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(4)悪役令嬢は終わりを迎える

「なんで、なんであんたがここにいるのよ!?!?!?」



 そう血走った目で叫ぶ彼女に、私は何も答えられなかった。



 この部屋に監禁されて、何日経ったか。

 窓もないこの部屋では、外の状況なんてわからない。

 私は眠りたいと思えば眠り、空腹を感じればご飯を食べる。

 そんな日常だからか、いつの間にか体内時計が狂ってしまった。


 …………このまま、自分自身も狂ってしまえばいいのにとすら思った。


 そんな状況が変わったのは、彼女__ヒロインが大きな音を立ててこの部屋に入ってきた時だった。



「おかしいじゃない!!アルバートルートに入ったのに、ゲームよりもイベントは少ないし!!あんたはいじめてこないし!!どうなってるのよ!!」



 ああ、なるほど。


 捲し立てる彼女に、私は理解した。


 彼女も、私と同じ転生者なのだろう。

 しかも、あのゲームの知識がある転生者。

 だから、あんなに私のことを敵視していたのか。



「そうよ…………あんたがここにいること自体がおかしいのよ。なんで、あんたがここにいるのよ!!!!」

「…………アルバート様に、監禁されているのよ」

「は?」



 私の言葉に、意味が分からないと眉間にしわを寄せ私を睨むヒロイン。

 その表情は、まるで般若のお面をかぶっているようだった。

 でも、そんなの関係なかった。

 彼女の自分勝手な言い分に、今までのストレスから忘れていたあの男への恨みと怒りが湧き上がってきた。


 貴方は、あの男からの愛が欲しいというの?

 大事なものを一方的に壊され。

 居場所を壊され。

 いたくもないこんな場所に監禁され。

 望んでいない行為を強いられる未来が決まっている。

 女としての尊厳を奪われ。

 憎い男との子供を産む未来が決まっている。

 こんな立場、欲しいならくれてやる。

 あんな男との子供を抱くぐらいなら、今ここで死んでしまいたいぐらいなのだ。


 それだけ、私は追い詰められていた。



「変わってくれるのなら、変わってほしいくらいよ。なんで、なんで両親を兄をエマを殺したあの男に子作りを強いられなきゃ」

「…………は??」



 私が呟いた言葉に、ヒロインの顔から表情が抜け落ちた。



「え、なに?あんた、アルバートとそういう関係になってるわけ?なんで?愛されているのは私なのよ?だって、私はアルバートルートを選んだんだもの。私が愛されるはずなのに、なんであんたが私のポジションを乗っ取ってるわけ!?!?!?」

「うぐ!?」



 発狂したように叫んだヒロインは、私を押し倒して私の首を掴んで締め始めた。

 酸素が入ってこない苦しさと首にかかる圧迫感に、思わずヒロインの腕に爪を立てるけど彼女の腕は外れない。



「あははははっ、そうよ!!あんたも転生者って奴なんでしょ。私と同じ!!それでアルバートを狙ってたんでしょ!!でも、残念。アルバートは単純に奥手なだけなのよ!!きっと私に手を出したくても出せなくて、代わりにあんたで我慢してるんでしょ!!!!」

「がはっ!?」

「でも、ざーんねん。あんたはここで死ぬの。そうすれば、何もかもが元通り。きっと、アルバートも目を覚ましてくれるはずよ。だって、アルバートが愛しているのはヒロインである私なんだから!!」



 酸素が回ってこないせいか、少しずつ視界がぼやけてくる。


 ああ…………でも。

 このまま、暴れなければ…………私は死ぬことができるのだろうか?

 あの男から性暴力を振るわれるであろう未来に怯えなくて済むのだろうか?

 大事な家族に…………みんなに会いに行けるのだろうか?


 そんなことをぼんやりとする頭で考えながら、視界が真っ暗になっていくのを静かに見ていた。


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