7 ラピテーズ族
【Laptels Race】
オーンたちの集落に到着したのは2時間後だった。
集落という名前から、せいぜい50戸くらいの村を予想していたユリアたちは、その規模におどろいた。
家はすべて石造りで、見渡す限り石造りの家が続いていた。
門には警備の屈強なラピテーズが2頭いて、オーンを見ると片前足をあげて敬意を表した。
「オーン族長、お帰りなさい。今日も狩は順調だったようですね?」
「うむ!よい狩ができた!」
「で、そのヤドラレ人はドレイにでも使うおつもりですか?」
「いや、これらはドレイではないぞ。ゾリ!」
「そのヤドラレ人たち、なんで布切れを体にまとっているのですか?」
「ヤドラレ人ではないからだ、オゾ!」
「「はぁ???」」
門を通り、くねくね折れ曲がった広い道を歩く。
行き交うラピテーズたちは、オーンたちに片前足をあげてあいさつをする。
「ここが私たちの集落オーンゾリオよ!」
ラピアがかっこいいおっぱいを張って言う。
「オーンゾリオって言うの?」
「うん。オーンの治める集落っていう意味だよ!」
「すごく大きいわね? 何千人くらい住んでいるの?」
「10万人くらいかな。よく知らないけど」
布切れをまとったヤドラレ人がゾロゾロ歩いているというので、評判になったようだ。
そのうち、広い道の両側は野次馬のラピテーズたちでいっぱいになった。
「見ろ、若いメスのヤドラレ人がたくさんいるぞ?」
「オーンさまの慰み者にでもするのかしら?」
「まさか!オーンさまは、そんな悪趣味もたないわよ!」
「オスもいるわ!」
「でも、なんで体を布で覆っているんだい?」
「さあ、パラスピリトは宿ってないみたいだし... どうしてかな?」
ワイワイガヤガヤ騒がれながら、10分ほど歩いてオーンの家に到着した。
オーンの家は御殿だった!
なんと三階建ての石造りの大きく立派な宮殿だ。
玄関の前には7頭の美人ラピテーズが出迎えに来ていた。
おそらくオーンの妻たちだろう。どれも若く美しい。
オーンは早速、出迎えに来ていた若い妻2頭の手をとって御殿の中へはいって行った。
彼が若い妻たちと何をしに行ったのかは、言わずともわかる。
イクシーも弓を使用人のラピテーズに渡すと、カッポカッポとどこかへ走って行った。
「リアーにラピア、あなたたちはお客人たちの相手をしてあげて!」
一番妻のケイラはそう言うと、子どもたちを連れて奥へ消えた。
リアーとラピアの案内で応接室みたいなだだっ広い部屋に通されたユリアたち。
すぐにメイドらしいラピテーズが2頭、飲み物と食べ物をもって来た。
フルーツのジュースみたいなのと煎餅のような分厚い食べ物だ。
量はかなりある。おそらくラピテーズたちは体が大きいのでたくさん食べるのだろう。
フルーツジュースはちょっと酸っぱいがおいしい。
分厚い煎餅風の食べ物は、外側がコムギ粉のようで中に肉がはいっていた。
「けっこういけるわね?」
「うん。ボリュームもあるし!」
「うまいな!」
「味付けもいいぞ!」
「いくらでも食べれる感じね!」
「ところでさ、リアーにラピア...」
みんながおいしそうに食べているのをカーペットが敷かれた床にうずくまってニコニコと笑って見ていたリアーとラピアにユリアが訊く。
「なあに、ユリア?」
「オーンさん、なんであなたたちと...... その... アレをしなかったの?」
「アレ?」
「アレってなに?」
「ほら、帰り道でマーギュとピリュラーとケイラとしていたことよ」
ユリアは顔を赤くしながら言う。
「ああ、交尾ね?」
「なんだ交尾か」
「それは私たちはオーンの娘だからよ」
「オーンはお父さんなの!」
「えっ...? なーるほど...」
「マーギュとピリュラーってあなたたちと、あまり年変わらないみたいだから」
「あなたたちもオーンさんの妻かと思っちゃったわ」
「ラピテーズ種族は親子とか兄妹では子どもを作っちゃダメなの」
そりゃ、ミィテラの世界でもテラの世界でも、エルフであろうが、人族であろうが、ドワーフであろうが、親子や兄弟の間で子どもは作っちゃいけないのだが…
リア―とラピアによれば、リア―は2歳半、ラピアは2歳だそうだ。
「え――っ、2歳半と2歳!?」
「うん。私たち母親は違うけどね」
ケイラが6歳半でイクシーは4歳半。
マーギュが 5歳でピリュラーが3歳半だそうだ。
