えた。
「知ってますとも。――彼らを監視するのが、僕のつとめです」
そのとき部屋に大きなノックの音が響いた。三人は一斉に緊張してドアのほうを向いた。
「おにいさまぁ! ギルがどこにいるか知らない? 荷物を部屋に置いたっきりで、ちっとも戻ってこないの!」
三人は安堵の溜め息を吐いた。
「ここです! すぐに行きます」
ギレンの返事を聞いたキリエは、なぜギレンがそこにいるのか理解できずに首を傾げた。
「それじゃ、わたし行きますね。ありがとう、えっと……」
「キリウと」
どう呼べばいいか逡巡したギレンに、キリウはさらりと優雅に答えた。
「キリウ。お気遣い感謝します、これからもよろしく」
二人は立ち上がって握手を交わした。キリウのほうが、少しばかり上背がある。
「ギルと呼んでも?」
「ええ」
「じゃあ、ギル。妹をよろしく。それから、何か困ったことがあったらすぐに相談してください。遠慮は要りません」
「はい。では、お言葉に甘えて」
キリウはそのまま暫く、ギレンの手を握ったまま彼女をみつめていた。グウェイが咳払いすると、はっと気づいて手を離し、頬を赤らめた。
「すみません」
「いえ……」
かえってギレンのほうが気恥ずかしくなり、そそくさと部屋を出て行った。グウェイが仏頂面になっていたのは、言うまでもない。




