表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスピリテラ漂流記  作者: 空創士
ブレイブス・チュードレン
54/123

53 サンクメライ・ローム

【Sankmeray-Rehm サンクメライ・ローム】


 翌朝、ユリアたちはサンクメライ・ローム(聖壇の城の町)を目ざして出発した。

サマと15人のニュンペー娘たちは、「みなさん、北東の方に旅されるときは、是非、私たちの集落にお寄りください!」と名残惜しそうに別れを告げて、新しい集落を作るために北西に向かって飛んで行った。

 モニやキュカたちは、サンクメライ・ロームのさらに北方に新しい集落を作るからと言って、サンクメライ・ロームまでいっしょに行くことになった。


 今日のキャラバンのトップはレンだ。

3.8歳の雌ボルホーズ・エレノアに乗っているのは、アイとシルレイだ。

 シルレイはレンにゾッコンで、旅のときは必ずレンといっしょにエレノアに乗る。

純真でやさしいシルレイは憎めないところがあり、そのためアイもレンをシルレイと共有していながらも、シルレイに対して嫉妬はもってない。

 純真と言えば、クリスティラもすごく純真だし、アキュアマイアは多少知恵に長けたところがあるが心はきれいだし、ラィア、ロリィもとても純真だ。


 レンの後ろに続くのは、3.5歳のオスのオーヴィルに乗ったレオタロウとアキュアマイアと... なぜかクリスティラもいっしょに乗っていた?

 アキュアマイアとクリスティラは、共に初代のマザー・パラスピリトであることもあってか、おたがいにクリスちゃん、アキュアちゃんと呼び合うほど仲がいい。

 今日は、リュウと決別したクリスティラが、寂しそうにラィアかロリィといっしょにボルホーンに乗ろうとしていたのをアキュアマイアが強引にレオタロウのボルホーン・ オーヴィルに乗せたのだった。


 すっかりオンナになってしまったクリューは、最後列をヴィラーゴに乗ってうなだれて飛んでいる。

「ねえ、ねえ、レンさま!クリューさま、すっかりオイシソウナ女性になっていますよ!」

「女の私が見ても、イイオンナになっていますよ?」

おしゃべりニュンペーのナパとタッチがレンのところに飛んできて報告する。

ニュンペーたちは、一日中でも飛んでいられるので、ボルホーンに乗る必要はない。


「そうか?じゃあ、あとでオレがクリュ―を“オンナ”にしてやってもいいんだがな?」

「え――っ? クリューさん、もう女になっているんですけどー?」

「そうですよ!おっぱいも私たちより大きいし、オチ〇コもないみたいだし...」

「きゃははっ!その代わり、おワ〇メが見えたわっ!」

なんとも口さがないニュンペー娘たちだ。


「ふふふ... “オンナ”にしてやるって、こういうことだよ!」

そう言うと、レンは念話でモニやエイカ、ルテマ、ウーラニなどのニュンペー娘たちがレオに抱かれ、ショジョでなくなった瞬間のイメージをナパとタッチに送った。


「きゃ―――っ、レンさまのエッチー!」

「これが“オンナになるってことォ? じゃあ、まだバージンな私たちはナニ?」

「ふふふ... 未通娘(おぼこ)って言うんだよ!」

「おぼこ――っ?」

「なにが通ってないの?」

「ナニナニがさ!」

「レンさまのエッチー!」

「でも、今日あたり私もタッチもレンさまかレオタロウさまに抱かれるから...」

「“オンナ”になるんだな?」

「いやーん!」

「レンさまのエッチー!」

今夜、起こるであろうことを想像して、期待に心を躍らせるレンとニュンペー娘たちだった。


 それまでレオタロウの後ろに沈んだ顔で乗っていたクリスティラが、興味深そうにレンとニュンペー娘たちの話を聞いていた。アキュアマイアは、気を利かしてクリスティラをレオタロウの後ろに乗せ、自分はクリスティラの後ろに乗っていた。


