23 デシジョン
【Decision 決意】
負傷者の手当て、集落への搬送、戦士した者たちの葬儀の手筈など、すべての作業が終わって、ユリアたちがオーンの御殿に引き上げたのは、すでに夜遅かった。
先に帰っていたケイラ、マーギュ、ピリュラーたちが、御殿に残っていたオーンのほかの妻たちや使用人を総動員して、御殿にある全ての客用の部屋のバスに湯を張り、夕食を作って待っていてくれた。
マザー・パラスピリト、ミモ・パラスピリト、それにユリアたちは、真っ先に血と汗と泥だらけになった服を脱いでお風呂にはいって身体を洗うことにした。
ほかの300人のハイ・パラスピリトたちも、それぞれ集落の中に住む頭たちなどの家に連れて行かれ、やはり頭たちから、族長の御殿で行われているのと同様な手厚いもてなしを受けていた。
「みんな、いっしょにお風呂にはいりましょ!」
ユリアの呼びかけで、女の子たちは
「わーい!」
「はーい!」
「背中流しっこしようね!」
などとはしゃぎ出した。
それを聞いたリュウたち-
「おっ!“今日はお疲れさまでした!”っていうことで、いっしょに入ってくれるんだな?」
「ぐふふふ。アイに背中洗ってもらえるぞ!」
「オレはユリアに背中も前も洗ってもらう!」
「オレは女の子たち全員に洗ってもらう。なんたって、オレがグヮルボのボスを倒した一番の功労者だからな!」
「何言ってんだ、リュウ!ボクたちが援護しなかったら、蜂の巣みたいになってただろうが?」
「何を言うんだ?白龍族は強いんだぞ!」
男の子たちも女の子たちと混浴できると色めきだっている。
「なに、バカなこと言っているの?」
「そうよ!パパが話してくれていた、ニッポンとかいう国の共同風呂じゃないのよ?」
「男の子は男の子同士、前でも背中でもおたがい洗いっこしてなさい!」
「ったく、オトコって、どうしてこんなにエッチなの?!」
女子たち全員んから総スカンを食らった。
「私たちもいっしょでいいですか?」
「ユリアさんの背中洗ってあげたーい!」
「わたしはアイさんを洗ってあげたいわ!」
「私はマユラ!」
「じゃあ、私はモモコちゃん!」
「私はミアだよ!」
マザー・パラスピリトとミモ・パラスピリトたちが、ユリアたちといっしょに入りたがった。
「もちろーん!マザー・パラスピリトさんたちなしでは、今日の勝利はなかったんですから!」
「反対に、わたしたちがマザー・パラスピリトさまたちの体を洗って差し上げますわ!」
「わたしはラィアを洗ってあげるね!」
「じゃあ、私はロリィ!」
女の子たちとハイ・パラスピリトたちは、わいわい騒ぎながら寝室のある二階へ上って行った。
「ちぇー!オレたちは無視かよ?」
「せっかく、ユリアにいいところを見せようと思って命がけでグヮン=グヮジルドを倒したのに!」
「ミアは、ボクに“よくがんばったわね”のチューもくれなかったぜ?」
男の子たちが不満顔で拗ねている。
そのとき、二階から ダッダッダッダッ... と勢いよく階段を降りて来た者たちがいた。
「ワーン、レンさま――!」
「エーン!レオタロウさま――っ!」
「ビエーン… 追い出されました――っ!」
「エーンエーン、リュウさま――!」
「ヒエーン… ユリアさまたちが、今日はもういらないって――!」
メル、フィラ、ベラ、エリのヤドラレ人娘たち四人だった。
泣きじゃくりながら言うのを聞くと、女の子たちはミルリとチルリをふくめ全員、オーンがマザー・パラスピリトたちのために提供したオーン夫婦の広い寝室にいたそうだが-
「私たちは、これからマザーパラピリストさまたちと楽しむから、あなたたちはもう休みなさい」
と追い出されたそうだ。
「そうか... じゃあ、オレたち、今からお風呂はいるんだけど...」
「背中、流してくれるかな?」
「前、洗ってくれるかな?」
「もちろんで――すっ!」
「は――い♪」
「やらせて――っ、やらせて――っ!」
というわけで、三人の男の子たちとヤドラレ娘たちは、キャっキャっ、わいわい騒ぎながら、男たちの部屋で向かった。
もちろん…
背中や前の洗いっこだけで終わるわけなどなかった。
今日の激しい戦いで勝って気分の高揚していた男の子たちは、延々と、夜中までかわいい娘たちと楽しみあったのだった。
さて、マザー・パラスピリトたちと女の子たちの方はどうなったかというと…
