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エスピリテラ漂流記  作者: 空創士
ブレイブス・チュードレン
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21 タスク&シェア

【Task & Share】


 そのころ、ユリアたちは先日、オートたちと先日、ジャバルド狩りに行った丘陵地帯を走っていた。

天蓋をつけた馬車― オートがマザーパラピリストたちを乗せるために荷馬車を改造させたもの― は、早く走れるように二匹の屈強なラピテーズ戦士によって引かれていた。

 マザー・パラスピリト(母なる寄生霊)とイーリャ、ピア、ラィア、それにユリア、レオタロウ、モモコ、マユラの乗った馬車は、前後周囲を50匹の戦士によって護衛されていた。


 真昼の五芒星(ごぼうせい)が眩しいばかりの六色の光を照らしつける中、マザー・パラスピリト(母なる寄生霊)は横にユリアとアイを座らせて、はじめてゆっくりと彼女たちと話す機会を得ていた。

 六色の光がオーロラのように彩る大空を、雲と見間違えるほどだだっぴろく、半透明の体をゆっくりと波打たせるように動かしながら、悠々と東の空から西の空へと横切っていく超巨大な生き物が見える。

 ホエーラゲ(空クジラ)だ。ユリアたちは最初ホエーラゲを見たとき、そのあまりの大きさにおどろいたものだったが、今はもうそれほどおどろかない。


 しかし、マザー・パラスピリト(母なる寄生霊)たちは、初めて見るらしく、馬車から身を乗り出さんばかりにして興味深そうに見ている。

 ホエーラゲは全長が数キロメートルを超えるものもあるという。

今日のホエーラゲの群れは30体ほどで、中には小さい子どもらしいのもいて、大きいホエーラゲから離れないように一生懸命に泳いでいるのが見える。


 ブォォォオーン……

 ブォォォオーン……


ホエーラゲの重々しい鳴き声が空から響いてくる。

そのホエーラゲの群れにつかず離れずといった距離で空を泳いでいる小さい生き物は、ドルーラゲの群れだ。ドルーラゲは白く細長い体をもっており、巨大なホエーラゲと比べるとまるっきり小さいが、あれでもラピテーズの数倍の大きさがあるそうだ。


「あなたたちが、ミィテラと呼ばれる世界からエスピリティラに来られたということは聞きましたが、どのようにして来られたのかは、まだ聞いていませんでしたね...」

飽きることなく、ホエーラゲの群れを目で追っていたマザー・パラスピリト(母なる寄生霊)が、ユリアとアイの顔を見ながら言った。

ユリアとアイは交互に、彼女たちの生い立ちや、勇者王国の歴史などを話し、「異世界に冒険に行きたい」という勇者の子どもたちの願いを、守護天使シーノが叶えてくれたことを話した。


「そうですか。ティーナさんは守護天使だとは聞きましたが、彼女の生みの親とも言える守護天使がいらっしゃったのですね... 道理で見たことも聞いたこともない能力をもっているはずです」

そしてシーナの“創造主エタナールさまの1京分の1”という、とてつもない超能力で精霊界への入り口を開け、エスピリティラにやって来たと話すと―


「“創造主さま”? 初めて聞くお名前です。元祖母アーヴァ (オリジン・マザー)さまか、エイダ(光の母)さまなら知っているかも知れませんが、世界を創ったお方というのですから、まさに神のような方ですね」

マザー・パラスピリト(母なる寄生霊)は初めて創造主・エタナール様の話に大いに関心をもったようだが、ユリアたちもエタナールさまのことについては詳しくはない。


 そうしているうちに、一行は最初の目的地に到着した。

そこは灌木がまばらに生えているだだっぴろいサバンナ状草原が広がっており、左の方はゆるやかな傾斜があり、下の方に幅の広い川があり、右側にはかなり離れたところに山並みが見えていた。