未通娘(おぼこ)って、面白い表現ですね?」

「それを言われると恥ずかしいです、クリスティラさん。これはオレのオヤジ- レオパパが教えてくれたテラという世界のかなり古い時代の言葉だそうです」

「テラ... そういえば、ユリアさんも言ってましたね。レオ王さまは、テラという世界からミィテラの世界に行かれたと...」

「それだけじゃないらしくて、オレはよくは知らないし、オヤジもあまり話してくれないんだけど、何でもオヤジは転生してテラに生まれたらしいんですよ...」

「転生?なによ、それ?」

アキュアマイアも興味をもったらしい。


 

 そんな話をしながらもキャラバンは北へ向かって飛び続ける。

遥か前方には、ウォンブ・ホロス(光の母の緒)が、空へ向かって一本のロープのように伸びているのが見え、その先― 上空には巨大なライトムーンがほぼ真上にかかっている。


 ライトムーンは、五芒星(ごぼうせい)のように東天から西天に移動することはない。

ライトムーンはウォンブ・ホロス(光の母の緒)によってエスピリティラと繋がれているのだ。

ライトムーンと同じように、エスピリティラと ウォンブ・ホロスで繋がれているダークムーンは、ちょうど反対側となるウェストゾーンの中心地の上空にあるために、経度が離れているこのあたりでは見ることはできない。



 キャラバンの中ほどを4.5歳のメス・バイアリータークに乗って飛んでいるのはリュウだ。

彼の前には、ユリアがミアといっしょにキャッリラに乗って飛んでいる。

ユリアはリュウといっしょにバイアリータークに乗ると言ったのだが、彼は断って一人で乗っていた。

今日は一人で飛んで、じっくりと自分のしたことを考えたいと思っていたのだ。



 *    *    *    *

      


 昨夜、リュウは自分がしでかした過ちを土下座してクリスティラたちに謝った。

そして、クリスティラたちはその謝罪を受け入れてくれた。

もともと、クリスティラはリュウに恨みをもっているわけではなかった。

それどころか、リュウとは“良い思い出”の方が圧倒的に多かった。

ただ、“示しをつける”ために、クリスティは敢えてリュウとの関係を終わらせたのだ。

ハイ・パラスピリト(最高階級寄生霊)たちは、エスピリティラで生きるすべての生き物のクリエイターなのだ。たかが12歳の人族に侮られたままでいることは許されることではないのだ。


“まったく、オレのしでかしたことは、男として恥ずべきことだ... ズミレンおばあちゃんが、ママにしたのと同じじゃないか。いや、ズミレンおばちゃんは、ママのためを思ってやったのだから、理由は高尚と言えるが、オレはただラィアとロリィを抱きたいためだけにやったのだから、おばあちゃんの行為とは比較にならないくらいゲスなことだ…”

 だが、もう済んだことだ。パパが“覆水盆(ふくすいぼん)に返らず”とか言う古代の言葉を教えてくれたとおり、やってしまったことは元には戻らない。今後はユリアやほかの兄姉、それにハイ・パラスピリトたちを二度と裏切らないようにして生きて行くしかない…



 *    *    *    *

 


 ユリアたちは、その日の夕方、サンクメライ・ローム(聖壇の城の町)まであと1日という距離のところにあるニュンペーの集落に一泊することにした。

 その前に、このエリアを警戒しているニュンペーから連絡を受けたらしく、巨人ガーディアン・サンク ギュミルズたちが、北西、北東と南から高速で接近して来た。

 各グループは10体ほどのサンク・ギュミルズで構成されているので、30体ほどのサンク・ギュミルズに囲まれてしまった。


 やはり、サンクメライ・ロームが近いので、防御態勢も厳しいのだろう。 

前回はクリューがガーディアン(守護者)の権威を見せてサンク・ギュミルズたちの攻撃を止めさせたが、今回はクリューは落ち込んでいるので当てにならない。


 だが、心配する必要はなかった。

(私たちはマザー・パラスピリト(聖なる母寄生霊)よ!これから|サンクメライ・ロームに向かうの!攻撃の“こ”の字でも考えたら容赦しませんからね!)

