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忍び寄る影(3)

※意味不明な単語は全てフレーバーなので意味が分からなくても読み飛ばして大丈夫です。

喰わない者(ノイマン)…」


ソフィア先生が苦々しく反復した。え、なに?みんな解ってる感じ? 解ってないの私だけ?


「ニル、ノイマンって何?」


プロトエンジンとヒト族(ヒューム)の中間の存在、いわばプロトヒュームといったところじゃな。いわばヒュームのなりそこないよ。あやつらは遊び感覚で人間の血を吸いよる。血を吸う時に流し込まれる唾液がこの病気を引きおこしておるわけじゃ。ほれ見てみい、もうほぼ治りかけとるが首筋に吸い跡があるじゃろ」

「そんな(もん)が生き残っていたとはねえ…。長生きしてるつもりだけど実例は初めて見たよ」


ニルとソフィア先生が難しい話をしているのを、なんもわからんと苦々しく眺めていると、レイジが横に来て「要するに吸血鬼(ヴァンパイア)って事だよ」と囁いた。


「ヴァンパイアって…御伽噺でしょ? …え、本当にそんなのが居るの?」

「居るんだよ、本当にたまにだけどね」


「安心せえ。昔話のヴァンパイアのように吸われからといって同族にになったりはせん。ただこうして熱を出して寝込んだり幻覚を見たりするだけじゃ。私の知る限りそれで死んだ奴も居らん。だから普通は風邪か何かと勘違いさて終わりじゃ。普通はな」


「今回は普通じゃないっていうの?」


「うむ。こんな一ケ所で連続して吸い続けるのは稀なんじゃ。奴らは群れたりせんし、一ケ所に留まったりもせん。闇から闇へ、孤独に人知れず…じゃ。だが、今回はむしろ見せつけているように血を吸いまくっておる。ここにノイマンが居るぞ、とな。」


ニルはそこでレイジを見た。心当たりがあるだろ?とばかりに。


「じゃあそのヴァンパイア…ノイマン?を捕まえないと被害が増えるって事?」


「そういう事じゃ」


ニルは診察していたマリのシーツを整え直した。今は三人とも静かに眠っている。


「さて帰ろうか。ソフィア殿、それではまた」


「ああ。いつでも寄りな。あんたなら大歓迎さニルルフェル」




ガス灯が完備された街の中と違って、貧民街の夜は真っ暗だ。二つの月の光とランタンの灯だけではいささか心もとない。街の外壁を頼りに進んでいく。


「レイジ、わかっておろうな。今回の件、お前が招いた事だと」


「ニル、ルーシーの前でその話は」


「いいや、嬢にはお前を連れ戻しに来たという話はしてある。それに…いつまでも隠し通せると思うなよ。」


レイジは押し黙った。


「お主、自分の事を魔法使いだとかぬかしておったそうじゃな。ふざけるのも大概にせえ。もし今回の件、お主でカタを付けられなんだら、わしがお前の正体をルーシーにバラす。ゆめゆめ忘れるなよ」


一方的にそう言うとニルは夜の闇にすぅと溶けて居なくなった。


近くで秋の虫が鳴いている。遠くで梟のなく声がする。


ねえ、レイジ。あんた何者なんだい? ニルとはどういう関係? ノイマンとどんな因縁があるんだい? 色々聞きたかった。でも声に出すことは出来なかった。


それは今までも聞きたかった事であり、レイジが隠したかった事だ。今ここで聞くのは違う。でも。


でも。


見上げた空は街の中より多くの星が見えた。


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