25 ファー・イースト(後編)
先頭を飛ぶリュウの指示で、一行は地上に降りた。
五芒星 はもう沈みかかっていたので、川の近くの草原で一泊することにし、男の子たちとミルリ、チルリ、ビルがテントを立てている間、女の子たちは川に行って水を汲み、食事の用意をはじめることにした。
川はせせらぎで透き通った冷たい水が流れていた。
女の子たちは、ついでに水浴びをはじめた。食事の方はラピテーズであるミルリ(リーア)とチルリ(ラピア)にまかせてキャっキャっ言いながら水をかけっこしたり、おたがいを洗いあったりしている。
もちろん、クリスティラもラィアもロリィも裸になって水浴びを楽しんでいる。
「おまえらズル――い!」
「そうだ、そうだ―!」
「オレたちも水を浴びるぞ―っ!」
「ボクも――っ!」
テントの設営が終わった男の子たちが、服を脱ぐのももどかしいといった感じで服を脱いで川に走って来た。
「きゃ―――っ!」
「リュウのえっちー!」
「レンのエッチ――!」
女の子たちが一斉にハダカで川に飛び込んで来た男の子たちを見て騒ぎはじめた。
そして川の中で男の子たちと女の子たちの追っかけっこがはじまった。
男の子たちは、女の子たちを追いかけて、前から、後ろから抱きつくのだ。
そして抱きつかれたら― もう終わりだ。
胸を揉まれたり、オシリをなででられたりされてしまう。
「ほら、つかまえた!」
モミモミ...
「きゃ――っ、やめて――っ!」
「待て――っ、アイ――っ!」
ナデナデ…
「いやん、そんなところ撫でないで!」
「あっ、イヤ――っ!」
「リディアーヌ、つかまえた!」
「ひゃ――ん!」
スリスリスリ...
ミアは浮遊魔法で逃げようとしたが…レンの念動力で捕まってしまった。
「やめて――っ、レンお兄ちゃんっ!」
ギュッギュッ
クリスティラもロリィもラィアも男の子たちにつかまって、うれしそうに(?)胸を揉まれたり、オシリを撫でられたりしている。
男の子たちにつかまらないのは獣人族のハーフで足が速いマユラと怪力のモモコだけだ。
モモコもレオタロウも鬼人族国の女王である母ソフィアの子であり、怪力勇者の名を欲しいままにした母の遺伝子を強く継いでいる二人は怪力の持ち主なので、リュウもレンも怖がって追いかけないし、捕まえもしなかったからだ。
そうは言ってもモモコも“花も恥じらう17歳”。
少しは男の子からかまってもらいたと心の底では願っていた。
モモコは少し羨ましそうに男の子たちから触られまくっている女の子たちを見ていた。
彼女もやはりレオ王を魅了した母のソフィアの美貌を受け継いだすばらしいボディーをしている。
バストは85センチのDカップ、ウエスト56センチ、ヒップ 87センチというバツグンのプロポーションで、髪の毛はこれも母親譲りの青い髪と緑色の目の美しい女の子なのだ。
“あぁ―ぁ… 私にもパパみたいなステキな男、現れないかな…”
そんなことを考えながら川での遊びを見ていると…
ギュギュっ!
いきなり後ろからDカップの胸を揉まれた。
「ヘっ?!」
おどろいてふり返ると、いつの間にかビルが後ろに忍び寄って彼女の大きな胸を揉んでいた?
ビルの手はダトーゥ族特有の手の甲は硬い角質だが、手のひらは人族並みにやわらかいので、揉まれるのはそう悪くない?
「ビ...ビル?」
「モモコさん、一人ぽっちでしょ?ボクと遊ぼうよ!」
「ええっ? フギュっ!」
ビルにキスをされた。
そしてガッシリとダトーゥ族のバカ力で抱きしめられた!
モモコは怪力だが、ダトーゥ族であるビルの力はそれを上回った!
さすがに固い地中にトンネルを掘るのを得意とする種族だ。
「く... くっ... ビル、離して!」
「ヤダ!ボクはモモコさんが好きなんだ!」
年は5歳だというビルの身長はモモコより、まだ10センチほど低いが…
何かがモモコのオシリに当たっている?!
“こ、これは、ダトーゥ族のアレ?”
