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エスピリテラ漂流記  作者: 空創士
ブレイブス・チュードレン
9/123

8 ジャバルド狩り

【Javardos Hunting】


 ユリアは夜中に喉の渇きで目が覚めた。


起きて見ると、となりに寝ていたアイの姿が見えない。


“アイも喉が渇いて水を飲みに行ったのかしら?…”


そう考えながら廊下を歩いていくと、ある部屋から声が聞こえた。

今日、リアーが御殿を紹介してくれたときに「本を読む部屋よ」と言っていたのを思い出した。

ドアの前に立って耳を澄ますと、「ああ... レン! ああ... レン!」とアイの声が聞こえて来た。


“アイじゃない! レンとしているの?”


ユリアは書斎の中で何が行われているかを悟り、足音を立てないようにそっと離れ階下に降りていった。

心臓がドキドキしている。


いつもはおとなしいアイが、あのような声を出すなんて…

テーブルの上にあったコップをとり、水瓶から水を汲んで飲む。

そして、今日、森の中で見たことを思い出していた。

オーンが小藪で次々と妻たちと交尾をしたこと。


 オーンの猛々しい嘶き

 妻たちの悦びの嘶き

 オーンの激しい交尾

 妻たちの光悦の表情



思い出しただけで、ユリアは自分の身体が熱くなる気がした。

森の中でラピテーズたちが交尾しているのを見たときにも熱くなった。

そしてラピアから、「ユリアたちもしたくなったらしていいわよ」と言われた。

「あなたたち交尾したいって匂いがプンプンしているわよ?」とも。


思わずリュウの顔を見たユリア。

リュウもユリアを見たが、すぐに赤くなって視線をそらせた。

それはユリアも同じだったが。


だが、森の中の道を歩き続けているとリュウから話しかけられた。

(ユリア...)

(なに?...)

(おれと......... )

(しないわ!... そんなに私としたいの?)

(............)

リュウは何も答えなかった。



誰かが階段を降りてくる。

背の高い男の子 リュウだった。

リュウもユリアを見て驚いている。


「いやあ、肉をたらふく食べたら、しょっぱかったらしくて...」

「喉が渇いたんでしょう?私もよ」

そう言いながら、ユリアはリュウのために水をコップにいれてやる。

「ありがとう!」


 ゴクゴクと喉を鳴らして水を飲むリュウ。

12歳だが、背はとっくにユリアを超しており、すらっとした体だがかなり筋肉質だ。

白龍族の血のせいなのか、もう若者といっても通用する体格だ。頭もいい。


 ユリアとは六つ歳が違うが、リュウは物心がつき始めたころからユリアから離れなかった。

3歳になったころは、公然と「ぼくは大きくなったらユリアをおヨメさんにするんだ!」と言っていた。

10歳になっていたユリアは、もう女の子になって(生理が始まって)いたこともあり、“おませなリュウちゃんの言葉”だと思っていたが、リュウのその気持ちは大きくなっても変わらなかった。


 毎日、ユリアのあとをつけてまわり、エスコートをしたがった。

しかし、5歳になってからひいおじいちゃん(白龍王)による、次期白龍王になるための本格的な白龍王学がはじまり、ユリアに会いに来れるのは週末だけになってしまった。

そしてズミレンおばあちゃんが、「勇者王国に週末に通ってデートにうつつを抜かしているから、白龍王学がちっとも進んでないによ!」と言って、リュウがユリアと会うことが禁された。


 そのときにユリアは王国親衛隊のアレックスと“いい仲”になり、あわや結婚するところだったのを、ユリアの父親代わりとして彼女の面倒を見ていたレオ王が、アレックスがとんでもない女たらしエルフだと見破り、アレックスとユリアの関係も終焉を迎えてしまった。


 そのことをリュウは母親のアナに話したところ、アナもレオ王と結婚するのをズミレンおばあちゃん― アナにとっては母だが― に邪魔されたという経験があったため、烈火のごとくズミレンおばあちゃんに食ってかかり、さすがの教育ばあちゃんも折れ、リュウはアナママとレオパパ公認のもと、ユリアとよりをもどしたという経緯があったのだ。



