29 シルレイズ・ケース(前編)
【Sirley´s Case シルレイの場合】
(レオタロウさん... レオタロウさん)
夜中にリュウは頭に響く声で目が覚めた。
早すぎる夕食のあと、アキュアマイアは気を利かせて、夜の8時ころに軽い夜食をもって行かせた。
パン状の薄く香ばしく焼いたものと、香辛料のちょっぴり効いた白いクリームにちょっぴり甘酸っぱいジュースだった。
ユリアたちは若いので、夜になるとすでに空腹だったのでお代わりをして食べ、そのあとでアキュアロームのミモ・パラスピリトたちや、ハイ・パラスピリトたちを交えて楽しいおしゃべりをして就寝したのは午前零時近かった。
(アキュアマイアさま?)
(わたくしのお部屋へ来ていただけませんか? ちょっとお話したいことがあるのです...)
(はい。わかりました)
トランクス一枚で寝ていたレオタロウは、起き上がると同室のリュウとレンとギガタンが寝ているかどうかも見ずに、ドアを開けてガラスの廊下を歩いて行った。
ガラスのスロープを2階分上がると最上階だった。
そこはァキュアロームのマザー・パラスピリトであるアキュアマイアとミモ・パラスピリトたちの“聖域”だ。
最上階は、ハイ・パラスピリトであっても許可なしで入ることが禁じられている特別エリアだ。
最上階の入り口にはハイ・パラスピリトのガーディアン -当然、女性だ- がいたが、アキュアマイアがすでに知らせていたらしく、無言でレオタロウを通した。
アキュアマイアの寝室は一番奥にあった。
両開きのガラスのドアは開いていた。部屋の中には、たくさんのロウソクが灯されており、ロマンチックな雰囲気が漂っている。
それに、何だかとてもいい香りもする。
香でも炊いているのだろうか。ガラスの天井からはライトムーンが見える。
だが、日中の五芒星の強烈な日射を遮るために色がついたガラスなので、ムーンライトの月光はかなり薄めにしか入って来ないため、ロウソクの光と相まってさらに幻想的な雰囲気を醸し出している。
アキュアマイアは、部屋の真ん中にいた。
タフィーピンクの極薄ネグリジェを着て、ガラス製の立派なイスにきれいな足を組んで美しい椅子に座っていた。極薄のネグリジェの胸を形のいいおっぱいが盛り上げている。
ポッチのところだけが、まるでボタンのようにプクンと出ていて、それがレオタロウの視覚を通して脳を刺激し彼を興奮させる。
「レオタロウさん、夜分にお呼びたてして申し訳ありません。さあ、どうぞ入ってください」
アキュアマイアは立ち上がり、片手を伸ばしてレオタロウを招く。
極薄のネグリジェなので、身体のラインが丸見えだ。
「お話ってなんですか?」
ふらふら~っと部屋の中に入ったレオタロウが訊く。
アキュアマイアが両手をドアの方に向けて閉めるしぐさをすると、ドアが音もなく閉じた。
「あの... あのですね... 」
アキュアマイアはなんだか言いにくそうだ。
レオタロウはズイズイとアキュアマイアの前に近づいていって訊いた。
「オレに抱いてほしいということでしょうか?」
「そう、そうなの!私もこの地のマザー・パラスピリトとして、やはり経験しておかなけば、今後、この地に住むパラスピリトたちをうまく導くことが難しくなるかもと思って... フギュっ!」
レオタロウは最後まで聞かずに、アキュアマイアの白い手を引っ張って引き寄せると、その愛らしい唇にチューをした。
突然のチューに、アキュアマイアは驚いて水色の目を大きく開け、レオタロウの目を見ている。
そんな反応には構わずに、レオタロウはチューを続けながら、ネグリジェの上から豊かな胸にさわった。
アキュアマイアは無我夢中でチューを味わっている。
10分経ったのか、20分経ったのかわからない。
気がつくと、いつの間にかネグリジェは脱がされて、ガラス製の豪華な天蓋付きベッドに横たえられていた。
.........
.........
.........
アキュアマイアは、初めて“忘我の境地”を経験した。
「ふぅ ふぅ ふぅ ふぅ ...」
初めて身体を許した男 -レオタロウ- による体へのタッチは、アキュアマイアの想像予想以上に刺激が強く、アキュアマイアの呼吸は激しくなり、心拍数もこれまでにないほど上昇した。
しばらく静かにして呼吸が落ち着くのを待つ。
アキュアマイアは、そっと目を開けた。
美しい水色の目でレオタロウを見つめる。
レオタロウと目が合うとぽっと頬を染めた。
もう完全にレオタロウにゾッコンのようだ。
「レオタロウさん... なんだか奇妙な感じがしますけど... これが“愛”というものなのでしょうか?」
レオタロウはアキュアマイアがとてもかわいく見え、その愛らしい唇にチューをした。
(レオタロウさん、好きです!もっと、こういうことしてもらいたいです!)