ダトーゥ族のアレはかなり長く、30センチ以上もある。
何度となく、ダトーゥ族のオスの長ーいアレを見たことのあるモモコには、ビルが一生懸命にオスとしての本能を果たそうとしているのがわかった。
どうやったら子どもが出来るかは、ちゃんと勇者王国の学校で習っているのだ。
「ビル... 私は人族と獣人族のハーフなのよ?あなたはダトーゥ族でしょ?」
「愛には種族も年齢差もないんだよ!」
そう言いながら、ビルはモモコを怪力で抱え上げると川のそばの藪の中へ連れ込んだ。
* * *
「みんなに改めて紹介するわ。私のカレシになったビルよ!」
川遊びを終え、ミルリ、チルリ が川遊びにも参加せずに一生懸命に作った夕食を食べるためにテントのところにもどったところでモモコはDカップの胸を張って告げた。
「「「「「「「「「「「「「ええええええええええええ―――――っ?!」」」」」」」」」」」」」
全員ズッコケた。
ビルは余裕ある男をふるまい、モモコの腰に太い腕をまわしている。
「おめでとうございます、モモコさん!」
最初にお祝いの言葉をのべたのはクリスティラだった。
「おめでとうございます!」
「おめでとう、モモコさん!」
「おめでとう!」
ラィア、ロリィそれにミルリとチルリもすぐにお祝いを言った。
こと、ここにいたってはユリアたちも祝ってやらなければ恰好がつかなくなる。
「モモコ、よかったね!」
「やったね、モモコ!」
「そうか!ビルとつきあうことになったのか!おめでとう!」
「モモコお姉さん、やったじゃん!」
「やれやれ... これでモモコ姉に嫉妬されなくて済むな!」
ゴチン!
「って!何すんだよ、モモコ姉?」
「あんたはいつも一言多いのよ!」
そう言いながらも頬を染めてうれしそうなモモコだった。
子ども時代にかえったような楽しい川遊びのあとはお待ちかねの野宿だ。
森から枯れた枝などを集めて来て火をつけ、さながらキャンプファイヤーだ。
冒険の旅-初日の夕食は、分厚い煎餅みたいな肉まんじゅうと発酵酒にフルーツジュースだ。
肉まんじゅうのような煎餅は5センチと分厚く、直径が20センチほどあり、いわばラピテーズのサンドイッチとでも言うべきもので、ラピテーズは軽食代わりによく食べる。
フルーツジュースは、これもラピテーズが好んで飲むものを粉末乾燥したものを持ってきている。
ミルリとチルリは、それぞれラピテーズであるリーアとラピアをヤドラレ人化したしたからか、とにかくよく食べる。肉まんじゅう煎餅をペロペロっと5、6個食べ、燻製干し肉をかじり、燻製腸詰めを食べながらフルーツジュースをガブガブ飲んでいる。干し野菜を水でもどし調味した野菜スープも作ってはいるが、それは見向きもせずに肉をガツガツ食べている。まったくの肉食系らしい。
「これって、ユリアたちが言っていた“ピクニック”でしょ?」
「いいね!こういうのとってもいいわ!」
リーアとラピアがウキウキと話している。
クリスティラたちハイ・パラスピリトは野菜スープに肉まんじゅう煎餅を浸しておいしそうに食べている。
「く――っ!野宿ってたまんないわね――!」
「このあとで15ピーでもやるのかしら?」
ラィアとロリィも楽しそうに話している。
「なに、その15ピーというのは?」
クリスティラが聞いたことのない言葉に興味をもつ。
「3人の人と愛し合うを3ピーって言うんだってミアちゃんが教えてくれたの!」
「え...? じゃ15ピーって言うのは...」
「決まっているじゃないですか、15人で愛し合うことですよ!」
「わ――い!ワクワクする――ゥ!」
“やれやれ... このハイ・パラスピリトちゃんたち、何を考えているのかしら?”