こちらも、今日の困難な戦いで勝利したという高揚感から、いつもはおとなしさが目立つマザー・パラスピリトさままでもが、なんだかはしゃいでいる感じだった。
マザー・パラスピリトもミモ・パラスピリトたちも、ミルリやチルリに手伝ってもらって服を脱いで裸になってキャっキャと騒ぎながら広いバスルームにユリアたちとはいり、おたがい液体ソープの塗りたくって泡をたて、おたがいを洗いっこしはじめた。
「マザー・パラスピリトさまって、意外とおっぱい固いんですね!」
「ユリアさん、私のことはクリスティラって呼んでください。おたがいリュウさんを共有した仲ではないですか?」
「ええっ... (滝汗) ま... それはそうですけど」
「私のおっぱいって、まだ身体が少女みたいなままなので少し固いんですよ」
「それって... まだ成長しているってこと?」
そういいながら、ユリアはクリスティラのおっぱいを手のひらで包んでみる。
ユリアのとくらべると、彼女のおっぱいはお椀をふせたようないい形だが、たしかにまだ小ぶりだ。
「ユリアさんのは、うらやましいくらい大きくて柔らかいですね...」
そう言いながら、クリスティラはユリアの泡だらけの豊かなおっぱいをムニュムニュともんでいる。
「あん... あまりもまないでください... ヘンになっちゃいます...」
「私もさっきからヘンな感じしていますけど...」
「クリスティラさま...」
「ユリア...」
いつの間にか、二人はそっと唇をあわせていた。
それを見ていたラィアも、アイをそっと抱き寄せる。
アイも何も言わずに抱き寄せられ、二人もキスをはじめた。
四人のキスが発火点となって、クラナ、ピア、ロリィ、それにチルリとミルリ、ミア、マユラ、モモコ、リディアーヌ たちも、おたがいに抱き合ったり、キスをしたりしはじめた。
モモコとリディアーヌ は、つい先日チルリとミルリに愛されたばかりだが、ユリアもアイもミユも女の子から愛された経験はない。
それを言うなら、 クラナたちミモ・パラスピリトも、女の子どころか男の子とも愛しあったことはない未経験者なのだが。唯一の例外はマザー・パラスピリトであるクリスティラとラィアだけで、この二人はつい先日リュウやレンたちと初めて経験したばかりだった。
マザー・パラスピリトの高揚した気分― 男の子たちと愛し合ったことで“愛”と“愛し合うこと”の幸せさを経験した彼女は、命を失いかねなかった今日の戦いで大量のノルアドレナリンとアドレナリンを放出・消費した反動で、誰かに思いっきり甘えたかったのだ。
誰かに愛してもらって、“よくがんばったわね!”と褒めて欲しかったのだ。
しかし、それを口に出すすべを知らないマザー・パラスピリトは、その場にいる女の子たち全員の脳を“おたがい愛しあいましょう”と操作したのだった。
女の子たちだけの、とろけるような甘い夜は更けていった…
*
翌日、みんなは昼食の時間になってようやく起きてきた。
オーン御殿では、昨日の戦いに参加した近隣のラピテーズ部落長たちや、集落の主だった頭たち、それに集落に宿泊したハイ・パラスピリトたち3百人を招待して勝利記念大宴会が開かれた。
ほどなくして、ストリギダ族のブボ・ケトゥパ族長、ヤドラレ族の大ボスバンゾウ、ダトーゥ族の女族長ギガタンコックなども、主な部下たちを連れてやって来た。
広大なオーン御殿の庭はラピテーズ、ストリギダ、ダトーゥたちであふれんばかりになった。
「出せっ、食いもの、飲み物、酒、あるものはぜんぶ出せー!」
オーンは上機嫌で、ケイラ、マーギュ、ピリュラーたち妻に命じ、食料貯蔵庫から、どんどん燻製の肉や酒樽を持って来させる。
ブボ・ケトゥパやバンゾウ、ギガタンコックたちも、自分たちの森や生息地から、次々とうまい食べ物や酒などを オーンゾリオ集落にどんどん運ばせ、大宴会は集落中に広がって行われ、老いも若きも、パラピストたちもいっしょにハッピーな気持ちで飲んで食べて大勝利を祝った。
マザー・パラスピリトやミモ・パラスピリトたちも、初めて甘いブドウ酒を飲み、あまりの美味しさに飲みすぎて酔っぱらってしまうさまだった。 それを見たラピテーズ、ストリギダ、ダトーゥの族長たちは-
「マザー・パラスピリトさまも、おれたちと同じように酒を飲み、祝ってくださっている!」
とさらにマザーパラピリストたちの株が上がったのだった。
大宴会は夜遅くまで続き、だれもがグデングデンに酔っぱらっていた。
オーン御殿の中庭の宴会場は、オーン族長のVIPのための場所になっていた。