夢中になってレオタロウのチューに応えながら、念話で愛を告げるマザー・パラスピリト。
レオタロウはすでに次のステップに進む準備オーケーとなっていた。
(じゃあ、そろそろ本番に行こうか?)
(えっ? 本番って... 今のが本番じゃなかったのですか?)
(アキュアマイアさん、あれだけで終わるなら、オレのコレいらないじゃん?)
レオタロウは彼の下腹部で存在を誇示しているモノを指さした。
(あ、それがレオタロウさんの交接器ね?)
(アキュアマイアさん、マザー・パラスピリトの割には、こういうことには疎いんだね?)
(パラスピリトの増加には、動物的な生殖行為は必要ないので関心がなかったのです...)
(生殖行為っていうのは、オスが種をメスに移す行為で、種を保存するために重要なことだから、その行為は気持ちがいいんだよ。食べるのが楽しいのは、生きるために必要なため。それと同じなんだ)
(あら、そうなのですか? それで美味しい食べ物を食べると幸せを感じるのですね?)
(だから、オレたちも子孫を残すための生殖行為をすると幸せを感じるのさ!)
(レオタロウさんは物知りですね?)
“うひょーっ!女の子から初めて褒められた!”
いつもモモコ姉から「アホ!」「もっと考えて言いなさい!」と、けなされてばかりいるレオタロウにとってアキュアマイアの誉め言葉は誰からの誉め言葉よりうれしかった。
「じゃあ、始めるよ?」
「は、はいっ!お願いしますっ!」
期待いっぱいの声でワクワク感で心臓がドックン、ドックンと高鳴りするのを感じながら、元気いっぱいに答えたアキュアマイアだった。
が.........
「痛――――――いっ!」
ライトムーンが驚いて雲間に隠れるほどの大声でアキュアマイアは叫んだ。
そして悟った。
生命を作り出すことの重要さは、この痛さを知ることで、初めてその重要さを知るのだということを。
そして、その生命を作り出す重要なことをやっているのに、泣き叫び続けるのは、マザー・パラスピリトとして “恥ずかしいことだ” と。
そう覚った時、突然クリスティラの念話がアキュアマイアの頭に響いた。
(アキュアちゃん、“痛覚伝導路”を切るのよ…)
“あ、そうか!痛覚伝導路を切ればいいのね!”
クリスティラのアドバイスで痛覚伝導路を遮断した。
それによって、痛さが大脳皮質の一部である一次体性感覚野に届くのを阻止することができた。
痛みは一瞬で消えた。
レオタロウは、それまでこわばったようになっていたアキュアマイアの体から緊張がなくなったのを感じた。
彼女はレオタロウの目を見て、ニッコリと微笑んだ。
そのあまりのかわいさにレオタロウはまたチューをした。
.........
.........
.........
十分後。
アキュアマイアの初経験が終わった。
それは、彼女にとっては想像以上のことだった。
初めての経験した、耐えきれないほどの痛み... そして、痛覚伝導路を遮断したあとで感じた幸福感...
そのコントラスト的な体験の余韻に浸りながら、アキュアマイアは、しみじみとクリスティラが言ったことを思い返していた。“世界が甘くとろけてしまいそうになった...”と言った言葉を。
アキュアマイアはレオタロウの腕枕で子ネコのように甘えていた。
レオタロウはそんなアキュアマイアを愛しく感じ、美しい水色の髪をやさしく撫でていた。
「レオタロウさん... わたくし、とても感動しました。とてもよかったですわ...」
「そうか。それはよかった!」
「あの... 」
「ん?どうした?」
「わたくし、レオタロウさんを“恋人”にしてもいいですか?」
「......... おう!いいよ!」
「うれしいです!」
レオタロウが即答しなかったのは、ミアのことを考えたからだ。
だが、“ここはエスピリテラんだ!そしてオレはパパの息子なんだ!”と割り切ってオーケーの返事をしたのだった。
アキュアマイアは、うれしさのあまり、豊かな胸を押しつけて抱きつき、チューをした。
あまりのかわいさに、若いレオタロウはたちまち元気になった。
「レオタロウさん、また交接が行える状態にになっていますよ?」
「アキュアちゃんがかわいいからだよ!」
「アキュアちゃん? うふっ! かわいい呼び方ですね... フギュっ!」
レオタロウはアキュアマイアにチューをした。
レオタロウはエルフの強精剤を飲んで、明け方近くまでアキュアマイアと愛し合った。
明け方になると、さすがにレオタロウも疲れ果てて爆睡してしまった。
若いレオタロウの激しさに、アキュアマイアもヘトヘト&なっていた。
レオタロウの子供のような寝顔を見ながら、アキュアマイアは、
“肉体を使って子どもを作るってたいへんなことなのね…”
と思いながらも、幸せいっぱいなマザー・パラスピリトだった。