燻製腸詰をかじりながら、ユリアが首を横にふってため息をついている。
結局、15ピーなど起こるはずもなく― ラィアとロリィと... そして少なからず興味をもったクリスティラたちが期待したことは一切起こることなく、3つのテントに分散して寝ることになった。
当然、男の子たちは男の子たちだけ。女の子たちは二つのグループに分かれてそれぞれのテントで休んだ。
* * *
翌朝は五芒星が昇る前にテントを解体し、ほかの荷物といっしょにボルホーンに積み込んで出発した。
「東に向かえば巨大な湖があります。そこを渡った先には高い山脈があります。私は3万年前にそこを超えてエペロン・テルメンへやって来ました...」
昨夜、楽しい夕食のあとでキャンプファイヤーを囲みお茶を飲みながら、みんなはクリスティラの話を聞いた。
「わが子たちよ、さあ行きなさい!このエスピリテラ光の霊をもつ生命で満たすのです!」
元祖母アーヴァの娘・エイダから生まれた、最初のハイ・パラスピリトの一人であるクリスティラは、いっしょに生まれたほかのハイ・パラスピリトたちといっしょに光の母の元を立った。
「エスピリテラで、新たな生命を作り、育み、増やすという使命感と期待で心がワクワクしていたのを今でも昨日のことのように想い出します...」
遥かな遠くを見るように蒼い目をダイアモンドを散らばめたような夜空に向け、今まさに沈もうとしているライトムーンを見ながらクリスティラは続けた。
「いっしょに飛び立った数百の仲間たちは、いつの間にか離れ離れになって見えなくなりました。
いつの間にか、私は一人ぽっちで飛んでいました... 山や平野をいくついくつも超え、大きな大きな湖を渡って... そう、こんなダイアモンドのような星々がきらめく夜でしたわ。まだ、あの美しいライトムーンも... 」
そう言って巨大なライトムーンを見た。そして反対側を見て、今日超えて来た東の山脈から姿を現したダークムーンを見て眉を潜めて
「あの忌まわしいダークムーンもありませんでした... 」
「ええっ?ライトムーンもダークムーンもなかった――?」
「3万年前はなかった? それってどういうことっ?」
「まさか... 3万年の間に出来たというんじゃ...」
ユリアたちがおどろく。
「ええ。3万年前には、ライトムーンもダークムーンも存在しませんでした」
まるでリンゴが木から落ちるのは引力があるからですよ、と言うような話しぶりだ。
「あら、ユリアたちは知らなかったの?」
「二つの月は、エイダさまとアモンが作ったのよ!」
リーアとラピアが、ハイ・パラスピリトの知識を共有しているらしく、“常識よ”みたいな調子で言う。
エスピリテラ世界では、二つの月はこの3万年の間に作られたということが“歴史”として認識されているらしい。
「先日、ユリアさんにお話しして、そのあとでほかの方たちにもお話したように、アモンはエスピリテラの占領を狙った戦いを起こしました。
私たちの母親であるエイダさまは、それを防ぐために善霊の軍団を作り、反撃に出たのです。
アモンは押され気味になり、そのときにエイダさまの軍団が簡単に攻略できないベースであるダークムーンを作ったのです。それに対抗してエイダさまもライトムーンを造られたのです」
「そして、“それでも、オリジン・マザーにとっては二人とも我が子だから、今もウォンブ・ホロスで繋がっているというわけですよね?」
「その通りです、リュウ」
「エスピリテラのウエスト・ゾーンをほぼ手中に収めたというわけか...」
「はい。レオさん。ですから、グヮルボたちが大挙してイーストゾーンの西端 『エペロン・テルメン』 にやって来たのも、アモンの悪霊の軍団がさらに力を増して、支配地域を増加させつつあるという証拠だと思います」
「............」
「............」
「............」
「............」
ユリアたちは黙ったままだ。
3万年前にエスピリテラ生命を増やす使命をもたされて、エスピリテラ各地に散っていったハイ・パラスピリトたち。
そエスピリテラに生きるすべてを産み出し、育てて来たハイ・パラスピリトたち。
「ところで、クリスティラさんって、最初からそのヤドラレ人の娘の体をされていたんですか?」
リディアーヌ が誰もが気がつかなかった疑問を口にした。
「オリジン・マザーさまがエスピリテラをお創りになったときは、大地と水と空気しかなかったのです...