 そのサバンナ状草原の入口には、数百匹のダトーゥ族が待っていた。

ユリアたちの馬車を見て転がるように走って来たのは、先日、カラパッドに血を吸われて死にそうになっていた“タンク”と愛称をつけたダトーゥ族の少年―ジャタンコック―だった。


「タンク!」

「やあ、タンクじゃないか!」

ユリアやレオタロウたちが声をかける。


「ユリアさン、レオタロウさン、モモコさン、マユラさン!」

「最初に見たときよりも大きくなったようね?」

「うン!あノときはカラパッドに血ヲ吸わレテ衰弱シテいたからネ!」


 ユリアたちは馬車から降りて再会をよろこんでいた。

そこに30匹ほどのダトーゥ族たちがやって来た。

半分はオスで半分はメスだったが、メスもオスに負けないほどの大きさだ。


彼らはマザー・パラスピリトたちを見ると、たちまちガバっと草の上に平伏した。

後方にいたダトーゥ族たちも、それを見ると一斉に草の上に突っ伏した。

ユリアたちに近づいて来たダトーゥ族の中のメスが一匹、顔を伏せたまま話した。


「先日は、息子のジャタンコックを助けていただいてありがとうございます!」

タンク少年の母親と思われるダトーゥ族の大柄なメスがお礼の言葉を言った。

「いえいえ、困っている者がいれば助けるのがふつうです!」

リディアーヌ が恥ずかしそうに目を伏せて答える。


彼女が恥ずかしそうにしているのは、感謝されたからだけではない。

目の前にいるがっしりした体格で全身を分厚い全身を鱗甲板で覆われた30匹のダトーゥ族のオスたちが、いずれも巨大なイチモツをブラ下げているからだった。

レオタロウの方は、ダトーゥ族のメスがヤドラレ人のメスのように魅力的なおっぱいもなく、オシリもガチガチの鱗甲板で覆われているのを見て興をそがれた顔だったが。


「ダトーゥ族の皆さま、マザー・パラスピリトのマモ・クリスティラです。今日はお話があって来たのです。さあ顔を上げてお立ちください」

マザー・パラスピリトの言葉でダトーゥ族たちは恭しくひざまずいた。

そのひざの間で巨大なイチモツがゆれている。

ユリアもモモコもマユラも目のやりどころがない。


「今日は、明日行われるグヮルボたちとの戦いに、ダトーゥ族の戦士の皆さまの協力をお願いに来ました」


 今朝、マザー・パラスピリトは、彼女たちがダトーゥ族と話し合いたいと伝えるためにレンとミアを派遣していたのだった。ダトーゥ族たちは、タンクを助けてくれた者たちの使者と知って、マザー・パラスピリトたちとの話し合いを受け入れたのだった。

なにより、彼らにとって“神に近い存在”であるパラスピリト(寄生霊)の最高ランク者が話し合いたいと言って来ているのだ、断る理由などまったくなかった。


「グヮルボどもには、我々もひどい被害を受けています!マザー・パラスピリトさまのお願い、よろこんで承ります!」

マユラの念話通訳で交渉は問題なく進み、ダトーゥ族は明日の戦いに1万人が参加することを誓った。


 おどろいたことに、ダトーゥ族の族長はタンクの母親だった。

彼女の名前はギガタンコックというそうで、ダトーゥ族社会はメス優位の階級社会だそうだ。

ユリアたちが次の目的地へ向かう準備をしているとタンクがダトーゥ族のことについて話してくれた。


「次の目的地は、ラピテーズに訊いたところ、“急いでも2時間かかります”ということですので、ここは守護天使ティーナさんにお願いして、あのすばらしいティーナ・ロケットで運んでいただこうと思っているのですが?」


マザー・パラスピリトの丁寧なお願いに、それまでユリアが首から下げたペンダントの中でゆっくり休息していたティーナが、たちまち元気いっぱいにペンダントから黄金の光を放って飛び出して来た。


(えーっ、ナニナニ? マモ・クリスティラ? 私寝ていたのでよく聞き取れなかったんだけど、私のすばらしいティーナ・ロケットで運んで欲しいって?)