アキュアマイアが、クリューも顔負けするような凛とした念話でサンク・ギュミルズたちが攻撃的な行動に出るのを止めてしまった。

サンク・ギュミルズたちは周囲を飛んでいたが、クリスティラたちが無害とわかったのか、しばらくすると北方向へ飛んで行ってしまった。

 サンク・ギュミルズたちに代わって現れたのは、このエリアを警戒しているニュンペーたちだった。

たぶん、キャラバンに同行しているニュンペーたちが知らせたのだろう。


(マザー・パラスピリトのみなさま、お客人のみなさま、それにゼーナ・ビレッジの仲間たち、ようこそ!私たちの集落へご案内します!)

オレンジ色の髪をしたニュンペーが近づいて来て、念話で歓迎の言葉を伝えた。

その周りには3人ほどニュンペーが物珍しそうに飛んでいる。

ナパやタッチやモニたちが、早速近寄ってあいさつをしてキャッキャと笑っている。

ニュンペー同士は、同じ任務をしている同種族ということもあって、外から来た者にも親しいようだ。



 30分ほど飛んでニュンペーの集落に着いた。

ゼーナの集落ほど大きくはないが、それでも100人ほどが暮らしているようだ。

集落の長はイデュイアというニュンペーで、やはりここでもマザー・パラスピリトたちは大歓迎された。

モニが、「私たちは、サンクメライ・ロームのさらに北に集落を作るために旅をしています」と言うと、イデュイアは深く頷いていた。


「私の集落でも、男どもは誰一人として新しい集落を作ろうという気概もなければ、適齢期の娘たちと子作りさえしようという気のない者ばかりです。ここでも何とか集落を維持するだけで精一杯なのよ」

集落のニュンペーたちが、マザー・パラスピリトたちの歓迎パーティーを開こうと、うれしそうに飛び回り、走り回り、準備をしている間、ユリアたちはイデュイアと集落の主立ったニュンペーたちとお茶を飲みながら話していた。


イデュイアたち話によれば、この集落でもゼーナの集落のように、ニート・ニュンペー男が増えているそうだ。イデュイアの集落には、現在、14人の適齢期の娘がいるそうだが、そのうち夫のいる娘は2人だけだという。

「見たところ、モニのグループには、オスのニュンペーは一人もいないようですけど、もう子種はもっているの?」

「いえ、全員が子種を持っているわけではありません。私やキュカたち5人はもっていますけど、残りはまだ持っていません」

イデュイアの質問にモニが答える。

「えっ、モニたちは子種をもっているけど、残りの娘は持っていない...?」

「はい。その娘たちには、レオタロウさまたちに今夜、種付けをしてもらうのです」

「ええっ? このヤドラレ人の男たちに?」

「この方たちは、ヤドラレ人に見えますけど、ヤドラレ人ではありません」


 クリスティラがイデュイアに、レオタロウたちはミィテラという世界から来た人族であることを説明し、モニやキュカたちがレオタロウたちに種付けをしてもらったということを話すと…