 リュウは水をお代わりし、3杯飲んだ。

飲み終わったとき、コップをテーブルに置き、ユリアを見つめて言った。


「ユリア。なんでおれの顔をそんなに見ているんだ?おれがイケメンだから?」

「ばかねぇ。そんなこと思ってないわよ!」

「え、そうなの?」

「いや、ちょっとはかわいいけど...」

「だろ?だろ?おれって結構イケメンだろ?」

「そんなこと自分で言わないの!」

「............」


リュウに急に手を引っぱられた。


「な、なによ、リュウ?なにをする... フギュっ!」

思いっきり抱きしめられ、キスをされた。


ユリアはリュウにきつく抱かれ、キスをされながら幸せを感じていた。

“このまま時間が止まれば...” なんて考えていた。


するとリュウがそっと胸に触って来た。

“リュウ... 今日、森でさんざんラピテーズの交尾を見たから欲情しているのかな…”

まあ、元カレにはさんざん触られた胸なのよね。リュウがさわるくらい…

そう思って何もしなかった。


 ユリアは人族であるカイオの血を引いているからか、おっぱいは結構大きい。

Dカップはある。母親のメイはエルフなのでAカップしかない。

なのでメイは娘のおっぱいの大きさを羨ましがるくらいだった?


リュウはユリアがネグリジェの下にブラジャーをしてないに気づいた。

おっぱいをさわられて、ポッチがせり出し、“自己主張”したからだ。

自然とポッチを指先でなでるようになる。


「胸... さわってもいいかな?」

そっと聞くリュウ。


「こ、ここじゃダメよ...」

それを聞くとリュウはユリアの手をにぎって、二階へ向かった。


さきほどアイとリュウがいた書斎とは反対方向に廊下を歩き、客室の一つにはいった。

もちろん誰もいない。オーンの御殿には来客用に、多くの部屋があるのだ。


リュウはユリアのネグリジェの紐をほどき、前を(はだ)いた。

窓から差すライトムーンの神秘な光の中で、輝くような白い乳房が現れた。

そのままネグリジェを足元に落とす。


「リュ、リュウ...」

「うん?」

「わ、私のカラダきれい?」

「ヴィーナスみたいにきれいだ!」

「うれしい!」


リュウはふたたびユリアにキスをはじめた。

「リュウ... 私を 愛している?」

「オレはパパが何と言おうと、おばちゃんが何と言おうと、ユリアと結婚するんだ!」

「私たち姉弟(異母兄弟)なのに?」 

「ふふん。白龍族の力をもってすれば、遺伝の問題も解決できるのさ!」

「じゃあ、問題ないわけ? あぁ... あん...」

「白龍王学の傍ら、それも勉強したからだいじょうぶだよ!」

「あん... あん... 安心したわ... あっ!」


ユリアのパンティの上から、しきりにさすったりしていたリュウの手がパンティの中に入って来た。


ビクっ!

ユリアは反応した。


リュウは素早くユリアのユリアのパンティを脱がした。

ユリアは足をあげて脱ぐのを手伝った。

そして、フカフカの分厚い絨毯に横たえられた。


「きゃっ!恥ずかしい!」

そして顔を両手で覆ってしまった。


「ユリア...」

「なに?...」

「いいのか?」

「いいわ。したいんでしょ?」

「したい!ユリアと一つになりたい!」

「私と結婚してくれるのね?」

「うん。指切りげんまんだ!」

「ウソついたら針千本飲ーます!」


指切りげんまんは、パパが教えてくれた“約束を破らない誓い”だ。

「本来の意味は本気の恋を破らないという誓いだったんだよ」

とレオパパは教えてくれた。

それがあっという間に子どもたちの間で流行り、

今ではミィテラの世界中の子どもが使うまでになっている。



そしてユリアはリュウと結ばれた。


 ......... 

 ......... 


 しかし― 


初体験に関するユリアの期待は見事に外れた。

激痛のあとで、なんと、リュウはユリアの中で数回腰を動かしただけで終わってしまったのだ?


“え? ウソでしょ、もう終わったの?”とユリアは思った。

だが、リュウは若い。

終わったあとで、ユリアにキスをしたり、胸を揉んだりしているうちにすぐに回復した!


