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魔女の告白(1)

「うわっ!!」


店を飛び出してわけもわからず走っているとお婆ちゃんとぶつかりそうになって慌てて足を止めた。ぶつからずに済んだものの、びっくりしたのかお婆ちゃんがふらついたので抱き抱えるようにして支えた。


「ごめん、おばあちゃん。大丈夫?」

「大丈夫? あんた、そりゃあこっちのセリフだよ。どうしたんだい、いったい」


あたしはどうもしてない、と言いおうとしたところで言葉を止めた。お婆ちゃんの年季の入った指が私の目尻を撫でたからだ。そうか、私、泣いてたのか。


「ほら、こっち」


お婆ちゃんに言われるがまま手を引かれて場所を移す。見た目よりも健脚だ。辺りを見回すとどうやら商業区の奥の方まで走ってきていたようだ。私達はそのまま商業区を抜けて『きれいな川』のほとりまで出た。日が傾きかけて西の空が茜色に染まり始めていた。

 二人で川辺の草むらに座る。お婆ちゃんが差し出したハンカチで目を拭うと涙はすぐに止まった。そもそも自分でも何が悲しくて泣いてるのかわからないのだ。



「落ち着いたみたいだね」

「ありがとう、おばあちゃん」

「いや、なに」


ハンカチは洗って返した方がいいかと思案していたところ、お婆ちゃんがスっと取り上げて懐に閉まい、皺くちゃの顔を歪めてにこりと微笑んだ。頭の後ろで一つに纏めた、いまどき流行らない紫に染めた白髪が揺れる。


「まあ、なんだ、若いうちは突っ走るのも手だと思うがね。心配ってのはその時になってから考えりゃあいい事だ」

「大丈夫よ、お婆ちゃん。そういうんじゃないから」

「そうかい?」


お婆ちゃんは何だか深刻な悩みだと思い込んでいるようだが、よくよく考えると「変な客とそれを庇うレイジがムカつく」というだたそれだけの事だ。


「立ち直りが早いのが自慢なんだ、あたし」

「そいつはいい事だね」


さて、と立ち上がる。もう店を開けなきゃいけない時間だ。急げば間に合うだろうか。だが。


「おばあちゃん、付き合わせちゃってごめんね。送ってくよ」


手を貸してお婆ちゃんを立たせる。


「ありがとね。でも大丈夫。これでも足腰は丈夫なんだ。心配には及ばないよ」


伸ばした腰をポンポンと叩くお婆ちゃん。言われてみれば杖も突いていないし、脚も真っすぐ立っている。自慢は虚勢ではなさそうだ。


「そっか。わかった。じゃああたし行くね。ありがと」


うん、と頷いて手を振るお婆ちゃん。私は背を向けて走り出した。

あ、そうだ。


「あたしルーシア! 木菟の耳羽亭って酒場で働いてるんだ。もしよかったらいつか寄ってみて!!」


って。

振り返るとお婆ちゃんはもうそこには居なかった。

1話辺りの文章量を増やしたかったのですが、場面転換の都合でいつもの感じで区切ってしまいました。更新間隔を短くするので許して下さい…。


※サブタイトルは変わる可能性があります。

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