 イデュイアと彼女のそばにいたニュンペーたちの顔色が変わった。

彼女たちはおたがいを見て頷くと、イデュイアが改まった態度でレオタロウ、レン、リュウ、それにビルコックを見て頭を下げて頼んだ。


「この集落を消滅させないために、是非、集落の適齢期の娘たちに種付けをしてください。お願いします!」

「「「「「お願いします!」」」」」

集落の主立ったニュンペーたちも頭を下げた。


ずっと頭を下げたままのイデュイアたち。

良い返事を聞くまで頭を上げないつもりなのだろう。


「いいぜ!オレがこの集落を救ってやる!」

頼られるとすぐに漢気(おとこぎ)を出すレオタロウが、恰好をつけて言った。


「集落のかわいい(おさ)さんに頼まれちゃあイヤとは言えないよな?」

「ボクも協力します!」

「いいですよ...」

レンとビルもニュンペー助けをすることを表明し、リュウも渋々同意した。


「えっ?レオタロウさま、か、かわいいって... 私、これでも25歳ですよ?」イデュイアが慌てる。

「でも、まだ子どもは産めるんだろう?」

「それは... 私も、ペイラもエシュレアもウラニアもエミリュナも、みんなまだ問題なく産めますけど...」

「じゃあ、オレたちがまとめて面倒みてやるぜ!」


「「「「「「えええええ―――――っ?」」」」」」

イデュイアたちがずっこけた。


イデュイアたちは、足を開いてずっこけたのでお股が丸見えになった。

そして、当然レオタロウたちは、しっかりとニュンペーたちのシークレットゾーンを観賞したのだった。


 そういう成り行きから、モニたちに話して彼女たちの種付けはサンクメライ・ロームに着いてからにすることで了承してもらって、今夜はイデュイアたち熟年ニュンペーたちと、適齢期のニュンペー娘12人に種付けをすることになった。

 クリスティラたちやユリアたちが歓迎会を楽しんでいるころ、レオタロウは、集落の長・イデュイアと愛し合っていた。イデュイアは25歳で、ニュンペーの年齢で言えば、人族の40歳か50歳にあたるそうだが、体はまだまだピチピチしており、子どもはすでに10回産んでいるそうだが、体はまだまだ若く、レオタロウをとてもよろこばせた。

 イデュイアよりさらに若く、二十歳を少し過ぎた年齢のペイラ、エシュレア、ウラニア、エミリュナたちも、それぞれレン、リュウ、ビルたちと愛し合い、ピチピチボディを堪能されていた。

当然、彼女たちのあとで、適齢期のニュンペー娘たちもレオタロウたちに種付けをされた。




 翌朝、ユリアたちは、 サンクメライ・ロームを目ざして集落を飛び立った。

イデュイアたちは、名残惜しそうにいつまでも手をふっていた。

イデュイアの集落は、これであと六か月もすれば、新しい子どもが生まれはじめ -レオタロウたちの血を受け継いだ、たぶんパイオニア精神にあふれた子どもたちとなるだろう- イデュイアの集落は活気をとりもどし、種族も増えることだろう。


 サンクメライ・ローム(聖壇の城の町)には、夕方には到着できる予定だ。

飛びはじめてしばらくすると、サン・ギュミルズたちが20体ほど接近して来た。

(『エペロン・テルメン』 から来られたマザー・パラスピリト(聖なる母寄生霊)さまたちですね?)

青い肌に黒い縮れ髪のサンク・ギュミルズがクリスティラに訊く。


(はい。わたくしたちは『エペロン・テルメン』のマザー・パラスピリトです)

(アウラスさまとイシルスさまに命じられて、護衛に参りました。リトンと申します)

さすが サンクメライ・ロームを治めるマザー・パラスピリトとファザー・パラスピリトだけあって、気を利かせてサンク・ギュミルズを迎えに寄こしたらしい。


(それはどうもご苦労様です。わたくしの名前はクリスティラ。アウラスさまとイシルスさまにお礼をお伝えください)

(承知しました...?)

リトンと名乗ったサンク・ギュミルズは、キャラバンの横を飛びながら、ボルホーンに乗っている者たちをひとり一人見ていたが、最後尾のクリューを見て奇妙な顔をした。

(マザー・パラスピリトさま、一番後ろにいるのはガーディアン(守護者)ではありませんか?)

(そうよ、あれはクリューとかいう名前のガーディアンよ!)

アキュアマイアが念話で答える。

(ガーディアンは、全員男と聞いていたのですが...?)

