表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスピリテラ漂流記  作者: 空創士
ブレイブス・チュードレン
72/123

71 アスラズ・コーズ

残酷な描写があります。

苦手な方はスルーしてください。

【Asura´s Corps アスラ軍団】



 ここで時間を3ヵ月前にもどそう。


 イーストゾーン(東世界)の中心地であるサンクメライ・ローム(聖壇の城)に、エイダの本拠地であるライトムーンとエスピリティラを繋ぐ巨大なマナ・トロポーズである『ウォンブ・ホロス(光の母の緒)』があるように、アモンの勢力圏であるウェスト・ゾーン(西世界)の中心地にもウェスト・ゾーン(西世界)とアモンの本拠地であるダークムーンを繋ぐウォンブ・ホロス(光の母の緒)が存在する。


 そのウォンブ・ホロス(光の母の緒)があるウェスト・ゾーン(西世界)の中心地は、『ナイリヤ』と呼ばれる。エスピリティラ語で“地獄”という意味だ。

 『ナイリヤ』にはダークムーンとエスピリティラを繋ぐウォンブ・ホロス(光の母の緒)があるほか、ウェスト・ゾーン(西世界)全地域にマナを運ぶマナ・トロポーズの大動脈とも言えるものがあり、ウェスト・ゾーン(西世界)内であればどこへでも移動でき、悪霊軍団もマナ・トロポーズを使って必要なところに兵力を送ることができる。


 ただし、ウェスト・ゾーン(西世界)のマナ・トロポーズから直接イーストゾーン(東世界)に行くことはできない。それはアモンの姉であるエイダが、弟がマナ・トロポーズを利用してイーストゾーン(東世界)に悪霊軍団を送り込むのを阻止するために、|ウェスト・ゾーンのマナ・トロポーズはイーストゾーンとの境界にまで来るとUターンしてもどるようにマナ・トロポーズ・ラインを作り直したからだ。

 万一、イーストゾーン(東世界)側のマナ・トロポーズに入ることができたとしても、「フラグラーレ」や「ビザーロファゴシトードン」と呼ばれる、エイダが作った防御用の強力なイキモノが侵入者を排除(溶解)してしまう仕組みになっている。


 そのウェスト・ゾーンの中心地・『ナイリヤ』の地底- 第7層ににはアスラ大王の魔宮『アスララージャ』がある。

 アスラ王。闇の父アモンの 第3闇妃(えんひ)シーヴァの第一子であり、“アスラ大闇将軍”とも呼ばれ、恐れられ、残忍さにおいては闇の父アモン以上と言われる、悪霊軍団の総司令官だ。

 アモンには3人の闇妃がいて、第一闇妃(えんひ)マーラウルには、長男ウラノス、次男ダイモニオン、長女ガィアがいて、その下に双子の三男ケントウルスと四男オリオウルスがおり、さらに末娘デーヴィヤナの6人の子どもがいる。

 第二闇妃(えんひ)マーラ・ サンユッタには、マーラ・アンダカ、マーラ・ラマシュトゥ、それにマーラ・フレースヴェルダという三人の娘がいる。


 そして第三闇妃(えんひ)がアスラ闇将軍の母親であるシーヴァであり、アスラにはヤクシャ、ラークシャサという二人の弟がいて、ヤクシャは別名・闇夜叉(やみやしゃ)大将軍と呼ばれ、ラークシャサは別名・闇羅刹(やみらせつ)大将軍と呼ばれている。

 この三兄弟は、闇の大将軍としてウェスト・ゾーン(西世界)にその名を轟かせる猛将たちであり、ウェスト・ゾーン(西世界)では“|シャイターン・ ポゼスピリト《極悪なる悪霊神》”と畏怖をもって呼ばれており、 第一闇妃の子らも、第二闇妃の子らも到底敵わないレベルと能力の持ち主だ。


  

「なんだと? タッバーゾロン(巨大バッタ)軍団が一匹残らず全滅?!それにエリーニュス軍団も全滅した? キサマ、おめおめとそれだけを報告するために帰って来たのか――っ!」

『ナイリヤ』の地下のもっとも深いとろこ― 第7層にある魔宮アスララージャの謁見室で、1週間前に『エペロン・テルメン』に攻め入ったエリーニュス軍団の族長アレークターから音信がないのを奇妙に思い、部下のガミジン将軍に調査させたのだが、その報告にアスラは激怒した。


