31 エィンシャント・ルーイン(前編)
【Aincient Ruins 古代の遺跡】
レンと愛し合ったあとで、明日の朝には別離しなければならないという悲しさゆえにマモ・シルレイは泣いた。そして、涙のあとのある顔で眠っているシルレイを見てレンは決意した。
(みんな!オレはアキュアロームにシルレイと残ることにした!)
(((((((((((((((ええええええ――――――っ?)))))))))))))))
即、ユリアたちとクリスティラとアキュアマイアから反応があった。
(ちょ、ちょっと!レン、シルレイさまと残るってどういうことよ?)
(聞いた通りだ、ユリア!)
(私はどうなるの?)
(旅でオレよりいい男を見つけてくれ、ミア!)
(ミィテラの世界には帰らないつもりなのか?)
(ああ、帰らない!帰ったらママによろしくなっ!)
(ダメです、ダメです!レンさまをこの町に残すことは出来ません!)
みんなの念話が激しく行き交ったので、目を覚ましたシルレイが反対を表明した。
(そう言っても、オレはシルレイを愛しているんだ。ミアも愛しているけど...)
(......)
ミアが黙ってしまった。
(.........)
(.........)
(.........)
ユリアたちも黙ってしまった。
重苦しい空気がみんなの間に漂う。
その重苦しい空気を破るように、クリスティラが発言した。
(アキュアマイアさん、別のミモ・パラスピリトをマザー・パラスピリトに任命されてはどうでしょう?)
(それいいじゃない!そうすればレンさんはシルレイといっしょに旅を続けれるし、ミアさんとも別れないで済むものね?)
(アキュアマイアさま、それはアキュアロームのパラスピリトたちにとって残酷です...)
(何を言っているの、シルレイ。あなたはアキュアロームの絶対者なのですよ。わたくしがしたように、“自分の心にしたがって”決めなさい!)
(...............)
しかし、心の優しいシルレイは、クリスティラが提案し、アキュアマイアも承認したことを受け入れることを躊躇している。
(マモ・シルレイ。幸福の扉は二度と開かないかも知れないのです。マザー・パラスピリトの代わりになるミモ・パラピリストは何人もいるけど、あなたが今愛せる男はレンさま一人しかいないのですよ?)
クリスティラが、シルレイの気持ちを理解した上でアドバイスをした。
結局、そういうやりとりがあったあとで、シルレイはマザー・パラスピリトの地位をナンバー3のミモ・パラスピリトであるミモ・アラベラに移譲して、ユリアたちといっしょに旅立つことになった。
はたして翌朝、そのことを知らされたミモ・パラスピリトたちは大騒ぎしたが、元マザー・パラスピリトであったアキュアマイアの適切な指導と説明でなんとか納得させることができた。
まあ、アキュアロームの場合、行政はしっかりしているし、ミモ・パラスピリトたちは全員優秀だ。
なので、シルレイのに代わって新しいマザー・パラスピリトとなったマモ・アラベラのもとでも、問題なくアキュアロームを維持していけることは確かだ。
それにしても、一昼夜でマザーパラピリストが2回も代わることは前代未聞のことなので、アキュアパレスは一時騒然となったが、それもァキュアロームの創始者であるアキュアマイアの名演説でおさまった。
“さすがは、アキュアマイアさま”とシルレイもアラベラも感服した。
* * *
「構わないさ。マザー・パラスピリトさまがお決めになったことは絶対だし、アキュアマイアさまも承認されたんだから!」
レンの優しい言葉に、シルレイがレンの後ろで少しはにかんだような声で答えた。
「そう言っていただけると、少し気が軽くなります」
シルレイは、ひしっとレンの背に抱きついた。
レンはシャツを通して彼女の温かい涙を感じた。
シルレイは幸せのあまり、うれし泣きをしていた。
(今晩もたっぷりかわいがってあげるからね!)
念話で今晩の“愛のメニュー”のイメージをシルレイに送る。
それはレンがシルレイに、あんなコトやこんなコトをしているイメージだった。
(ええっ! キャーっ、やめて!やめてください、レンさま!恥ずかしくて死にそうですっ!)