ユリアは、最初の時は、かなり痛さを感じたが、2回目ではあまり痛さを感じなくなった。

自分の上で一生懸命に(オス)務め(本能)を果たそうとしているリュウを見て思った。


“そんなに私を愛していたのね…”



 *   *   * 



 昨夜の事を考えながらアイは荷馬車にゆられていた。

モモコやマユラは、にぎやかに横を走っているミアやリアーやラピアたちとおしゃべりをしている。

ユリアは今日はなぜだか寡黙だ。

朝もあいさつをしたあと、黙々と朝食をとっていた。

アイはユリアとリュウの間に昨夜、何かがあったと思っていた。


 なぜなら、二人の目が合ったりするとリュウはにっこりし、ユリアは頬を赤めるからだ。

アイは二人の関係がより親しくなったのを感じていた。ちょうど、彼女とレンの関係が昨夜の出来事以来、グンと近くなったのと同じだ。


「ねえねえ、アイお姉さま。昨夜部屋から出てしばらく帰って来なかったけど、誰かとお熱いデートでもしていたんでしょ?」

とアイ自身、妹のミアに指摘されたほどだから、ちょっと敏い者ならすぐ気づくはずだ。

ちなみに、朝、ラピアと会ってあいさつをしたとき、

「あらっ、昨日の匂いほとんどしなくなったわ?どうしてかしら?」と言われ、

「こらこら、ラピア。お客さまの個人的な事情など詮索するのは失礼よ!」

とリア―からたしなめられていた。



 かれこれもう1時間以上走っている。

道は起伏のある丘陵地帯に差し掛かった、そのときだった。


急にあたりが薄暗くなり、オーンが空を見上げて何か叫んだ。

アイは雲の影に太陽がかくれたのかと思って同じように空を見上げたが...


目にしたのは水色っぽい半透明の物体― いや、生き物だった。

それを生き物と呼べるのかどうかはわからないが。

メチャ大きい。


雲と見間違えるほど、だだっぴろい半透明の体をゆっくりと波打たせるように、

動かしながら七色の空を悠々と東から西へと横切っていく。

それもどうやら群れらしく、40体以上泳いでいる。

中には小さいのもいて、大きいヤツから離れないように必死みたいだ。


ブォォォオ―――――ン…

ブォォォオ―――――ン…


その奇妙なものたちの鳴き声だろう、重々しい鳴き声が空から響いてくる。


ラピテーズたちはさかんに

「ホエーラゲだ!」

「ホエーラゲ」

とか叫んでいる。


 よく見ると、その水色の巨大な浮遊生物のあとを、白く細長い― 形は巨大な浮遊生物と比べると

まるっきり小さい― が、これも100体ほどが空中を曲芸飛行をするようにせわしく動き回っている。


 ユリアもモモコもマユラも驚いて見上げている。

別の荷馬車の上からもリュウやレン、レオタロウたちが空を指さしてワイワイ騒いでいる。


「ホエーラゲと呼ばれる空遊獣よ!大きいヤツは1キロメートル以上あるわ!白くて小さいのはドルーラゲって呼ばれる空遊獣よ」

リア―が教えてくれる。


ホエーラゲの作り出す影に驚いたのか、近くの森から一斉に飛び立った大きな鳥があった。

いや、鳥と思ったが、なんと翼が4枚もあり、ユニコーンのように頭から1メートル以上もあるツノが出ている!


「あれはボルホーンよ。とても臆病なの!でも、飼いならしたらいい足になるわよ」

ボルボ―ンは百頭以上の群れで、かなりの速さで南の方へ飛んで行ってしまった。


 みんな次から次へと現れる奇妙な生物たちを見ながら想像を絶する光景に唖然としている。

すると、ボルボ―ンたちが飛び去ったのと反対の方角― 北の方から紫色をした十字型のモノが急速にホエーラゲの群れに接近していった。

 それを見たのか、白いドルーラゲの群れは一目散に南の方角に逃げはじめた。

ホエーラゲの群れも心なしか速度を速めたようだ。


「あれはシャチラゲよ!空のギャングって呼ばれる怖いヤツ!」

リア―が眉をひそめて言う。

ホエーラゲの群れは、シャチラゲから逃げれないと分かったのか、小さいホエーラゲを群れの真ん中にして大きいホエーラゲで周りを守るような隊形に変えた。


 すぐにシャチラゲの群れ― 30体ほど― はホエーラゲの群れに追いつき、ホエーラゲの体を食いちぎりはじめた。シャチラゲの体が十字型に見えたのは、横に長く伸びている翼のためだった。

シャチラゲは長い翼を使って自由自在に高速で飛び、ホエーラゲの体の一部を食いちぎっては離れ、また接近しては食いちぎると言う攻撃をくり返している。


 ピィィィィ――――ン…

 ピィィィィ――――ン...