「この役立たずが... 死ねっ!」

ガミジンを睨むアスラの目が見る見るうちに真っ赤になった。

「あぐっ... ギェエエエエ――――!」

ガミジン将軍が空中を両手で掻きむしるようなしぐさをしたかと思うと、その体はたちまち腐食して崩れ落ち、跡形も残さずに消失してしまった。


謁見の間にいて一部始終を見ていた9人の将軍たち― “アスラの72悪霊将軍”と呼ばれる悪霊将軍たちだ- いずれもハイ・ポゼスピリト(最高階級寄生悪霊)だ- が、それを見て青ざめた。


「俺は無能な奴を見ると虫唾が走る。父・アモンに代わってエスピリティラ征服を託されたのだ。お前たちに失敗は許されない!」


「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」

9将軍が頭を垂れ、両手を胸の前で組んで恭順の意を示す。


「マルコシアス侯爵!」

アスラが謁見の間にいない悪霊の名を呼ぶ。


「お呼びですか。大闇将軍!」

突然、鷹の頭と上半身と翼をもち、獅子の下半身をもつ悪霊が現れた。


「将軍どもは役に立たん。お前がイーストゾーン(東世界)に行って探って来い!」

「承知いたしました。少し時間はかかるかも知れませんが、しっかりと調べて参ります!」

「うむ」

マルコシアスは忽然と消えた。




 マルコシアスは、マナ・トロポーズでウェスト・ゾーン(西世界)の東端まで行くと、徒歩でギュルヴィルボルム山脈を越えて『エペロン・テルメン』 へ入った。

「ほほう... ここが無毛の地と呼ばれるギュルヴィルボルム山脈か?... しかし、なんだ、これは? 草がこんなに生えているではないか? 無毛の地に、どうして草が生えているのだ?何がここで起こったんだ?」

不思議そうに独り言を言いながら地熱が40度もある山岳地帯を裸足で東へ向かって歩いて行った。


 マルコシアスは知らなかった。この無毛の山脈に生え始めた植物は、クリスティラたちイーストゾーン軍に壊滅させられた悪霊軍団のタッバーゾロン(巨大バッタ)が、ハイ・パラスピリトたちのソーウェッノーズ(霊の浄化・救済)生命(いのち)が浄化され無害な植物に生まれ変わったということを。いや、無毛の地を緑の地に変えつつあるのだから、有益な植物に生まれ変わったと言うべきだろう。


 マルコシアスは街道に出ると、容姿をヤドラレ人に変えた。

上級魔族の彼にとっては、容姿を変えることなど雑作もないことだ。  

 そのまま二昼夜歩き続け、ヤドラレ人の森に近づいた。この森からグラニトルゾリオの町までは10キロほどの道程だ。グラニトルゾリオの町は、パラスピリト、ラピテーズ族、ヤドラレ人族、ストリギダ族、ダトーゥ族などがいっしょに住める町として現在拡張中だが、パラスピリトはガラスの家、ラピテーズ族はふつうのレンガ造りの家、ヤドラレ人は森、ストリギダ族も森、ダトーゥ族は土中というように、それぞれ住む場所が違うので、各種族に合う環境を作りながらの町作りなので、新たに植えた木の苗などが成長するまで日数がかかることもあって、ヤドラレ人やストリギダ族の多くは、まだ元の森に住んでいる。



 森の近くの草原で、3、4人のヤドラレ人の子どもが遊んでいた。

マルコシアスは注意してあたりを見回す。“子どもだけが大人が見てないところで遊んでいるはずがない... 必ず、どこか近くに大人がいるはずだ…”


「ホゥン... ホゥン...」

「ギャッ ギャッ!」


押し殺したような声が左手にある小藪から聞こえて来た。

ふつうの者なら聴こえない声だが、聴覚のすぐれたマルコシアスにははっきりと聴こえる。

足音を立てないように背を低くしてゆっくりと小藪に近づく。

そこでは、子どもたちの守りをしているらしい若いヤドラレ人のメスがオスと交尾をしていた。

「ホ ホゥン、ホゥン(あ、いいわ いいわ!)...」

「ギャギャッ ギャッ!(そうか、もっと気持ちよくしてやろう!)」  

オスもメスも交尾に夢中でマルコシアスが接近したのに気づきもしない。


「おう。お楽しみ中か? 俺様にもヤラせてくれよ?」

突然のしわがれ声にギョっとしてふり返る若いオス。


バキャっ!