(だって、オレはかわいいシルレイに、色んなことをしたいんだよ!)
(レンさまはヒドイですっ!)
プーっとふくれながらも、早くも今晩の愛のメニューを期待するシルレイだった?
* * *
イーストゾーンの中心、『エペロン・ミドリウム』 を目指して北方へと進路を変えて飛び続けて三日目。
アキュアマイアは、このあたりの地理の知識があるようで「『エペロン・ミドリウム』 に行くのなら、最初は北へ行かなきゃだめよ」とアドバイスをした。
下には果てしないような森が続いている。
驚いたことに、三日間の間にヤドラレ人やラピテーズ族の集落がいくつか上空から見つかった。
ヤドラレ人もラピテーズ族も、クリスティラがマザー・パラスピリトとしてたくさんの生命を作り出したエペロン・テルメンから、エスピリテラ各地に移住していったのだろう。
都合よく一日の旅の終わりに、そのような集落が見つかれば降りて行って、一宿一飯の世話になった。
このあたりのヤドラレ人は、西の地のものたちより文化が進んでいるようで、外敵から守る高い柵に囲まれた集落の中で枯れた草で屋根を葺いた家に住んでいた。
マザー・パラスピリトを見ると、常に彼らはよろこんで一夜の宿と食事を提供してくれた。
エスピリテラ住む者たちにとって、マザー・パラスピリトは“神”同然の存在なのだ。
* * *
三日目の昼過ぎ、ユリアたちは延々と続く森林の上を飛んでいた。
「あっ、レオタロウさん、あそこ見て!あそこ! 森の中を変わったイキモノが群れで走っているわ!」
突然、レオタロウといっしょにオーヴィルの乗って前を飛んでいたアキュアマイアが突然叫んだ。
見ると青灰色の動物が40頭ほど森の中を駆けているのが見える。
何か捕食獣にでも追われているのだろうか。
その青白い四つ足の動物は、全身は青白だが胸が赤く鋭い嘴を持ち、頭頂に先端が白い大きな扇状の飾り羽毛を持っている奇妙なイキモノだった。
そして、森の梢を掠めるようにして青白い動物を追っているモノが数匹見えた。
黒っぽい体に大きな翼を持つ捕食獣は、ワシの頭をもっており、しなやかな体で巧みに木々を避けながら飛び青灰色の動物を追っている。
「黒い獣の後ろを何かが追っているわ!」
目のいいマユラが叫んだ。見ると、子どもみたいな小さなモノが弓を構えて捕食獣のあとを飛んでいる?
「あれは、たぶんハーヴニュンプたちよ!」
アキュアマイアが飛んでいる子どもたちを指さして言う。
「ハーヴニュンプ?」
「ハーヴニュンプ? なんだそりゃ?」
聞いたことのない種族の名前に、ユリアたちが「?」のマークを頭の上に浮かべている。
「森の守護者よ!追いかけられているイキモノを守ろうとしているのよっ!」
「ユリアさん、あの追われているイキモノを...」
「はいっ、助けてあげましょう!」
それを聞いたリュウはボルホーンの手綱をしっかりと握って叫んだ。
「バイアリータークっ 、降下だ!」
「ヒヒヒヒ――ン!」
バイアリーターク が頭を下げて急降下をはじめる。
レオタロウもすぐにオーヴィルを急降下させはじめる。
ユリアもキャッリラを降下させながらガーンデーヴァの弓に矢をつがえる。
彼女はラィアといっしょだ。ほかの仲間も後を追ってくる。
森がどんどん迫ってくる。獣の数は7匹だ。
「アイ、私が先頭の3匹を倒すから...」
「オーケー!残りを私とリュウとレオタロウとモモコちゃんで倒すわ!」
ユリアは森に火事を起こさないように、通常の矢を放った。
ピュピュピュ――っ!
同時にアイが雷属性攻撃魔法『雷禍』を放った。
バシ――ッ!
ドドドド―――ン!