「はい、その通りですよ。守護天使さま」

(よっしゃー!まかせときっ!)


 たちまち5分もせずに、10人乗りのティーナ・ロケットが作り上げられ、ラピテーズの戦士たちのよって次の目的地の方向へ機首が向けられ発射角度が調整された。

 ラィア以外は、マザー・パラスピリト、イーリャ、ピア、タンクもティーナ・ロケットに乗るのは初めてだ。

タンクは母親にねだって、ユリアたちといっしょに行くことになった。

ラピテーズの戦士たちには、そこから集落に帰ってもらうことにした。


「さあ、みんな着席して!ベルトをしっかり締めて、発射と着陸のときは座席の前にあるバーをしっかり掴むんだよ?」


今日はレオタロウがロケット・ガイドだ。

ティーナ・ロケットは安全が一応保障されているが、万一を考えて、マザー・パラスピリトたちは中ほどの座席から後ろに座ってもらうことにした。


マザー・パラスピリトの横にはティーナ・ロケットの経験者であるラィアが座った。

彼女たちの後には イーリャとピアが座り、最前席にはタンクとレオタロウ、ついでユリアとアイ、その後ろにモモコとマユラが座った。

タンクは子どもだけあって、まるでジェットコースターの最前席に座った子どものように期待でワクワクしていた。

もちろん、エスピリティラにジェットコースターなど存在しないのだが、それに近いモノは存在した。

この時分では、まだそのことをユリアたちは知らないが。


 その一方、マザー・パラスピリトと言えば… 手に汗をかいていた。

彼女はおっとりした性格で、何事にも慎重であるが、()の心の機微をよくとらえることができ、()を敬い、やさしい心で接するマザーパラピリストだった。

しかし、その一方、決断力の鋭さにはハイ・パラスピリトたちからも定評があった。


 グヮルボに襲撃され壊滅的となったグラトニトルの町を放棄し、オートの集落の中に新しい“パラスピリト(寄生霊)とラピテーズの共生社会の町を作ることを決断したのも彼女だった。


 マザー・パラスピリトは新しいことに挑戦する勇気には不足しなかったが、いまだ経験したことのない未知の乗り物― ティーナ・ロケットに乗ることに怖さを感じていた。

 しかし、彼女は次の目的地に、まだ日が明るいうちに到着するために、ティーナ・ロケットで行くことを提案したのは彼女だった。

 ラィアはマザー・パラスピリトが緊張しているのを彼女の表情から見て、彼女の手をにぎり、マザー・パラスピリトが手にびっしょりと汗をかいているのに気づいた。


「マザー・パラスピリト。そう緊張なさらないで。ティーナ・ロケットは、初めての時は少し怖いと感じるかも知れませんが、(リュウと初めて愛し合った時のことを思い出して、同じようにもう一つ新しい経験をするのだと思ってみれたら?... それに、今日、すべての任務とやることが終わったら...)」

ラィアは話の途中で会話を念話に切り替えた。

周りの者に聞かれないためだ。

(“今日、すべての任務とやることが終わったら”なんですか?ミモ・ラィア?)

(リュウにマザー・パラスピリトさまとまた愛してあげてくださいってお願いして快諾していただきました!)

「ええ――っ!」

あまりのおどろきにマザー・パラスピリトは思わず叫んだが、その叫びはドーン!というティーナ・ロケット発射の効果音で消されてしまった。

  

 ティーナ・ロケットは、五芒星(ごぼうせい)がかなり傾きはじめた六色の光彩の空を十数分間ほど弾道飛行してから、周りを深い森に包まれた広い草原に着陸した。


(ミモ・ラィアさん... 私... オシッコもらしたみたいです...)

マザー・パラスピリトが顔を赤くしてボソッと言った。


 ......... 

