レイジ(1)
「あー、なるほど」
深い藍色のドレスを着た金髪の少女だ。いつだったか城門で止められていたあの少女である。
それともう一つ。 スラムの子供達が言っていた。病に罹る前日に「青黒い服の子と友達になった」という証言。それが頭の中で合致した。
つまりこの子がノイマンだ。そして吸血鬼とレイジは因縁がある。そこから導き出される答えは。
「私がレイジを釣るエサだって事ね?」
「…理解が早くて助かるわ、ルーシー。 私はルティカよ」
「ところで」
「ところで?」
気が付いたら原っぱの真ん中に居た。よく見ると遠くに街の城壁が見える。少なくともノースガーデンが見える程度の距離という事か。しかしまあ、さっきから頭が痛い。
「なんかずっと頭痛いんだけど。私の血吸った?」
「取引材料に傷なんか付けるわけないでしょう、あなたが勝手にお酒をがばがば飲んで二日酔いになっただけよ」
二日酔いか…。言われてみれば昨日客と飲んでた気がするようなしないような。今は太陽が真上に来ている。攫われたのが昨日なら今頃は父さんレイジが大騒ぎしてるかもしれない。
私は特にする事も無く叢の上に座り込んだ。
「ねえ、レイジと何があったのか聞いていい? 私、あいつのこと何にも知らないのよ」
私が訊けず、レイジが答えようとしなかった事。たぶん、これを第三者から知ろうとするのはズルだ。でも。きっと、これからレイジとルティカが対峙すれば否応無く知る事になる。
「でしょうね。知ってたらあんな奴を雑用に使ったりしないわよ。いいわ、教えてあげる。
あいつは嵐の王(Tycoon of RAGE)、空と海の精霊皇よ」
「精霊皇…」
「そ。カミサマって事よ」
魔法や宗教に疎い私でも知っている。この世を作った6人の神様。その内の一人。空と海の精霊皇。
「只者じゃないとは思ってたけど…まさか神様とはね。」
「そう。私達ノイマンという半端な存在を作り出した奴らよ。私達は精霊を使役できる立場に居ながら、魔力を血液からしか供給できない」
「でもニルがノイマンは遊び半分で血を吸うって。女子供からしか吸わないとかなんとか」
「遊び半分じゃないわよ!必要に駆られて吸ってんの!…まぁ、味は選り好みしない事もないけど」
ノイマンにとっては女子供の血の方が旨いという事か。
「ああそうそう。そのニルも精霊皇よ。闇と死の精霊皇ニルルフェル」
そう言えば前に同僚とか言ってたな。…という事はレイジは神様の重圧に耐えかねて逃げて来たって事だろうか。
「奴は精霊皇を辞めたがってるのよ。だから私が代わりに精霊皇になってあげようってのよ。神様になればこの半端な体ともおさらばよ」
神様かあ…。実感わかないなあ。
魔法使い以上のものが来るとは薄々思ってたけど、まさか精霊皇とはね。
そうか、私は神様に薪割りやら煙突掃除やらやらせようとしてたのか。…いや、魔法でいい感じにやってくれないかな。
そんな事を考えていると叢の向こうからやって来る人影が見えた。
「嵐の王」のとこのルビが上手く機能せずやむなく()書きにしました。
締まらんなあ…。




