第四章 緋鬼ル・グウェイ(11)
「でも……今で言う『妖精』は、一万年前の『危機』で、ほとんど滅びてしまいました」
ディーンは、ぽろりと涙をこぼした。それに感応してカイトも俯き、袖で目もとをおさえた。
「とても美しく、清らかな心を持った生き物でした。彼らを救えなかったことが心残りです。だから、ぼくらは……今度こそ、人間が滅びないようにしたい」
きらめく夜空のような両眼を赤くして、流星のように涙を頬に落としながら、はっきりとした口調でディーンは宣言した。かたく決意を抱いたその表情をみれば、誰しも胸を打たれずにはいられなかった。
「ディーン様」
唐突に、グウェイがつぶやいた。
「あなたは先ほど、竜の王と人の王は違うと仰られた。しかし、わたしは思う。あなたが人の身に生まれたのは、人の王になるからではないのか。だから、賢者はあなたをヴァーン公殿下に預けられたのでは? いや、むしろ――わたしは、あなたに望む。人の王となられることを」
「ありがとう」
間髪いれずに、ディーンは答えた。
「でも、未来のことはまだわからない。ぼくら、子どもなんです。もう少し大人になるまで待ってください――そうしたら、答えが出せるようになると思うから」
その言葉を聞いたグウェイは、シェルメル侯と同じように、ディーンの前に跪いた。
「ではわたしを、あなたの騎士に。生涯、この命にかえてお護りいたします」
グウェイの真剣な眼差しを、ディーンは目を逸らさずにみつめた。そして、カイトと顔を見合わせたあと、再び彼の目をまっすぐに見ながら言った。
「わかりました」
その瞬間、ギレンは立ち上がった。何かが、彼女の心にひらめきを与えた。ギレンはグウェイに並んでカイトの前に跪き、こう言ったのである。
「わたくしを、あなたの騎士に。この身が砕け散るまで、必ずお護りいたします」
この日、グウェイとギレンは「騎竜百人隊」を抜けて、正式に、公子ディーンとカイトそれぞれの騎士となった。シルヴェウス王は二人の行動を別段咎めだてすることもなく、「好きにせよ」と言って、あっさりと許可をおろした。
ディーンとカイトの二人は国王に初めて拝謁したあと、二人の騎士と二頭の輝甲竜をともない、我が家である「黒の森」の居城へ帰っていったのだった。