 ......... 


 オーンゾリオ集落に一行が帰り着いたのは、五芒星(ごぼうせい)が地平線に沈んだ後だった。

オートへの報告をユリアたちにまかせて、マザー・パラスピリトはミモ・ラィアといっしょに、オート族長が提供した彼の豪華な寝室に急いではった。

 ラピアとリーアとメル、フィラ、ベラ、エリと名前をつけてもらったヤドレイ人の少女たちに服を脱がせてもらうとマザーパラピリストはバスルームにはいった。

彼女は1分も早く体を洗いたかったのだ。ラィアも少女たちに手伝ってもらって服を脱いで急いでマザー・パラスピリトの後を追ってバスルームにはいった。


 バスルームには、すでにベラがお湯を満たしつつあり、メルとフィラがシャワーでマザー・パラスピリトの体を洗っているところだった。

 ラィアはいっしょにはいったエリから液体石鹸の泡を体中に塗りたくられていた。

マザー・パラスピリトはすでに泡だらけだが、泡に包まれた形のよいCカップのおっぱいが見える。

 シャワーで泡を洗い流したマザー・パラスピリトは、メルに手伝ってもらってラピテーズ用の深いバスタブにはいる。ラィアもすばやく泡を流すと、マザー・パラスピリトといっしょにバスタブにはいった。


 温かいお湯に浸かっていると、朝からのグヮルボの大群との息をもつかせぬような戦いのあとで、ソーウェッノーズ(霊の浄化)能力を使って墜死させたグヮルボの大群の(コア)の浄化を行い、午後からはゆっくりと昼食をとるヒマもなく、明日の戦いにおける重要な任務を果たすために出かけ、オシッコをもらすような怖いロケット飛行を経験して帰って来たのだ。


 多忙な一日が終わり、役目を果たしたという安堵感がお湯の快適さとあいまって、極楽にいるような気分にいるはずのマザー・パラスピリトだが、頭の中では解放感どころか、ティーナ・ロケットの中でラィアが言ったことばかり考えていた。

 となりで細い両手両足を思いっきり伸ばしてリラックスしているラィアを見て、マザー・パラスピリトはそっと念話で訊いた。


(ミモ・ラィアさん、今日、ティーナ・ロケットで言ってたこと... 本当なんですか?)

(えっ? ティーナ・ロケットで私が言ったこと? ああ、リュウとのメーキングラブのことですね?)

(え? メーキングラブ? 何ですか、それは?)

(ああ、ユリアから教えてもらったんです。交接とか交尾とかは、あまり私たちが使うのにふさわしくないと言って)

(じゃ。じゃあ、そのメーキングラブについてです。私はあの夜、リュウさんと愛し合ったあとで、ユリアさんがリュウのことを“愛している”と知って...)

(リュウから身を引くことにしたということですか?)

(そもそも“愛”と言う感情が、私はよくわからないのですが、どうやら“好きな者といつもいっしょにいたい、そのメーキングラブとかをして結びつきを強くしたい”というような感情のようです)

(あら、じゃあ、マザー・パラスピリトさまは、あの夜、リュウに“リュウが好き... 愛しているわ”って叫んでいたじゃありませんか?)


(えええ―――っ? 私、そんなことを口走っていたのですか?)

ビックリして顔を赤らめるマザー・パラスピリト。

(“愛”を知らないにしては、大声で叫んでいましたけど?)

(そんなことをおっしゃらないで。あのときは、リュウさんのことが好きで愛おしくて、いつまでも抱いていてもらいたいという強い気持ちが自然に出て来たのよ!)

(いつまでもメーキングラブをしていたいという気持ちでしょう?)

(そうとも言えます...)

(マザーパラピリストさま... それが“愛”でなくて何ですか?!)

