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エスピリテラ漂流記  作者: 空創士
ブレイブス・チュードレン
31/123

30 シルレイズ・ケース(後編)

 アキュアロームには三日間滞在した。


 アキュアロームは居心地がよかったし、アキュアマイアも「もう少し滞在されませんか。お聞きしたいことも、お話したいことも、まだたくさんありますから...」と言って引き留めてくれたのだが…

 いつまでもアキュアロームにいても、イーストゾーンの中心にある 『エペロン・ミドリウム』 の方からユリアたちに近づいて来くれるわけではない。

いや、ラノベの世界ではそんなことも起こり得るかも知れないが、少なくともエスピリテラでは、そんなことは起きない。


「アキュアマイアちゃん、ありがとうございます。でも、すでにお話ししましたように、わたくしたちは 『エペロン・ミドリウム』 を目指していますので、明日の朝にはお(いとま)させていただきます」

「本当に残念だわ、クリスティラちゃん。せめてあと一週間ほど滞在してくれればうれしかったのだけど...」

アキュアマイアは、寂しそうな顔をして― 水色の瞳に涙を浮かべて言ったのだった。

         

      

 *   *   *



 レオタロウの乗ったオーヴィルが先頭を飛んでいる。

五芒星(ごぼうせい)はほぼ真上にあり、さしもの広大なモグノアガローム湖も先ほど東の端を過ぎて、今は眼下には青々とした森が果てしもなく続いているようだが…

そうではない。遥か前方には天まで届くかと思われるような高峰が連なっているのが見える。


「ひゃ――っ、ステキ――っ!空の旅って慣れたらこれほど気持ちいいものないわね!」

大声で叫んでいるのは、アキュアマイアだ。

アキュアマイアはレオタロウの後ろに乗ってではしゃいでいた。


彼女は昨夜、クリスティラたちが「明日の朝にはお(いとま)をして東への旅を続けます」と夕食のときに告げたとき、アキュアマイアは、突然みんなに言ったのだ。

「では、わたくしもクリスティラちゃんとご一緒させていただきます!」


「「「「「「「「「「「「「「えええええええ――――――っ?」」」」」」」」」」」」」」

アキュアマイアのミモ・パラスピリト(準聖なる寄生霊)たちがイスからひっくり返った。


「「「「「「「「「「「「「「えええええええ――――――っ!」」」」」」」」」」」」」」

ユリアたちが驚いた。


「ゲーホッ、ゲホ、ゲホ、ゲホ、ゲホ!」

レオタロウが飲んでいたグフのスープでむせた。

彼はこの三日間、毎日のようにアキュアマイアと愛し合って、彼女から愛の告白をされていた。

「レオタロウさんとずーっといっしょにいたい!」

アキュアマイアからそう言われていたので、彼と離れたくないために、アキュアマイアはいっしょに旅をすると言ったと思ったのだ。


しかし、幸か不幸か、アキュアマイアが一緒に旅に出ると決意したのには別の理由からだった。

「わたくしは、クリスティラちゃんがグラニトルの町をあとにして、ユリアさんたちと 『エペロン・ミドリウム』 を目指す旅に出る決意をされたことをとても尊いことだと思っているわ。

それで、わたくしもいっしょに旅をさせていただいてエイダ(光の母)さまにお会いしたくなったのです!」


アキュアマイアは、もう涙をポロポロ流しているミモ・パラスピリト(準聖なる寄生霊)たちの顔を一つひとつ見ながら言った。

「マザーパラピリストさま、私も連れて行ってください!」

「マザーパラピリストさまがいないアキュアロームなんて考えられません...ウウッ...ヒクッ...」

ミモ・ペルラが歎願し、ミモ・イザイラが嗚咽しながら言う。


「アキュアマイアさま。クリスティラさまにラィアさまとロリィさまがついていらっしゃるように、私たちの中からもぜひ、2、3人のハイパラスピリトをアキュアマイアさまの旅にお供させてください!」

ナンバー2であるミモ・パラピリストのシルレイは、“アキュアマイアさまが旅に出られるのならば、たぶん、自分がマザーパラピリストとなってアキュアロームを治めていかなければならない”と考えた。