「ラピテーズは早熟だから。そうね、ヤドラレ人の年齢で言ったら、私は13歳。ラピアが12歳で、マーギュとピリュラーが20歳と14歳くらいらしいわ」
リア―がユリアたちがわかりやすいように、ヤドラレ人の成熟年齢をたとえて話してくれる。
「まあ、ラピテーズ種族は3歳から子ども産めるということね!」
ラピアがピンクの髪をなでながら言う。
ちなみにオーンは7歳でヤドラレ人でいえば30歳くらいらしい。
ケイラは6歳半で28歳くらいとのこと。
テースとテッサーは、マーギュとピリュラーの子どもだそうだが、2歳と1歳ちょっとなので、ヤドラレ人年齢でいうと10歳と7歳くらいだそうだ。
しばらく談笑をしていたら、オーンが家にいた妻たちとするべきことをしたらしく、応接室にやって来た。
「それでユリアたちは、これからどこに向かうつもりなのかね?」
「まだはきりと決めていませんけど、パラスピリトというのが気になるので、ヤドリレイ人たちの町へ行ってみたいと思います」
「そうか。このあたりはラピテーズ族が支配しているし、魔物とか悪霊とかもいないが、メイフィ・レイヴァルあたりからは悪霊がたくさん出るから気をつけた方がいい。エスピリテラは初めてのようだから、慣れるために何日かここに泊ってみてはどうかね?」
オーンの言葉に甘えて、エスピリティラになれるために、数日、お世話になることになった。
夕食は豪勢だった。
オーンの家族全員20人近くが集まっての食事はにぎやかだし、料理もうまかった。
今日の狩の獲物であるゾウミミウサギの丸焼きと3色のキジみたいに尾の長い鳥の串焼き。
何の肉かわからないが、美味いハムと腸詰め。色とりどりの葉野菜と根野菜のサラダ。
飲み物は果物の発酵酒とジュースだ。
さすが集落の長だけあって、メイドラピテーズが、次々とアツアツの料理をもってくる。
ユリアはもう18歳だし、あまり食べると体重が増えるのでほどほどにしていたが、リュウやレン、レオタロウたち男の子は食べ盛りなのだろう、ガツガツと「おいしいな!」「うまい!」と連発しながら食べていた。
鬼人族のモモコとレオタロウは、どちらが多く食べるか競争していた。
「ゾウミミウサギ3匹目!」
「私は4匹目だ!」
「おれ、串焼き14本目!」
「私、16本目!ふふん!」
豹族のマユラはもっぱら肉派で、やはり美味しそうに食べている。
アイとミオンとミアは、小食なのか、串焼きを数本とハムを数枚食べたあとはサラダを食べている。
「ラピテーズの食事がお口に合うようでうれしいわ」
ケイラが喜び、オーンも「食べ物はたくさんある。遠慮せずにどんどん食べてくれ!」と目を細めている。
ラピテーズたちの食欲も凄まじかった。
モモコとレオタロウみたいに競争して食べてないが、ゾウミミウサギなど二口三口ほどで一匹を喰っている。
「これじゃあ、毎日狩りに出かけなければならないはずだわ...」
ユリアは目を丸くして見ていた。
翌日は朝からまた狩りに行くことになった。
朝食のときにリア―がユリアたちに教えてくれた。どうやらラピテーズは狩が好きらしい。
ユリアたちも誘われたので、ただで居候していてもしかたがないと考え、めいめい武器をもって一緒に狩にでかけることにした。
今日は別の奥さん4人を連れての狩だが、イクシーとリア―、それにラピアはいっしょだ。
庭に出ると、使用人ラピテーズが5頭、なぜだか荷馬車のそばにいて、犬みたいな獣を十数匹連れて待っていた。
「あの獣はロプスよ。嗅覚と聴覚が鋭いの」
ラピアが教えてくれる。
ロプスには毛はなく、庭の石畳の色に似た肌をもち、鋭い下あごの犬歯は上あごを突き破って10センチ以上も上に出ていた。 いかにも獰猛そうなハンター犬だ。
オーン御殿を出ると、若いラピテーズが10頭いた。オスが2頭にメスが8頭だ。
「あの4人はイクシーのカノジョよ。オスは私たちのいとこのマヌーとニクズ。それぞれ数人カノジョを連れていくの」
ラピアが面白そうに教えてくれた。
「うふふ... 昨日、さんざんお父さんが交尾をしたものだから、自分もするつもりで誘ったんでしょう!」
リアーがイクシーの心理を推察する。
空には昨日と同じ水色の大きな太陽が昇っていた。
水色の大きな太陽の周囲には、五芒星 の形で橙、緑、青、黄、赤の五色の小さい太陽がある、奇妙な6連星だ。
そして空も、五芒星 の色とりどりの光のせいか、神秘的に次々と六色に変わる意妙な空だった...