ラィアから真っすぐに見られて、思わず心がドキッとしたマザーパラピリスト。

(とにかく、リュウはもう準備オーケーと念話で伝えて来ました。あとはマザー・パラスピリトさま次第です!)

そう言うと、ラィアはさっさとバスタブから出て、エリにタオルをかけてもらってプリプリと少女のようなオシリをふりながらバスルームから出て行った。

 

 マザー・パラスピリトは、しばらくお湯に浸かってラィアの言った言葉を考えていたが、気を取り直したように誰かと念話コミュニケーションをしてからバスタブから出て、待っていたメルにタオルで拭いてもらってバスルームから出ると、メルとフィラにユリアから借りたネグリジェを着せてもらった。

 先に出たラィアは、さっさと服を着て寝室を出たらしく、部屋に残ったのはマザー・パラスピリトとメルとフィラだけだった。


 パジャマを着て、ラピテーズ用の大きなドレッサーの前でメルとフィラに手伝ってもらって髪をタオルで乾かし、ヘアブラシをかけ、化粧水を顔や手足につけ終わるのをまっていたかのようにドアがノックされた。


 コンコン!


フィラがドアを開けると、そこにはユリア、アイ、ミア、モモコ、マユラとリディアーヌ がいた。

「マザー・パラスピリトさま、私たちにお話ししたいことがあるとのことですが...」

「みなさん、夕食もまだなのにすみません。どうしてもお話しておきたいことがありまして、みなさんをお呼びしました」


 コンコン!


またドアがノックされた。


開けると、そこには10人のハイ・パラスピリト(最高階級寄生霊)たち全員がいた。

「ハイ・パラスピリトのみんなも関係あることですので、彼女たちにも同席していただくことにしました」

クラナ、ピア、ラィア、ロリィ、イーリャ、フララ、カィア、トリル、ヒュネ、アシュたちも部屋に入り、マザー・パラスピリトに勧められて、全員ビッグサイズベッドのへりに腰かけた。マザー・パラスピリトはベッドボードの真ん中に座る。


「お話というのは、ほかでもありません。レオタロウさん、レオさん、それにリュウさんたちと、ユリアさん、アイさん、ミアさん、それにほかの女子の皆さんと、私たちハイ・パラスピリトの関係のことについてです...」

マザー・パラスピリトは話しはじめた。


 昨夜、マザー・パラスピリト、ラィア、ラピアとリーアたち、それにメル、フィラ、ベラにエリたちヤドレイ人の少女たちが男の子たちに愛されたたことは、女の子たち全員にすでに知れ渡っていた。

ユリアもアイもミアもそのことを知ったとき、おどろきもし、悩みもした。

ほかの女の子たちも、異母姉妹が抱えることになった問題に心を悩ませていた。


しかし、ユリアたちの住む世界- ミィテラの世界における道徳観など、まったく知らないパラスピリト(寄生霊)たちによって行われたということもあり、また、グヮルボたちとの大きな戦いが目前に迫っている中で、仲間の間で不協和音を出すのは良くないと考え、しばらく保留することにしたのだ。


 しかし、先ほどマザー・パラスピリトから念話で《女子の皆さまと男の子たちのことでお話がしたい》と要請があり、こうして寝室にやって来たのだった。

 クラナたちハイ・パラスピリトたちにとっても、マザー・パラスピリトとラィアが男の子たちと“生殖行為”を経験したことは驚きをもって受け取られ、今後、どのような展開になるのかとても気にしていた。


「私は、私たちが宿主として借りているこのヤドラレ人の美女の遺伝子を増やすために、生殖行為をして、オスのタネをもらって妊娠し、子育ての経験をしようと思って、独断でリュウさんたちを誘惑して行為をしたわけですが...」

そこまで言うと、彼女は言葉を切って、ふ~うと大きく息をした。

シースルーのパジャマの下のカッコイイおっぱいが大きく波打つのが見えた。


「リュウさんと愛し合っているうちに、“ずっとこうしていたい”、“リュウさんとずっといっしょにいたい”という不思議な感情が胸に沸いてくるのを感じました。そしてそれが“愛”と、あなたたちが呼んでいる素晴らしい感情だとミモ・ラィアさんに教えてもらってわかったのです...」