そこでアキュアマイアさまが、お一人で旅をするのは不自由だろうと考えて、誰かミモ・パラスピリトをお供につかせた方がいいと考え、提案をしたのだ。


「そうしたい気持ちはあるけど、これはわたしが始めた旅じゃないのよ? クリスティラちゃんに聞いたら、“たぶん一人くらいならユリアさんたちも同行を許可するでしょう”と言ったけど、アキュアロームから 『エペロン・ミドリウム』 までどれほど日数がかかるかわからないの。食料も限られているし、寝るテントの数も決まっているの。人数が増えれば増えるほど、ユリアさんたちの負担も増すのよ...」

アキュアマイアにそう言われては、シルレイはもう何も言えなかった。



 *   *   *



 そして昨夜、クリスティラに倣ってシルレイへのマザー・パラスピリトのポスト移譲のセレモニーが厳かに行われた。

アキュアマイアはクリスティラに教えてもらった演出(お芝居)をし、賢いシルレイも同調してそれに合わせ、いかにもアキュアマイアさまが、そのすべての能力を新しいマザーパラピリスト、マモ・シルレイに伝えたかのように見せ、アキュアロームの“新しいマザー・パラスピリト”が誕生した。

 そうすることで、アキュアロームはこれからも安泰”という認識と安心感をパラスピリト(寄生霊)たちにあたえたのだ。もちろん、それがアキュアマイアによる脳操作だということをシルレイたちは知っていた。


 その夜、マザー・パラスピリトのポスト移譲のセレモニーが(つつが)なく終わったあとで、マモ・シルレイは自分の寝室になったアキュアパレスの最上階の元アキュアマイアの部屋にいた。


 ......... 

 ......... 

 ......... 


 マモ・シルレイは、長い時間思案していたが、ある決断をした。



 しばらくして、レンが自分の部屋から出た。

そして、最上階へと続くガラスのスロープを興味深そうに見ながら上がって行った。

 マザー・パラスピリトのの居住エリアを守るセキュリティガードのハイ・パラスピリト(最高階級寄生霊)がいたが、レンの姿を見ると黙って道を開けて通した。


マザーパラピリストの寝室のドアは開いていた。


「レンさま、どうぞお入りください」

中から静かな声が聞こえて来た。


部屋の中にはロウソクが灯されていた。

ガラスの壁越しに東の地平線の上に巨大なライトムーンが見える。

ライトムーンの淡い月光に照らされた部屋は、幻想的な雰囲気を醸し出している。


それになんだかとてもいい香りもしている。

なんともロマンチックな雰囲気が漂う部屋に招き入れられて、レンは少し呆然となっていた

マモ・シルレイは、青緑の髪を夜風になびかせながら、開けられた窓から外を見ていた。

薄青色の極薄ネグリジェを通して、シルレイのふっくらしたオシリが見える。


「もうお休みになっておられましたか?」

ふり向いてにこやかに笑いながらレンに訊く。

極薄のネグリジェ越しにふくよかな胸が見える。


「いえ、まだ起きていました、マモ・シルレイ」

「そう畏まらなくても... 今まで通りにシルレイで結構ですわ?」

レンはシルレイの顔をまじまじと見て、それからこんもりと盛り上がった胸を見て、おへその見えるお腹を見て、さらにその下を見る。

レンの視線を感じながらシルレイはにこやかに微笑んでいる...

ようだが、その顔はかなり緊張しているみたいだ。


「それで、お話ってなんですか?」

「ドア、閉めていただけませんか?」

「あ、はい」


レンはドアまで歩いて戻り、両手でドアを閉じ、ふり返ってシルレイの方を見た。


「!」


レンは目を大きく開けた。

美しい少女の体がそこにあった。

ネグリジェは、足元に落ちていた。

覚悟を決めた表情のシルレイ。

だが、レンの視線はすぐに彼女の胸に移る。


誰もふれたことのない白い胸は

突き出るようにツンと尖っている。

そして、キュッと締まったウエスト。

なだらかな下腹部。

青緑の叢...