中庭の芝生の上には、すでに酔っぱらって寝てしまっているラピテーズの部落長たちや頭たちがいた。
ユリアやアイに介抱されて上機嫌で酔っぱらっていたクリスティラ。
とつぜん、何を考えたのか、ガーデンの真ん中に置かれた盛り沢山の料理が並べられていた長いテーブルの上にあがった。
上がるときに大きく足をあげたが、今日はお祝いだからか下着をはいてないかったので― バッチリと太腿の奥が見えたが、みんな彼女を大へん尊敬しているので、見ても欲情したりはしない― (リュウたち男の子以外は)。
「みなさん!今日、私は重大な発表をしたいと思いますっ!ヒック」
オーンをはじめ、ブボ・ケトゥパ、バンゾウ、ギガタンコックたちは、“マザー・パラスピリトさま、酔っぱらって何を言い出すのだろう?”といいたげな顔をして酒に酔って真っ赤になった顔で彼女の方を見た。
ユリアたちも、“マザー・パラスピリトさま、何をしでかす気かしら?” と興味津々な顔で見た。
「私は... ヒック! 今まで3万年近く生きて来ましたが... ヒック! 今までの... 私のハイ・パラスピリトとしての人生で... ヒック... ヒック!」
ユリアが冷たい水をコップについで彼女に飲ませる。
「ありがと!ユリアちゃん... ヒック!昨日のグヮルボとの戦いで、痛感したのです... 私はユリアさんたちといっしょに旅に出なければならないということを!」
「「「「「「「「「「「「「「ええええええええええええ――――――っ!?!?」」」」」」」」」」」」」」
全員がひっくり返るほどおどろいた。
「マ... マザー・パラスピリトさま... わ、私たちは、こ、ここに... ラピテーズの皆さんといっしょに暮らせる新しい町を作るのではなかったのですか?」
マザー・パラスピリトの片腕、実質的なナンバー2であるミモ・クラナがどもりながら訊く。
「その約束は果たします!しかし、それを実現するのは... ヒック! 私ではなく、ミモ・クラナさん、あなたが主導して成し遂げるのです!」
「ヒエ―――っ?!」
ミモ・クラナが両足を盛大におっぴろげて卒倒した。
彼女も下着は一切つけてなかったので、太腿の奥がバッチリ見え、ふたたびリュウたちを激しく興奮させた?
チルリとミルリが気絶したクラナを介抱しているのを見て、ナンバー3のミモ・ピアが狼狽気味に訊く。
「マザー・パラスピリトさまは、おひとりでユリアさまたちと旅にでかけられるのですか?」
「いえ... 私ひとりではさびしいので、ミモ・ラィアとミモ・ ロリィを連れて行こうと思っています。この二人は姉妹のように仲がいいので離れ離れにするのは可哀そうですので...」
「マザー・パラスピリトさま、わたしもぜひ、ごいっしょさせてください!」
「わたしもごいっしょしたいです!」
「マザー・パラスピリトさまとお別れするなんてイヤです!エ―――ン...」
「マザー・パラスピリトさま―――っ ワ――――ン...」
ミモ・パラスピリトたちが全員がいっしょに行きたいと泣きはじめた。
「何を聞き分けのないことを言っているのですか?」
マザー・パラスピリトが泣きわめくミモ・パラスピリトたちを叱った。
「あなたたちは、私の娘。いつか私の後を継いで、この|『エペロン・テルメン』《イーストゾーン西端》の地に生きているあらゆる種の繁栄と平和を維持するという重要な使命があることを忘れてはなりません!」
「............」
「............」
「............」
「............」
ミモ・パラスピリトたちは、涙を流しながら黙って聞いている。
ミモ・クラナも気絶から目が覚めて、芝生の上にぺたんと座ったまま、涙のあふれた目でマザー・パラスピリトを見ている。
「私が、長い年月をかけて、あなたたちに教えて来たことは、これなのです。あなたたちは、これからはミモ・クラナをマザー・パラスピリトとして敬い、彼女の指示に従って使命を果たすのです!」
「わ...わたしがマザー・パラスピリト?」
ミモ・クラナが指で自分を指して困惑した顔で訊く。
「これから、まだ伝えてなかった私の能力のすべてを、あなたに伝えます」
マザーパラピリストはそういうと、両手をクラナに向けて伸ばした。
すると芝生の上に座っていたクラナの体が浮き上がり、マザーパラピリストが立っているテーブルの前に来て静止した。