「今日はジャバルド狩りだ。狩人は多い方がいい!」
オーンは威勢よく言った。
イクシーがいとこや若いメスたちを連れて来たのをまったく気にしてないようだ。
「ジャバルドって、全長2メートルだけど、大きいのは4メートル近いの。長い牙とツノがあるから気をつけないと大ケガをするわよ」
“なるほど。獲物が大きいから荷馬車を用意したのね…”
ユリアは荷車を持って行く理由がわかった。
「足も速いからね。私たちはジャバルドより速く走れるから問題ないけど、あなたたちはあまり速く走れないでしょう?」
「そんなに速く走るの?」
「そうね。ヤドラレ人の4倍は走るわね」
ユリアたちは顔を見合わせた。
今回は集落の東門から出た。
狩りの場所は少し遠いというので、ユリアたちは荷馬車に乗ることになった。
ユリアの提案で、一つの荷馬車にユリアたち女の子、もう一つに男の子と別れて乗ることになった。
リュウたちも何も文句を言わなかった。
道に出ると、リュウたち男の子は、荷車の横を走っているイクシーたちと話している。
男の子は男の子同士で気が合うらしい。
「それはそうと、おまえたちがもっている武器は見事だな?昨日から気になっていたのだが、その弓にせよ、長剣にせよ、槍にせよ、造りも素晴らしいが、何かとてつもない魔力を感じる... 謂れのある武器なのだろうな?」
オーンが、ユリアたちの荷車の横を走りながら、神弓ガンデーヴァと フラガラッハの剣と聖槍ゲイ・ボルグを目を細めて見る。
「はい。これはミィテラの世界の勇者と呼ばれる人たちが、テラからもって来たものです。これで勇者たちは魔王の軍勢を破ったのです」
「ほう... 魔王の軍勢を破った勇者?それで、その勇者たちはまだ生きているのかね?」
「私たちの父と母です」
「なんと!おまえたちの両親であったか...」
オーンはしばしユリアたちや後ろの荷車に乗っている男の子たちを見ていたが、ユリアに向き直って聞いた。
「それにしては、おまえたちは個性豊かだな?おまえや、そこの少女たちのように耳が細長い者もいれば、ツノがある者もいるし、シッポがあり、ネコみたいな耳をもっている者もいる」
そこでユリアとアイ、それにミアも加わって、ミィテラの世界の種族について説明した。
「ほほう... では、ユリアの父をのぞいて、あとはみんな、そのレオン王とかいう勇者のタネなのか?」
「タ、タネって...」
「タネじゃなよ。セイシ(精子)って言うんだよ!」
アイは赤くなり、ミアが学校の性教育で習ったことを自慢げに言う。
「私たちラピテーズ種族は“好色”種族とほかの種族から呼ばれているが、勇者というのもかなり好色だな?」
「そ、そうね。私のパパは、私のママをふくめて4人しか奥さんいないけどアイたちのパパは...」
とユリアが言いよどんだが
「かなりセイシをバラまいています!」
ミアは胸を張って言った。
「ちょっと、ミアちゃん!それは胸を張って言うことじゃないでしょ?」
「いいじゃん、いいじゃん。本当のことなんだから!まったくパパは女好きだよね!」
ミアの言葉にマユラが眉をひそめ、モモコがミアをかばう。
「まあな!パパは100人も女がいるからな!」
「レン!パパのことを好色男みたいに言わないで!」
「そうよ、そうよ!」
マユがレンの言葉に反駁するとミアも口を尖らす。
「なにっ? おまえたちの父親は100人もメスを持っているのか?!」
「アイたちのお父さんってスッゴイ!」
オーンが目を見開き、イクシーとマヌーが茫然と口を開けたままになり、メスたちは興味津々の顔をしてた!?
オーンもイクシーもリア―、ラピア、それにほかのラピテーズたちも、アイたちの父親が100人くらい妻や恋人がいると聞いて、アイたちを見る目が変わった。
なんだか、すごく尊敬しているようだ。
いや、それはアイたちへの尊敬ではなく、100人ものメスを持っているという父親のレオ王に対する尊敬だとアイたちはわかった。
なにせ、ラピテーズ族は、力が強いオスほど多くのメスを所有できるというのが常識なので、レオ王がどれほど強いオスであるかを想像したのだ。
アイはオーンたちとリュウやマユラたちの会話を聞きながら、昨夜のことを思い出していた。
豪勢な夕食のあとで、みんなはお風呂にはいった。
もちろん、男の子と女の子は別々に分かれて入ったのだが。
お風呂はラピテーズのサイズに合わせて作ってあるので、かなり大きく深かった。
お風呂の中では女子トークが賑やかだ。
「ユリアちゃん、おっぱいまた大きくなったね!」とか
「マユラちゃん、オシリ肉付きよくなったね」とか
「リディアーヌちゃん毛が濃くなったわね!」
「いやーん!」
「ミアちゃん、おっぱいまた成長したね!」
お風呂から上がって、リアーが用意してくれた客室― 一応、女子部屋、男子部屋と別れて寝ることになった― に入ったあとでパジャマを着て、ベッドはなく、フカフカした分厚い絨毯の上に寝た。
.........