マルコシアスが腕をふるうと、オスの体は10メートルほどぶっ飛んで、グシャっと音を立てて落ちた。


「キャ... むぐっ!」

悲鳴を上げようとした若いメスの口を毛むくじゃらの手が覆う。


若いオスの体はグシャグシャになっており、息絶えていることは一目瞭然だ。

オスの体から出た血が地面に広がる。

呆然自失となったメスは、あまりの怖さに失禁してしまった。


「おやおや... ますます俺様を興奮させる状況だな? グフフフ...」

若いメスの胸を片手で揉みしだきながら、しわがれ声で笑うマルコシアス。


「ギャ ギャッ(イヤっ、ヤメてっ!)」

魔族は念話が出来るので、若いメスが何を言っているかわかるのだが、まったく意に介していない。

それ以上若いメスが騒ぎ立てないように、その口に蛇のように長い舌を突っ込んだ。

「フギュムム...」

そして、毛むくじゃらの両腕で若いメスの足を広げると、その上に乗った。

「フギャアっ!...」

若いメスが悲鳴を上げる。


そこに先ほど若いメスが上げた小さな悲鳴を聞きつけて子どもたちが駆けて来た。

「キャギャッキャ(お姉ちゃん、どうしたの)?」

「キャギャッ(お姉ちゃん)?」

「ギャッ ギャギャギャー(あそこにラオお兄ちゃんが)!」

「ギィギャーッ(死んでいるーっ)!」

「ええい、うるさい!終わるまでだまっておれ!」


マルコシアスが子どもたちを睨むと、子どもたちは静かになってしまった。

悪霊侯爵の強力な念話で催眠状態になったのだ。

子どもたちは、もう何も言わず、せず、ただ立って見ているだけだった。

マルコシアスは、もう何者にも邪魔されずに貪欲に若いメスを貪った。

若いメスは、あまりの痛さで気を失ってしまっていた。



 しばらくしてマルコシアスは若いメスの体から離れた。

若いメスはクワっと目を見開いて絶命していた。

「さて、久しぶりに交尾したら空腹を感じた。どーれ、最初はこの若いメスの脳みそから食うか!」

マルコシアスは手でメスの頭を掴むと首からもぎ取り、手のツメを30センチほどに伸ばしてメスの頭の頂部を横なぎにした。額の上の位置から頂部が切られて落ちる。

露出した灰色の脳を蛇のような長い舌で啜りながらおいしそうに食べ始めた。

若いメスの脳を啜り終わると、その体を捨て、一番近くに立っている子どもを捕まえた。




 その日の夕刻。

ヤドラレ人の森では大騒ぎになった。


 若いメス「ケル」と子どもたちが夕方になっても帰って来ないので、心配した親や兄弟たちが探したところ、森から西にある草原で見つかったからだ。

「ケル」と彼女の恋人「ラオ」、それに子どもたちはみんな死んでいた。

「ラオ」と子どもたちは頭をもぎとられた上に、頭蓋骨のとっぺんを切断され中身(脳)がなかった。

「ケル」の方はもっと酷かった。

乱暴をされたらしく、股が裂けていた。

それが命取りになったのだとわかった。

そして、やはり頭の上が切断されていて脳がなかった。


「こんな惨い殺し方をするのはグヮルボに違いない!」

「いや、グヮルボだったら飛んでいるのをワシらも見るはずだ!」

「じゃあ、ほかにどんなバケモノがいるってのよ?」

「このあたりには悪霊はいないんじゃなかったの?」

ワイワイガヤガヤ…



 事件はグラニトルゾリオの町に住居を構えていたバンゾウ族長にも報告された。

バンゾウはニュンペーに怪しい者がいないか哨戒を厳重にするように依頼するとともに、グラニトルゾリオの マザー・パラスピリト「マモ・クラナ」、ラピテーズ族のオート族長、ストリギダ族のブボ・ケトゥパ 族長、ダトーゥ族のギガタンコック族長たちにも連絡し、急遽10小隊からなる警邏隊にグラニトルゾリオの周辺を捜索するように命じた。しかし、夜を徹して翌日まで続けられた捜索でも、怪しい者は一人として見つからなかった。

 


