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やまない、雨は、嵐はない

作者: アシカ

私は、カフェのソファーに座ってくつろいでいる。

カフェのサービスエリアに「水はご自由にどうぞ」と書いてある。

少し時間を遡る。ここは町中の駅前にあるおしゃれで小洒落カフェ。ドアを開けるとコーヒーの芳しい香りがする。内装のデザインはおしゃれである。内壁のクロスはグレー、天井はホワイトで店の奥には照明に照らされたグランドピアノが置いてある。BGMは店の雰囲気とマッチしたジャズである。個人で経営していることもありそこまで大きくないが、オーナーが拘って大切にデザインしたことが分かる。きっと長年の念願であったカフェの経営とおもてなしなのだろう。

前回来たときにオーナーと仲良くなりオープンしてから2年と聞いた。

そんなカフェに稲妻が、いや嵐が起きた。

わたしがサービスエリアにある水を汲とりに振り返ると「水がちょろちょろ」と流れる音がする。

「ああ、やらかした」状況を確認する。水の真下に本が置いてある。

ああ、思いっきり本が水を飲んでいる。

店内に嵐が起きたのだ。

私の思考は3秒「・・・」となる。

そして、感情がついてきた。何をすればいいんだろう?まずは助けを呼ぼう。「すみません。水をこぼしてしまったので、拭くモノいただけますか?」と動じた声で水をこぼしたことをしらせる。すると、オーナーが「やるから、いいですよ」と、優しい声が返ってくる。

そんな声と裏腹に自分の動悸が揺れているのを感じる。

オーナーがタオルを持ってきて拭いてくれる。私が「タオルをもう一枚いただけませんか?本を拭きます。」というと、タオルを渡してくれた。

柔軟剤のいい匂いがする。

本が、どれくらい水を飲んでしまったのか確認しながら、とりあえず大まかに拭く。

6冊くらいが水没被害にあっている。水を飲みすぎて本が酔っ払ってしまった。

フラフラの本を拭いながら背表紙をみると、「事業計画書や魔法の習慣」、「心配すんな。全部上手くいく。」をはじめ流行の本である。

店長はその間に床と机の水を片付けてくれた。

さりげないミスでもそこから新たな展開が生まれることを知っている。

徒然なる日常から試練があり活かすのである。

運がいいことに、私の家には3000冊ほど本棚に収まっている。

さぁ勇気を出して一歩踏み出そう。「オーナー好きな本はありませんか?」

「結論が分かる。長くない名言や格言が好きかな」と言っていた。

「わかりました。今度持ってきますね。」「気にしなくていいよ。」

「自分の気が収まらないですから持ってきますよ。」

こうして、本からまた新たな繋がりができた。

やまない、雨は、嵐はないのだ。


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