リュウと相思相愛の仲であるユリア。そしてレンと恋をしているアイ。それにレオタロウとの愛をはぐくみはじめたミアにとって、それは衝撃的な告白だった。


 「.........」

 「.........」

 「.........」

三人は何も言わずに、マザー・パラスピリトを見ている。


「でも昨夜から、あなたたちの考えや男の子たちとの関係を見ていると、このままではいけないと思ったのです... なぜなら、それは、グヮルボたちが暴力を使ってグラニトルの町を収奪するのと同じ種類の、“決して許されることではないこと”だと気づいたからです...」


ユリアやアイのカレシと寝たのが、はたして残虐なグヮルボの襲撃と比較されるほどヒドイことなのかどうかは、ユリアたちには判断できなかったが、マザー・パラスピリトのもつ価値観の中では同じなのだろう。


「そこで、私はこの問題を深く考えた末に、私たちの町- グラトニトルと同じような解決法を導き出しました」

「「「「「「グラトニトルと同じような解決法???????」」」」」」

ユリアたちが一斉にクエスチョン・マークを頭の上に出す。


「あ、例えようが悪かったかも知れません。ミルリとチルリと同じような解決法、と言った方が分かりやすいでしょう」

「「「「「「共生?」」」」」」


「はい。もっと的確に言えば、“男の子たちを共有”するということです」

「「「「「「共有―――っ!?」」」」」」


「私たちのレベルに見合うオスは、現在のところラピテーズでは体格的にムリがありますし、ヤドレイ人のオスは少々好色すぎるし、知能レベルも低い。そこで知能も高く、私たちに関する関心もほどほどにある... いえ、かなりある、リュウ、レン、レオタロウの三人を、あなたたちと共有したいと思っているのですが...」

そう言って、マザー・パラスピリトは、6人の女の子を見た。


「共有?!」

「レンを?!」

「レオタロウお兄ちゃんを?」

「!」

「!...」

「!」


 ...........................

 ........................... 



重苦しいような数分がすぎた。

マザー・パラスピリトもクラナたちハイ・パラスピリトも、固唾を飲んでユリアたちが何と答えるかまっている。


「いいと思います」

ユリアが口を切った。


「私もかまわないわ!」

アイがはっきりと言った。


「私もレオタロウお兄ちゃんの共有に賛成だよ!」

最後にミアが元気そうに言った。


 だが...


その顔には一抹のさびしさのようなものが一瞬浮かんで消えた。

しかし、姉のアイとラィアはそれを見逃さなかった。


(ミア、あなたが嫌がることは誰もしないわ...)

ラィアが念話でミアにやさしく話しかける。


(ミア... レオタロウをほかの子と共有するのがイヤなら断りなさい。今ならまだ間に合うわ!)

姉のアイも念話で心配して訊く。


(.........)

ミアはしばらく無言だった。



 レオタロウとミアは4つ年の差があった。

そのため、最初はレオタロウお兄ちゃんを()()()()()()として見ていた。

だが、大きくなるにつれ、ひょうきんで明るく、いつもモモコ(ねえ)さまに叱られてばかりいるレオタロウお兄ちゃんが好きになっていった。


レオタロウお兄ちゃんは、そのひょうきんさと明るさからか、結構女の子たちからモテた。

だが、レオタロウ自身はそれに気づかないという、かなり鈍感なところもあった。

女の子たちがレオタロウに対してもつ好意には気づず、告白されると驚き、うろたえて、どうしていいかわからず、いつもチャンスを逃してしまうドジなレオタロウだった。


 少し鈍感なレオタロウお兄ちゃん

 モモコお(ねえ)さまに、いつも叱られてばかりいるレオタロウお兄ちゃん

 そして女の子に告白されると、うろたえて途方にくれるレオタロウお兄ちゃん

 だけど、勇気と力では誰にも負けないレオタロウお兄ちゃん


 そんなレオタロウお兄ちゃんがミアは好きだった。

“レオタロウお兄ちゃんは誰にも渡さないわ!私が大きくなったら、レオタロウお兄ちゃんのおヨメさんになるの!”