 *    *    *    *



 2か月後―


 マルコシアス侯爵は、アスラ大王の魔宮『アスララージャ』の謁見の間アスラ大闇将軍に謁見していた。

謁見の間の両側には、“アスラの72悪霊将軍”と呼ばれる中でも最高レベルの悪霊将軍たち9人が並んでいる。


「なに? エイダはアライアンス(同盟戦線)軍を創設し、魔術師軍団を創設した?」

「はっ。なんでもミィテラという世界から来たヤドラレ人のような者たちは、とてつもない魔術を使えるようで、8か月前のグヮン=グヮジルド 将軍のグヮルボ軍団の全滅、それに三か月前のエリーニュス軍団とタッバーゾロン(巨大バッタ)軍団の全滅も、これらのミィテラの魔術師たちの仕業であることが判明いたしました」

「とてつもない魔術...?」

「5千万のタッバーゾロン(巨大バッタ)軍団と...」

「4千人のエリーニュス軍団が全滅させられた...!」

「魔術とは、それほど破壊力をもつものなのか?」

9人の悪霊将軍たちもザワザワと騒ぎはじめた。


「魔術軍団を創設したとは、どういうことか詳しく説明しろ!」

「はっ。詳細はアライアンス(同盟戦線)軍でも極秘事項らしく、詳しいことまでわかりませんでした。ご存じのように、イーストゾーン(東世界)にはパラスピリト(寄生霊)がどこにでもいるため、闇のオーラを放つ我々はすぐに発見されてしまいます。ですので、調査には細心の注意が必要であり、どうしても身を隠して調べなければならず、おのずと調べられる範囲も限られてしまうのです。しかし、住民たちの会話などを隠れて聞いた結果によると、ヤツらはどうやら秘術でもって魔術を使えるようにしているようです...」


「秘術...... よし。よくそこまで調べてくれた。しばし休養したあとで、今度はその秘術とやらを徹底的に調べて参れ!」

「はっ!」

「すべての任務に成功すれば爵位を上げて遣わそう!」

「有難き幸せ!」

現れた時と同じように、マルコシアス侯爵は音もなく消えた。


「キサマたちもぐずぐずしていると、マルコシアスに将軍の座をとって代わらせるぞ?」

「大闇将軍、マルコシアスごときと、我々の能力を比べられても困ります!」

「そうです。我々はすでに大規模な侵攻作戦を準備しております!」

「今回は、いくらイーストゾーン(東世界)側が、アライアンス(同盟戦線)軍をもっていようが、魔術師軍団をもっていようが対応できないはずです!」

アスラの恫喝のような言葉に9将軍たちは、躍起になって新たな侵攻作戦の宣伝をする。

「よかろう。それはどのような作戦で、どう、今までの作戦とは違うのだ?」

「悪霊軍の司令部に来ていただければ、作戦図でもってご説明できます!」

「よかろう!」


 一瞬後、アスラと9人の将軍は第三層にある悪霊軍司令部にいた。

司令部にはすでに、悪霊軍団の主要な将軍たちが待っていた。アスラ軍団は72人の悪霊軍将軍の部隊から構成されているのだ。もちろん、多くの将軍は任務で各地にいるので全員がそろっているわけではないが。


「私のパイモンの軍団とバエル将軍の軍団、アスモデウス将軍の軍団で、テオゴニア海峡の2ヶ所とミズアルバグ海から侵略します」

「バカなことを申すな。テオゴニア海峡にもミズアルバグ海にも、あの手に負えないバケモノがいるではないか? 今まで何十万人の兵をあのバケモノたちのために失くしたと思っているのだ?」

「バケモノ対策は、フォカロル公爵が立てております!」

「なにィ? フォカロル公爵が?」

「はっ。私が長年かけて、あのバケモノの対抗策を練りました!」

「どのような対抗策だ?」

アスラの目がひときわ赤くなり、将軍たちはアスラ王の気にいらない事を言ったら、即・消滅されるのではないかと戦々恐々だ。


「大闇将軍には、実際に目で見ていただきたいと存じます!」

「なに? 実際に見ろと? ここで説明できないものなのか?」

「ここで長時間説明するより、実際に見ていただいた方がよろしいと思います」

「よかろう。ではその場所に案内せよ!」

「ははっ!」



 1時間後、アスラは上機嫌で司令部に帰って来た。

「あれならば、海を渡るのも怖くないな? よく作ったものだ!」

「恐れ入ります」

「して、あの対抗策があるのに、なぜ軍を3つに分けて侵攻するのだ?」

「それは、第一にエイダたちは、我々が常に『エペロン・テルメン』 から侵入すると思って、『エペロン・テルメン』 に強力な防御を敷いているからです」

バエル将軍が説明する。バエルは9闇将軍の一人であり、“王”の称号を持つ悪霊だ。


「それで、我々はエイダの虚を突いて、エイダたちが予想もしていない海から攻め込むのです。彼らは海にはあのバケモノがいるので、絶対に海から攻められることはないと油断しています。そこを突くのです!」