(あれはね、私たちにとんでもないことをしたので、罰で女にしてやったの!)

(!...)


リトンがギョっとし、ほかのサンク・ギュミルズたちもかなり驚いているのが見て取れた。

しかし、彼らは何も言わなかった。サンク・ギュミルズたちでさえ恐れるガーディアンを、“罰で女にしてしまった”とあっけらかんと言うマザー・パラスピリトに恐れをなしたのと同時に、このガーディアンは、どんなヘマをしてマザー・パラスピリトたちの怒りを買ったのだろう... と考えた。



サンクメライ・ローム(聖壇の城の町)

    挿絵(By みてみん)



 夕刻、五芒星(ごぼうせい)がまだ高いうちにユリアたちはサンクメライ・ローム(聖壇の城の町)に到着した。

 サンクメライ・ロームは荘厳な大都市だった。さすが『聖壇の城』と呼ばれるだけある規模の町だ。

それまでのクリスティラのグラニトルの町や、アキュアマイアのアキュアローム、それにラダントゥースのフリズスゴレルロームなどがガラスだけで出来た町だったのに比べ、サンクメライ・ロームはガラスとさまざまな色合いの美しい壁で作られた高い建物が林立した都市だった。


 地上には運河や人口湖らしいものがたくさんあり、その間には木々の生い茂るグリーンエリアがたくさんある。そして、地上に見える道路のほかに、高い建物同士を繋いでいる空中道路らしいものが、美しいカーブを描きながら、建物の間を通っている。


「なに、この町... すごい規模なんですけど?」

「フリスゴレスロームも大きかったけど、この町とは比べものになりませんね...」

アキュアマイアもシルレイも驚いている。

「これだと、住んでいるパラスピリト(寄生霊)の数もハンパじゃないだろうな?」

「フリスゴレスロームの倍くらいありそうだから、60万くらいいるんじゃなの?」

レオタロウとレンも目を見張っている。


「ここから、エイダ(光の母)さまが、いらっしゃるライトムーンに行けるのですね...」

クリスティラが感慨深そうに、中天に向かって伸びているウォンブ・ホロス(光の母の緒)を見上げてつぶやく。

「とうとう、エイダさまにお会いできるんですね...」

「早く、エイダさまにお会いしたいなぁ!」

いつもふざけあったり、張り合っているラィアとロリィも、なんだか感激している。


ユリアはほぼ真上にあるバカでかいライトムーンを見た。

ウォンブ・ホロスはライトムーンの中心からサンクメライ・ロームに向かって伸びて来ている。

ライトムーンの大きさは、まるで巨大なボールが頭上に浮かんでいるようで、その存在感がハンパない。

 すでに夕方となっており五芒星(ごぼうせい)の6色の光のうち、紫色の度合いが強くなっているため、ライトムーンも紫がかって見える。ライトムーンには雲がないため表面がよく見え、薄い雲の下にある町らしきものや道路らしき線までがはっきりと見える。


(それでは、我々は任務を終えましたので、ここでお別れします)

リトンの念話にはっと我に返ったユリア。

サンク・ギュミルズたちは方向転換して、来た方向へ引き返して行った。

リトンは名残惜しそうに、何度もふりかえって手をふっていた。


 前方から十人ほどの者が接近して来るのが見えた。

サンク・ギュミルズたちは、恐らく、彼らがサンクメライ・ロームから飛び立って来るのを見て任務完了と考えて引き返して行ったのだろう。


 グングンと接近してくる者たちは、全員ガーディアン(守護者)だった。

(マザー・パラスピリトさま御一行、アウラスさまとイシルスさまの命により、お迎えにあがりました!サンク・ギュミルズどもは、つつがなく護衛をいたしたでしょうか?)