マザーパラピリストはクラナのプラチナブロンドの髪に手をあて、愛おしそうになでる。
「私の最初の娘... クラナ... よくここまで育ってくれましたね... 」
そう言いながら、彼女はクラナのうなじに手をあてた。
柔らかいが力強い白い光がマザーパラピリストの手から出て、クラナの頭全体を包む。
クラナは心地よさそうに目を閉じている。
白い光はひときわ大きく輝いたと思ったら、マザーパラピリストは伝達の儀式を終えていた。
ミモ・クラナがテーブルの前の芝生の上にひざまづく。
「おかあさま... ありがとうございます。このクラナ、妹たちと力をあわせて一生懸命に使命を果たす所存でございます!」
きっとマザーパラピリストを見上げて決意をのべるクラナ。
ふたたびマザーパラピリストが手をのばすと、クラナは浮かび上がってテーブルの上のマザーパラピリストの横に立った。
すると、今度はマザーパラピリストが体を浮かして芝生の上に降り、両手を芝生についてミモ・クラナに向かって頭をさげた。
「マザー・パラスピリトさま、たいへんな使命を受け継がれたとお思いだと存じますが、よろしくお願いいいたします」
それを見ていたラィアたちミモ・パラスピリトも、一斉に芝生にひれ伏し、頭を下げて誓いの言葉を斉唱した。
「「「「「「「「「マザー・パラスピリトさま、われらミモ・パラスピリト、いかなることがあろうと、この命、この身をもって、あなたさまに忠実であることを誓います!」」」」」」」」」」
「ありがとうございます、おかあさま、妹たち。まだ至らぬところの多いわたくしですが、この身を粉にする覚悟で使命を果たして参る所存ですので、よろしくお力添えください」
そういうと、新しいマザー・パラスピリトはテーブルから降り、ひしと“おかあさま”に抱きつき、その二人をミモ・パラスピリトたちが幾重にも輪になって抱いた。
オーン、ブボ・ケトゥパ、バンゾウ、ギガタンコックたち、それにユリアたちも突然のパラスピリトのリーダー交代におどろき、その儀式に感動して茫然として見ていた。
「さーあ、肩の凝る儀式は終わったから、また飲みなおしよっ!」
もうはやマザーパラピリストでなくなったクリスティラが明るく叫ぶ。
「オオオオオオオオ ――――っ!」
「「「「「「「「「「「「「「は――――いっ!」」」」」」」」」」」」」」
オーン族長やボスたちや頭たち威勢よく応え、ミモ・パラスピリトたちも元気よく応えた。
そして宴会は夜が明けるまで続けられたのだった。
*
朝方になり、さすがにみんな疲れ果て、それぞれ部屋にもどって休むことになった。
ユリアも自分たちの部屋にもどり、またシャワーを浴びてからTシャツにパンティ一枚という姿でふかふか絨毯の上に横になり、上からシーツをかぶって眠りにつこうとした。
すると、誰かがドアを静かに開けて入って来たのを感じた。
おそらくチルリかミルリあたりだろうと思っていたら、急にユリアの横にもぐりこんで来て、すべすべした“冷たい足”をくっつけられた。
「ひゃっ?」
おどろいて目を開けると、ユリアの顔の前には、かわいいクリスティラの顔があった。
「え? どうしたの、クリスティラさん?」
「もうマザー・パラスピリトじゃないし、ユリアたちといっしょに旅をするから、これからはいっしょに行動することにしたの!」
「い、いっしょに行動って... あなた... ハダカじゃないの?」
「うふん。昨日のお風呂の続きしましょう!」
「き、昨日の続きって... フギュっ!」
マザー・パラスピリトであることをやめたからなのか、クリスティラは言葉遣いもふつうの女の子みたいだし、なんだかとっても積極的なようだ。
ユリアの返事も待たずにキスをした。
クリスティラはユリアのTシャツとパンティも脱がせると、さっそく胸を揉みはじめた。
「ああ... クリスティラ... ダメよ... そこ...」
「ユリア、私もさわってちょうだい...」
クリスティラの脳操作で、ユリアはもうすっかりその気になってしまっていた。
ユリアも、クリスティラが気持ちよく感じるところをそーっとやさしくなでる。
「ああ... ユリア、いいわ。いいわ!」
「ああ... クリスティラ... ああ!...」
「ユリア... 愛しているわ!大好き...!」
.........
.........
夢中になって愛し合う二人。
エスピリテラの夜は更けていった。




