表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の剣  作者: 高倉麻耶
第一部 第九章
69/139

第九章 帰還(3)

 郊外の公園に特設された、真新しい円形広場。外側からは、ここに何があるのか、どこに入り口があるのか、見ただけではわからないようになっている。七人は哨兵を伴ってその広場を訪れ、五人で巨大な魔法陣の作成に勤しんでいた。


 魔法陣は、直径が二ルニアほど。ようやく下地が半分ばかりできあがったところである。下書きの線をチョークで引いた上に、銀粉と顔料を混ぜて作った黒い絵の具で、清書をする。いま彼らが描いているのは、四つ目の陣――西方陣。北東から始めて、東、南を描きあげ、西ときた。あと北西の陣さえ描いてしまえば、逆五芒星の完成、すなわち王都全体を覆う結界の完成となる。


 ディーンは、描きかけの円のちょうど中心あたりに立っていた。そして、数歩離れた場所に立った少女キリエの瞳を、まっすぐな眼差しで射抜いている。


「もう、きみは自分でその答えに気づいてる」

「じゃあ、やっぱり殿下は……でも、どちらがそうなのですか?」


 そこにいる人間の中で、キリエの質問の意味がわかるのは、ディーンとカイトだけだった。彼女はチョークが折れそうなくらい拳を握りしめながら、震える声で言った。


「天竜の転生者は、一人だけのはずですよ?」


 彼女の様子を危ぶんだシグヌスが、慌てて横槍を入れた。


「待って、キリエ。僕にもわかるように話してよ」

「そうね。ごめん」


 キリエは、心優しい青年・シグヌスとすっかり打ち解けて、友だちの口調で話すようになっている。本当は年上の彼に対して敬語を使わないのは失礼なのだが、シグヌスは勝気なキリエの性格を気に入っていて、同等の立場で話すのを少しも厭わない。


「わたしは、妖精の末裔である『砂の民』の言い伝えを母から教えられたの。すべての産みの親である『天の竜』が、千年に一度、地上に一人の転生者を持つのよ」

「……それが、公子殿下なの?」

「そう」


 シグヌスは激しくまばたきをしながら、ディーンとカイトの顔をかわるがわる見つめて、そのあとマルス・メリルに縋るような視線を送った。急に矛先を向けられたマルスは、「儂は何も知らんぞ」と言いながら、慌てて手を横に振った。


「天竜の転生者である証は、天竜の記憶と、他に誰も使えない魔法が使えること。それから……」


 そう言いながら、キリエは胸ポケットのボタンを外した。すると、小さなサリーが真っ赤な顔をのぞかせた。


「この子が、主と認めること」


 キリエがポケットに何をしのばせていたのか、シグヌスはこれまでずっと知らなかった。


「うわっ、火蜥蜴だ!」

「なに?」


 火蜥蜴と聞いて、マルスは眼鏡を押さえながらキリエに駆け寄り、サリーの姿をまじまじとみつめた。


「ほう、驚いた……本当に、本物の火蜥蜴じゃ。あんたの親御さんは『砂の民』か」

「はい」


 キリエはサリーを掌の上に乗せ、そっと撫でた。サリーがちろりと舌を見せたので、火を吐くかと恐れたマルスは一歩退いた。どうやら、火蜥蜴では痛い目に遭ったことがあるらしい。


「こりゃ、危ない。こっちに向けるでない」

「すみません」


 サリーは素早くキリエの腕を伝って、また胸ポケットに隠れた。キリエはポケットのボタンを元通りにかけた。


「公子殿下、この火蜥蜴サリーとわたしは、心が結ばれています。だから、わかるんです。サリーはあなたがた二人を主と認めている……つまり、二人とも『天竜の転生者』なのだと。いったい、どういうことなのでしょう?」

「ぼくらは二人で一人なんだ」


 ディーンとカイトは同時に答えた。二人の声の高音と低音がぴったり重なり、不思議な響きで伝わった。まるで、それ自体が魔法そのもののような声。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