食いちぎられる度にホエーラゲは悲しそうな声をあげている。


 シャチラゲたちの饗宴は1時間近く続いた。

幸い、ホエーラゲはかなりの巨体なので、一体が全部食われてしまうということは起こらなかったが、

小さいホエーラゲたちを守るために周りを固めた巨大なホエーラゲたちは、かなりズタズタにされてしまった。

それでも小さいホエーラゲたちは無事だったようで、シャチラゲたちは満腹になったのか、来たのと同じ方向に飛び去って行った。


「まさしく弱肉強食の世界ね...」

ユリアが感極まったという様子でつぶやいた。

「いい言葉を知っているわね?」

リア―が褒めた。

「お父さまから教えていただきました」

「精霊界は厳しい世界よ。このあたりはまだのどかだけど...」



 隊列が止まった。

オーンがラピテーズたちを集めて狩りの手筈を指示している。

ユリアたちも武器を手にして打ち合わせに加わる。


「いいか、風向きは幸い西から東となっている。ナム、ロモ、おまえたちはロプス(ハンター犬)を連れて、あの山の東北へ。ラキとジルは山の東南へ。アミ、ユンガ、ザクリは真東へ。それぞれロプス(ハンター犬)を連れて行って合図を待つ、いいな?」


近くにあるうっそうとした山を指さし、

地面に棒切れで簡単な図面を描いて、みんなに策を授ける。


「はい!」「はい」

「はい」「はいっ!」

「はい」「わかりました」「はい!」


「イクシーとマヌー、ニクズはお前たちのカノジョを連れて、あの山の手前の中央、右側、左側で待ち伏せろ!」

「はい、お父さん!」

「了解、オーンおじさん!」

「まかせろって、オーンおじさん!」


使用人たちも荷馬車を置いて、弓矢をもち、ロプス(ハンター犬)とともに指示された場所へ音を立てないように移動していく。

イクシーたちも全員、弓を手に待ち伏せの場所へ移って行った。


「我々は、イクシーたちが万一取り逃がしたジャバルドを逃がさないように、イクシーたちの後方... そうだな、50メートルから100メートルほどのところで待ち伏せをしろ」

オーンとリア―、ラピアは分かれてイクシーたちの後方でスタンバイすることになった。


「じゃあ、私はユリアとアイとマユラとを連れて行くわ!」

「私はレンとモモコと リディアーヌとミアね!」

「では、儂はリュウとレオタロウだ!」


リア―がイクシーたちの後方右、オーンが真後ろ、そしてラピアが左端にひかえることになった。

それぞれの距離は100メートルくらいで、遠くからでも位置がわかるように葉を払った長い木の枝の先に三色キジの羽根をつけたのを立てる。誤射を避けるためだ。


「ピュ――っ!」ピ

「ピュ――っ!」

「ピュ――っ!」


しばらくすると、ジャバルドを追い出す役の使用人たちが口笛で準備オーケーのサインを出した。


「ピピピ――っ!」

オーンが『開始!』の口笛を高く鳴らす。


ガォガォガォーン!

ガォガォーン!


ガォガォガォーン!

ガォーン!


ガォーン!

ガォガォガォーン!


けたたましくロプス(ハンター犬)の吼える声が、山の向こう側から聞こえてくる。

使用人たちも弓をもっているので、ジャバルドが彼らの方角に逃げたとしても何匹かは射止められるだろうが、使用人たちは風上から追い立てており、ロプスもいるからそちらへ逃げるということは難しい。


ガォガォーン! 

ガォガォガォーン!

ガォガォガォーン!

ガォーン!

ガガォーン!


次第にロプス(ハンター犬)たちの咆哮が近づいて来る。

ジャバルドたちは山の斜面を走って下りてくる。


ユリアたちも武器を持って構える。

「手負いのジャバルドは危険だよ。向かって来たら、一目散に逃げた方が賢明よ」

リア―が弓を構えながらアドバイスする。


「間に合わないと思ったら、遠慮しないで私の背に乗っていいわ。ラピテーズの速度はジャバルドより速いから!」とも言ってくれた。

「わたしも走るのは早いです!」

豹族のマユラが“わたしは大丈夫です”というように言う。

「あら、そう?」



「しまったーっ!群れが分かれて逃げたーっ!」

そのとき、イクシーの大声が聞こえた。




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