いつか、そんな気持ちが心の中に芽生えていた。

 それが、エスピリティラの世界にやって来て、レオタロウが戦いでカッコイイところを見せ、ヤドラレ人の娘たちからも惚れられるのを見ると、ミアのレオタロウに対する感情も急速に進化し、レオタロウお兄ちゃんに熱い恋をするようになってしまったのだ。 


 そして、姉であるアイの後押しもあって、念願だったレオタロウお兄ちゃんと“恋人同士”になったばかりなのだ。

レオタロウお兄ちゃんが、()()()()()()()()()()()()()反動から、ラィアやヤドレイ人の娘たちにモテて有頂天になったというのは理解できる。いや、理解しようとしていると言った方が正しいだろう。

 ミアはオスという生物の本能- 自分のタネ(遺伝子)を、出来るだけ多くのメスを(はら)ませることによって増やす- というものについて知らな過ぎた。

 男の子たちを“共有”するということについて、ユリアと姉のアイはオーケーの回答をすぐに出した。

やはり、ミアより年をとっているし、さまざまなことを考えた上で出した結論なのだろう。


(アイお姉さま。アイお姉さまは、愛するレンさんを“共有”するということを心から納得しているの?)

(ミア... これは納得とかの心のレベルの問題ではなく、私たちがこれからこのエスピリティラで冒険の旅を続けていくために必要なプロセスの一つだと思うの...)

(“冒険の旅を続けていくために必要なプロセスの一つ”って?)

(私もユリアも、マザー・パラスピリトさまやミモ・パラスピリトのみなさんが、これからの冒険にとってたいへん重要な役割を果たすと信じているの)

(マザー・パラスピリトさまたちが、重要な役割を?)

(そう。マザー・パラスピリトさまは、今日のグヮルボとの戦いの後で、任務のために目的地へ向かう道筋で色々なことを話してくれたのよ...)


 そう言って、マザー・パラスピリトが、エスピリティラの重要な歴史について語ってくれたっことを話した。

そして、マザー・パラスピリトは、「私はたぶん、グヮルボとの戦いが終わったら、あなたたちといっしょに“使命を果たす”ために旅に出ることになるでしょう」と伝えたことをミアに告げた。


(ええっ? マザー・パラスピリトさまが、私たちといっしょに旅に?)

(ええ。私もアイもとても驚いたわ)

(でも、マザー・パラスピリトさまは、ここ、 オーンゾリオ集落に新しいパラスピリトの町を作るのじゃなかったの?)

(さあ... 作るのは確かでしょうけど、その問題をどうするのかまでは聞けなかったわ)

きっとほかに考えがあるのでしょう、とアイは言った。


だから、マザー・パラスピリトたちと良好な関係を保ちつつ、冒険の旅を続けていくためには、マザー・パラスピリトからエスピリティラの世界に関する様々なことを多く教えてもらわなければならないけど、教えてもらうだけという一方通行ではダメだとユリアと話し、ユリアも同意見だと答えたとミアに言った。


(その双方通行が男の子たちの共有ってことね...)

(そう... あなたももう理解できていると思うけど、ミィテラの道徳観念とエスピリティラの道徳観念はかなり違うということを、私たちはもっとよく理解しなければならないわ...)

(よくわかったわ... ありがとう、お姉さま)


ミアの方を少し心配そうな顔で見ていたラィア。

「だいじょうぶよ、ラィアさん。私はだいじょうぶ!」


明るい声でミアは答えた。



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