1億ボルト、50万アンペアの雷撃が獣たちを雷撃し、一瞬にして獣たちを黒焦げにしてしまった。
「アイっ!ダメじゃん、一人でやっつけちゃあ!」
モモコがプーっとふくれている。
たぶん、ビルにいいところを見せたかったのだろう。
「まあ、いいじゃないか。やっつけたんだから!」
リュウがモモコをなだめる。
森の中の空き地にボルホーンを着地させた。
青灰色の動物たちはアイの雷撃の音に驚いてどこかへ消えてしまった。
アイが雷撃した獣は黒焦げになっているのでどんな獣かわかりにくいが、ユリアが倒した獣はよく見ることができた。獣たちはワシの頭をもちながら、ライオンの体・尾・後ろ足をもち、鋭い鉤爪のある前足と大きな翼をもっていた。
(さっきのハーヴニュンプ っていう子たちが木陰から見ているわ!)
ミアが念話でみんなに知らせる。
彼女は予知能力と察知能力がすぐれている。
「(あなたたち、怖がらなくてもいいのよ。私たちは危害を加えませんから!)」
アキュアマイアが声と念話を使ってハーヴニュンプたちに呼びかける。
一人、二人、三人... とハーヴニュンプたちが木の陰から出て来た。
みんな5、6歳の女の子のようだが、顔つきをみると子どもではないことがひと目でわかる。
「こんにちわ!」
「やあ!」
「はじめまして!」
「おっす!」
ユリアたちがハーヴニュンプたちが警戒しないように、ニコニコ顔であいさつをする。
「キッキッ キキキ――っ!(あなたたち、何をしたの!)」
「キキッキ キッキキッキ――っ!(オウギジカを驚かせて!)」
「キキッキ キキィキッキ――っ!(その上、木まで焦がせて!)」
ハーヴニュンプたち、すごく怒っている?
(そう怒らないで、ハーヴニュンプさんたち。ほら、ご覧なさい、この獣たちを。この子たちが倒してくれなかったら、オウギジカたちは殺されていたのよ?)
クリスティラが、ハーヴニュンプたちをやさしく諭す。
クリスティラがハーヴニュンプと話している間、ロリィがソーウェッノーズを死んだ獣たちにする。橙色の小さな花火のようなモノが獣たちから飛び出し、森の中へ消えて行った。
「キ?」
「キ!」
「キ...」
それを見たハーヴニュンプたちが驚いた。
そして、お互いの顔を見合わせて何やら早口でキキキキッとしゃべっている。
ようやく状況を理解したようだ。
さすがマザー・パラスピリト、言葉といっしょに早速脳操作で、“私たちはあなたたちのお友だちですよ”という認識を植えたのだ。
ハーヴニュンプたちは、身長が50~60センチくらいで、背中に透明な蝶のような羽をもっている。
全員メスだが、エスピリティラの世界の常識通り、何も身につけてなかった。
体は小さくても、立派な妖精なのでおっぱいはちゃんとあるし、オシリもふっくらしているし、ヘアがあるべきところにはちゃんとあるので、なんだか奇妙にエロい?
「(おまえたち、その恰好、おかしい!)」
「(そうだ。なんで布で体かくしている?)」
「(この方たち方は... パラスピリトさまか?)」
「(パラスピリトさまに違いない!)」
「(アタマ、光っているし!)」
クリスティラのおかげで落ち着いていたハーヴニュンプたちがまた騒ぎはじめた。
(そうよ!私たちはハイ・パラスピリトよ!)
(この方は西の地のマザー・パラスピリトだったクリスティラさま。こちらはアキュアロームのマザー・パラスピリトだったアキュアマイアさまよ!)
ラィアとロリィが、まるで自分のことのようにプリプリの胸を張って告げた。
「(ひゃ――っ!ハイ・パラスピリトさまだ――!)
「(わ――い!ハイ・パラスピリトさまだ――!)」
「(マザー・パラスピリトさま――!)」
「(お会いできてうれしいです――っ!)」
ハーヴニュンプたちは地面に降りて、ひざまずいて頭をさげている。




