第五章 ルーンの妖精(14)
それから二年後、シドは妻を迎えた。相手はシェルメル家の縁者で、ヴルディという貴族の娘スクルドである。彼女は特に美人という訳ではないが、気立てのよい女性で、とても素直な性格だった。
飾り気がなく、女だてらに剣をもって武道に勤しむという男勝りなところを持っていたため、貧弱な貴族の男たちは彼女を「変わり者」として敬遠していた。シドからは二つ歳上で、婚期も逃しかけていた。
スクルドは、相手が王弟だからといって媚びたり、下手に気を使ったりしなかった。道場では常に真正面に立ち、対等の立場で堂々と話しかけた。しかし無骨であると同時に、女性らしい繊細さや人を平等に気遣う優しさも持ち合わせていた。
何よりシドは、スクルドの健康的な明るさを好きになった。彼女はいつも笑顔で、見るだけでこっちも元気になってくる。シドは彼女の存在に救われている自分を感じた。セラスは月のような女性だが、スクルドは太陽のようだと思った。
ヴルディ家は宮中から遠ざかっていたので、マイア姫を娶ってもらえなかったヴェルレウス家からの嫌がらせを受けることもなく、婚礼は無事に済んだ。人々は影で「変わり者同士」と噂したものの、それを悪く思う者は特にいなかった。
ただ、唯一王妃だけは、頑として祝辞を述べなかった。セラスとシドの二人は、暗黙のうちに魂の訣別をしたのだった。