ガーディアンの中でもひときわ目立つ格好をしたヤツが、マザー・パラスピリトに訊く。

そいつは、なんだかキラキラ光るライムグリーン色のチュニックを着て、メイスを片手にもち、頭には装飾の入った見事なリングをつけていた。 

(はい。サンク・ギュミルズの皆さまは、立派に護衛役を務められましたわ!)

(名を名乗るのが遅れましたが、私はアスクレピオスと申します。サンクメライ・ロームのガーディアン(守護者)を纏める者です。よろしくお見知りおきください!)


 やはりただ者ではなかった。

アスクレピオスはガーディアン(守護者)たちのリーダーなのだろう。

クリスティラたちとユリアたちが、それぞれ自己紹介する。

(5人もハイ・パラスピリト(最高階級寄生霊)さまをお迎え出来ると知って、アウラスさまもイシルスさまも、たいへんよろこんでおります!)


 アスクレピオスが先導し、15人のガーディアンたちは、それぞれ7人ずつキャラバンの右横と左横を護衛する形でサンクメライ・ロームへ向かって高度を下げていく。

奇妙なことに、アスクレピオスもほかのガーディアンたちも、クリューを一顧だにしなかった。

クリューはと見ると、さらに肩を(そぼ)めて縮こまっているようだ。


 アスクレピオスは地上に降りることなく、サンクメライ・ロームの都市の中にはいり、サンクメライ・ロームの中心にある、ひときわ立派でガラスと色鮮やかな壁で出来ている美しい尖塔に向かってまっすぐに飛んで行く。

 ウォンブ・ホロス(光の母の緒)は、その尖塔のとっぺんからライトムーンに向かって伸びていた。


(すでにご存じとは思いますが、あのウォンブ・ホロス(光の母の緒)を抱くこの建物は、サンクメライ・タワー(聖壇の塔)と呼ばれています。アウラスさまとイシルスさまは、あのサンクメライ・タワー(聖壇の塔)でお待ちしております)

 アスクレピオスはそう言うと、ナパやタッチたちを見て、何かを念話で伝えたらしく、ニュンペーたちは「それじゃあ、またあとでねー!」とか「レオタロウさま、またあとでー!」などと言って、別の方向に降りて行った。 おそらく、マザー・パラスピリト・アウラスとファザー・パラスピリト・イシルスに会えるのは、クリスティラたちとユリアたちだけなのだろう。

 サンクメライ・タワー(聖壇の塔)の中ほどに外に向かってせり出した広いプラットフォームがあり、そこに人だかりがあり、アスクレピオスはそこへ向かって一直線に降りて行った。



 プラットフォームには百人ほどのパラスピリト(寄生霊)がいた。

全員ハイ・パラスピリト(最高階級寄生霊)であることは、放っているオーラの色でもわかった。

みんなヤドラレ人の体を使っている。ここでもクリスティラの作ったヤドラレ人は人気のようだ。

プラットフォームの端には、警備のためらしいガーディアン(守護者)が20人ほどいた。


 ハイ・パラスピリトたちの中から、ひときわ美しく豪華な身なりの男と女がにこやかに笑いながら前に出て来た。

「『エペロン・ヒルメン』 のマザー・パラスピリトの皆さま、それにミモ・パラスピリト(準聖なる寄生霊)、ミィテラの世界からの冒険者の方々、ようこそサンクメライ・ロームへ!」

「クリューから、連絡を受けてお待ちしておりました... おやおや、クリューは見目麗しい女性になったようですね?」

アウラスとイシルスが歓迎をする。


 みんながボルホーンから降りると、パラスピリト(寄生霊)たちがボルホーンの手綱(たづな)をとると跨って、どこかへ連れて行った。恐らく飼葉(かいば)をあたえ、休ませるのだろう。 


 ユリアたちがアウラスたちに続いて、プラットフォームからサンクメライ・タワーの中に入ろうとしたとき、アスクレピオスが低い声で言った。


「クリュー... いや、今はクリューネとでも呼ぶべきかな? 君はいっしょに行く必要はない!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