.........
夜中になって、アイは喉が渇いて目が覚めた。
ハムだかゾウミミウサギの丸焼きだかが塩味が強かったのだろう。
キッチンに降りて水を飲もうとしたら、先客がいた。
スラリと背が高い男の子、レンだった。
「やあ、アイ。君も喉が渇いたのかい?」
「あ、レン!なんだか喉が渇いちゃったわ。お肉がしょっぱかったのかしら」
「水のむ?」
「うん」
レンが水瓶からコップに水をくんでくれアイに渡してくれた。
ゴクゴク…
白い喉を鳴らして飲むアイを見つめるレン。
飲み終わったとき、アイはレンに片手をつかまれた。
「レン?」
夜中に二人っきり。
幼いころから、いつもいっしょに遊んでいたレン。
保育園では、いつもアイのスカートめくりをして困らせたレン。
同い年生まれなのでアイと同じ17歳だ。
「どうしたの?」
しかし、レンは何も言わずにアイを引き寄せた。
レンはアイを抱きしめると口づけをした。
「ふぎゅっ!...」
アイはレンを押し返そうとするがレンは夜叉族である母親ランに似て
力強く、とてもじゃないが押し返せない。
レンは意外にキスが上手だった?
「うふぅ...ん うふぅ...ん 」
アイはとろけるような感覚を味わっていた。
“なに、この状況?ルシエルがいないからレンは利用しているの?”
そしてもまれた。
パジャマの上から胸をもまれた。
(レン、やめて!そして私を放して!)
(アイ... ずっと好きだったんだ。保育園のときから...)
(今ごろ、そんなことを言ったって... 私にはルシエルがいるのよ?)
(知っている。だけど、今、ここにいるのはおれだ!)
(!...)
たしかにレンが小さいときからアイに好意をもっていたのは知っていた。
しかし、4歳でルシエルを知り、ルシエルに対して恋心…
―あれを恋心というのなら―
が芽生え、それからはルシエルオンリーになってしまった。
しかし、いつもレンが遠くから、ちょっぴりさみしそうな目で
アイを見ているのを、アイは知っていた。
レンの手がアイの胸元でもぞもぞしていると思ったら…
パジャマのボタンを外されて、パジャマの中に手がはいって来た。
(ちょ、ちょっと、レン!何してるのよ?!)
(さわりたい... アイにふれたい!)
(そ、そんなことは結婚してから!)
(アイはオレのこと嫌いなのか?)
(き、嫌いじゃない)
(じゃあ、好きなんだな?)
(......)
“ルシエルとさえキスだけだったのに!レンはあまりにも積極的!”
レンとキスをし、胸を触られながら、“結局、私とルシエルの関係って何だったのかしら...?”と考えていた。
レンはキライじゃない。
どちらかというと好き...”
レンに服を脱がされながら改めてそう思った。
(いいのかい、アイ?)
(いいよ。私としたいんでしょ?)
(うん!したい。アイと一体になりたい!アイの中にはいりたい!)
(じゃあ、いいわ!)
(後悔しないかい?)
(レンとだったら後悔しないよ!好きだもん!)
(おれもアイが好き!)
レンは、今日オーンが森の中で何度も妻たちと交尾をしているのを見て、
とてもなくアイを抱きたくなっていたのだ。
みんなに気づかれないようにしていたけど、あのときレンはすごく欲情していた。
“あのとき、ラピアが「あなたたち、交尾したいって匂いがプンプンしているわよ」ってユリアとリュウに言っていたのが聞こえたけど、おれも強烈に匂っていたんだろうな…”
アイの白い身体にふれながら、レンは思い出していた。
「ああ... レン!」
アイはあまりの気持ちよさに レン の髪をグチャグチャにしながら、
今日、森の中で見たオーンと妻たちの交尾を思い出していた。
オーンの激しい動き。
妻たちの歓喜の嘶き。
アイもあの時、オーンみたいにレンに小藪に連れて行かれて
思いっきり抱かれたいと思ったのだ。
アイはレンと結ばれた。