アスモデウス将軍が次いで説明する。彼も9闇将軍の一人であり、同じく“王”の称号を持つ。

「それならば、なぜ『エペロン・ミドリウム』 から遠いミズアルバグ海などから攻め入る必要がある?」

「それは、万一、エイダの軍の抵抗が我々の予想以上であった場合、北方から攻めることでエイダの兵力を分断させる狙いがあり、時間をかけてでも着実に北方から『エペロン・テルメン』 攻略を目指し進軍するためです」

ボティス将軍が締めくくる。彼も9人の闇将軍の一人であり、同じく“王”の称号をもつ。


「おまえたち三人が説明をしているということは、お前たちが軍団を率いて乗り込むということだな?」

「さすが大闇将軍、すべてお見通しですな?」

「して、どれほどの兵力を動員する計画だ?」

「私の66軍団と...」

「それがしの72軍団と...」

「俺の80軍団です!」

3闇将軍が答える。


「218軍団か。それで足りるのか?」

「大闇将軍、三つに分かれるとはいえ、420万の大悪霊軍団です。十分過ぎる兵力であると考えております!」

「必要なら儂も力を貸すぞ?」


バエル将軍の言葉に、女性の顔をした男性の姿のパイモン将軍が、そのかわいい顔に似合わない太い声で言う。パイモンは同じく闇の9将軍の一人だが、200軍団 -実に400万というもっとも大きな悪霊軍団を持っており、彼の軍団一つで、バエル、アスモデウス、ボティスの軍団を合わせたのとほぼ同じ兵力なのだ。


「いや、それには及ばん、パイモン将軍!我々の軍団だけで目標は達成できる!」

自尊心を傷つけられたアスモデウスが面白くなさそうな顔で言う。

「そうか!まあ、貴殿らの軍団の兵士は、あのバケモノバッタのようなタッバーゾロン(巨大バッタ)兵たちのように、脳ナシの無能ではないだろうからな...」

「まあ、よいではないか、パイモンよ。あのフォカロル公爵の対抗策だけでも、エイダの軍団を大混乱に陥れるであろう。それで、もし、バエル、アスモデウス、ボティスたちが侵攻に手間取る場合は...」

「はっ。その時はわたくし目にご命じください!」

パイモンが両手を合わせて胸の前で組み、頭を下げる。

「うむ」


“くそっ、あのゴマスリ王め!”

“恥も外聞もなく大闇将軍に取り入りおって!”

“あんなオトコ女に手柄を横取りされてなるものか!”

バエル、アスモデウス、ボティスの3将軍は、パイモンの態度に怒り心頭に達していた。

しかし、みんな海千山千ならぬ、海万山万の悪霊たちだ。

顔では何事もなかったかのように平然とふるまっている。


「して、作戦の決行はいつだ?」

「はっ。フォカロル公爵の対抗策が整うまでに30日ほどかかりますので、侵略作戦の実行は1ヶ月後となります」

「よかろう。万全に準備し、今度こそはエイダの息の根を止めるのだ!」

「心得ました!」

「必ずや!」

「おまかせください」


3将軍が両手を合わせてを胸の前で組み、頭を下げる。

ほかの将軍たちや悪霊貴族たちも、同様に両手を合わせ、頭を下げる。



謁見の間にいた闇将軍たちが姿を消したあとで、アスラの玉座の後ろにある豪華な帷幕の陰から、ひとりの美しい女悪霊が現れた。

「いいのですか、アスラさま? あの三人だけにまかせておいても? わたくしが赴いてもいいのですが。わたくしなら、その魔術師とやらも一瞬で塵にして見せますが... 」

「その必要はないであろう。たしかに、フォカロル公爵が報告した魔術とやらは大きな脅威だ。そのことも含め、俺はこれから父君に報告に行く。おまえも同行するがよい」

「かしこまりました」

美しい悪霊は、豊かな胸の前で両手を組み合わせ、軽く頭を下げた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