そこで私は海を、最初に私がの生命を創る場所として選びました。
エスピリテラ創られたとは言え、当初、陸上には火の山が無数にあり、常に火を噴いていてあたり一帯を焼き娘がし、灰をあらゆるところにまき散らせていました。地震と落雷も今では想像もできないほど大規模なものが絶え間なく起こっていて、五芒星も昔はあらゆる生物を焼き殺すほどの強烈な光を放っていたからです。
そんな過酷な地上に比べ、海の中は水というやさしいヴェールで守られているし、生命を形あるモノ、活動するモノとして作り出すために必要な材料が水の中に豊富にありました。
それらを集めて、試行錯誤しながら... 長い期間をかけて生命を進化させて来たのです。
最初に私が海の中で作り出した生命は、目にも見えない小さな、小さなイキモノでした。
その最初の小さなイキモノを進化させ、五芒星の光を生命活動の原動力とする能力を付けさせました。
五芒星の光をエネルギー源とする小さなイキモノが爆発的に増えるにしたがって、エスピリテラの空気に変化が現れ、今、私たちが呼吸しているような空気になりました。
五芒星の活動も安定期にはいり、放つ光も穏やかなものになったころに、海の中に棲んでいた小さなイキモノたちは、より効率的に、またふんだんに五芒星の光― エネルギー源を受けられる陸上に進出し、そこで適応化しながらさらに増え、進化していったのです。
それらのイキモノたちの中であるグループは花や草木になり、あるグループは虫になり、あるグループは鳥や動物たちになりました。
ですから、ヤドラレ人が生まれたのは... そうですね、今から2千年ほど前のことでしょうか。
ほぼ同じ時期にストリギス種族やダトーゥ種族、ラピテーズ種族、ボルホーン種族などほかのイキモノも生まれているはずです」
「ええっ?じゃあ... このあたりに棲んでいるものはすべてクリスティラさんが作られたというわけですか?」
ミアが目を丸くしてクリスティラを見て、それからビルとラピアとリーアを見た。
「まあ、すべてを私が作ったわけではありませんが、そのような進化をするように道筋をつけました」
「じゃあ... 今、クリスティラさんが浸かっているヤドラレ人の女の子の体は...」
「たしか3百年ほど前にお借りした娘のものです」
「「「「3百年!!!」」」
男の子たちがズッコケた。
“ゲゲっ!オレは3百歳のヤドラレ人のおばあちゃんとヤっちゃたのかよ?”
リュウはサイズが自慢のアレが萎むのを感じた。
“3百歳のヤドラレ娘って、どんなだろう?”
レオはクリスティラの小ぶりだがカッコいい胸を見つめながら思い、
“3百歳って言っても、ミア並みの年にしか見えないな…”
レオタロウはミアとクリスティラを交互に見ていた。
「そ、それにしては、そんなに年を取っているようには見えませんね?」
「わたしはクリスティラさんもラィアちゃんやロリィちゃんくらいの年かと...」
「私もチルリちゃんが借りていたアダくらいの年かなって思っていました」
マユラとミアとリディアーヌたちもかなりおどろいている。
「この娘の体は気に入ったので、ずーっと老化を阻止しながら使って来ていますから、肉体年齢は16歳くらいのはずです」
「道理で!」
(ピチピチでよかったです)のニュアンスをこめてリュウが言う。
「あら、それはうれしいわ!」
即答でクリスティラがにっこり笑って答える。
だが、ユリアはちょっと複雑な表情だ。
「それって... ちょっとパパたちが付けているミトラカルナー山の石で作ったブレスレットの効果に似ているわね...」
アイがクリスティラの顔を見ながらつぶやく。
「ミトラカルナー山の石で作ったブレスレット?」
アイはパパのレオ王の寿命を延ばすために、エルフの“神聖な山”の石で作られたブレスレットのことを話した。
「なんだかとても興味深いお話ね?じゃあ、みなさんのお父さまは、今でも16歳ってことですか?」
「いえいえ、ただ1年の寿命が100倍伸びたというだけで、もう30歳になりますよ」
「それでもあっちの方はまったく衰えてないようだけどね?」
レンがにやりと笑ってアイにウインクする。
(な、なによ、その意味深なウインクは?)
(アイ・サービスだよ!)
(クリスティラさんにしてあげて!)
アイは少々ご立腹気味だ。
しかし、それぞれテントにはいって休む前に、レンはアイを誘って月夜のデートとしゃれこんだ。
川のそばまで仲良く手をとりあって降りて行って、そこでアイをハグして愛情をたっぷりのキスをした。
“やっぱりレンが好き!”
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.........
.........
月夜の河辺で愛し合うレンとアイ。
「レ―――――ンっ!」
アイの声が夜空に響いた。