「あの... あの... あのですね... 」

シルレイが頬を少し赤くして、つっかえながら言おうとする。


「レオタロウがアキュアマイアさまを抱いたように... シルレイさまもオレに抱いてほしいということでしょう?」


「は、はい...」


それを聞くと、レオタロウはズイズイとアキュアマイアの前に近づいていった。

シルレイは2、3歩後退りしながら、つっかえつっかえ言った。


「そ、そうなのです!わ、私は新しいマザー・パラスピリトとして、アキュアロームを治め発展させていかなければなりませんし、パラスピリトも増やしていかなければなりません。そして、クリスティラさまがお示しになった方法― 共生ということも考えなければなりません。そのうえで、やはり生殖というものも、マザーパラピリストとして経験しておいた方がいいと思いまして...」

「それで、その栄えあるお相手に、すでに経験豊富でイケメンであるオレを選んだということですね?」

「はい。レンさまはイケメンですし... フギュっ!」

レンはシルレイの胴に手をまわして抱き引き寄せると、その愛らしい唇にチューをした。


「んぐっ んぐっ んぐっ...」

何もかも初めてのシルレイは、緑色の目を白黒させて一生懸命にレンに応えようとしている。

レンの手はプリプリとしたシルレイのオシリをモミモミしている。

そして- レンはシルレイの耳を舌でなめた。


「きゃっ!?」


それまでチューとモミモミで気分がよくなっていたシルレイは、耳の穴にヌメっとした舌先が入った感触に、“ゾクっ!”と感じて小さい悲鳴をあげた。


レンはシルレイをお姫さま抱っこしてベッドに横たえた。


「レンさま... 私はこんなことをするのは初めてなのです... だから...」

「うん。心配しなくてもやさしくしてげるよ!」

シルレイはポッと頬を染めた。


それがかわいくて、レンはなんだか“ドキっ”とした。

レオタロウは、シルレイの上に覆いかぶさった。


 ......... 

 ......... 

 .........  


シルレイは、経験豊富んあレンのテクニックのおかげで、生まれて初めて“無我夢中の境地”を味わったあとで、まだ少し息を弾ませていた。


レンと目が合うと、真っ赤になった。

「レンさま、申し訳ありません... 先ほどは取り乱してしまいました...」

「いいじゃん、それだけ良かったってことだろう?」

「はい。まだ信じられないくらいです...」

シルレイはそう言って微笑んだ。


“よし、じゃあそろそろ本番と行くか”

「じゃあ、シルレイさま、本番始めますよ?」

「あ... はい... 始めてください...」


シルレイは先ほど“無我夢中の境地”に達したあとで余裕ができてい。

“本番”が何を意味するのかは、すでにアキュアマイアから教えてもらっていた。


「もし、痛かったら言ってくださいよ?」

「あ、だいじょうぶです。“痛覚伝導路”を切りますから...」


 ......... 

 ......... 

 ......... 

 .........  



「ふ~ぅ...」


全てが終わったあとでレンが一息ついた。

何とか新マザーパラピリスト・シルレイさまのご要望に応えることができて一安心した。

レンの体に腕を回して体をくっつけて、幸せそうにレンを見ているシルレイ。


そんなシルレイがとても愛おしく見える。

出来ることならば、アキュアマイアさんといっしょに旅に連れて行きたい…

そんな考えがふとレンの頭をよぎった。



 *   *   *   



 レンは4.5歳のオス・ボルホーン「ポトゥゥゥ」に乗っていた。

彼の前にはバイアリータークに乗ったレオタロウとアキュアマイアが飛んでいる。

アキュアマイアはしっかりとレオタロウの腰に抱きついており、誰から見てもアツアツの恋人同士に見える。

“レオタロウのヤツ、うまいことヤリやがって...!”

そんなことを考えているが、レンは少しも怒ってないし、羨ましいとも思ってない。


「レンさま... 本当に申し訳ございません...」

レンの胴に白い腕をまわしてそっと抱きついている青緑の髪の美少女がささやいた。

「構わないさ。マザー・パラスピリトさまがお決めになったことは絶対だし、アキュアマイアさまも承認されたんだから!」

レンの後ろに乗っているのは、シルレイだった。



三日前、アキュアパレスのマザー・パラスピリトの部屋で、レンに初めて愛してもらったあとでシルレイは静かに泣きはじめた。

レンは“痛覚伝導路は切ったと言ったけど、やはり痛かったのかな?”と思い、やさしく彼女の青緑色の髪を撫でながら聞いた。

「痛かったかい?ごめんよ」

「いえ、痛くはありませんでした... ただ...私はレンさまがどうしようもなく好きになったのです... 明日はもうお別れしなければならないかと思うと... シクシク...シクシク...」

「シルレイ!」


そのかわいさにレンはシルレイにチューをした。

ふたたび、甘~~い時間を過ごしたあとで

涙のあとのある顔で眠っているシルレイを見てレンは決意した。


(みんな!オレはアキュアロームにシルレイと残ることにした!)




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