18 マイグレーション
翌日―
早朝から『移動大作戦』がはじまった。
グラトニトルの町から、生存者であるパラスピリトたちをオーンゾリオ集落へ移動させる作戦だ。
マザー・パラスピリトのマモ・クリスティラは、グラニトルの将来を考えて、町を再建することを断念したのだ。
外敵の侵入を防ぐシステムを構築し、パラスピリトたちだけの“楽園”を享受していたパラピリストたちは、寝耳に水とも言えるグヮルボの大軍の襲撃を受けた。
グラニトルの町は多大な被害を受け、住民の三分の一という多くのパラピストが犠牲になった。
最初、マザーパラピリストは町の再建を考えたが、ユリアたちと会い、彼女たちがラピテーズ族、ストリギダ族、ヤドラレ人族などと力を合わせてグヮルボと戦おうとしていることを知り、これまでのようにパラスピリト族だけで独自にほかの種族と関わりなく生きていくことは出来ないと痛感した。
そしてグヮルボとの戦いの場所がダーマガの平原であることを知らされ、パラピリストたちも戦いに参加するためにラピテーズ族の集落に集結させることにしたのだ。
また、マモ・クリスティラは、チルリとミルリがラピテーズのラピアとリア―と共生していることを知り、“共存”こそがパラスピリトの生き残る道だと考え、距離的に近く、インフラもかなり整っているオーゾンリオ集落でラピテーズ族たちと共存することを決意した。
ミモ・パラスピリトたちもマモ・クリスティラの考えに同意し、その夜のうちにミモ・ラィアはオーン族長と集落の主だった頭たち ― ゴレン、ゴート、ギート、ジート、ヌート、ブートなど― と交渉し、ミモ・ラィアは見事に大任を果たし、ピテーズ族たちから“オーンゾリオ集落にパラスピリトの町を建設する”許可を得たのだった。
マザーパラピリストがミモ・ラィアに託した提案は、オーゾンリオ集落に隣接した場所にパラスピリトのための区画を建設し、その外側に防護壁を作り、すでにあるオーゾンリオ集落の周囲にある防護壁と連結するというものだった。パラスピリトの住む区画が完成するまで、約1万のパラスピリトはオーンゾリオ集落に“お世話になる”ことになる。
もちろん、1万ものパラスピリトは霞を食って生きているわけではない。
寄生しているヤドラレ人たちは、日々、三度の食事を必要とするし、排泄だってする。
グラトニトルの倉庫に保管されていた食料などのほとんどはグヮルボたちに喰われ、無事残った食料は一ヶ月分ほどしかないため、それらをオーンゾリオ集落に輸送し、グヮルボとの戦いが終わったあとで、パラスピリトの居住区域の建設と同時に、食料の生産にも取り組むことが不可欠になる。
ユリアたちは、グラトニトルの町からのパラスピリト移動大作戦の第一陣に、護衛として参加した。
オーンゾリオ集落からグラトニトルまでは、往復で4時間かかる。パラピリストの寄生したヤドリレイ人を一挙に1万人も移動させるのは、グヮルボに発見され襲撃されるリスクがある。
それを守るために必要な戦士もかなりの数になるため、輸送には3千匹のラピテーズと2千匹の護衛ラピテーズがつく大輸送部隊でもって約3千人のヤドリレイ人を護衛し3往復することになった。
第一陣にはオーンも数人の頭たちを連れて参加した。
マザー・パラスピリトを迎えるというので、自ら護衛に参加し、敬意を示すことにしたのだ。
彼はすでに族長として、集落のラピテーズたちにパラスピリトたちを手厚くもてなし、賓客として必要な期間家に住まわせるように命令を出していた。
それというのも、昨夜、ミモ・ラィアがオーンたちと交渉し、パラスピリトの居住区域を集落の中に作ることを承認してもらい、また居住区域が完成するまでの間、グラニトルのパラスピリトたちをオーンゾリオ集落に住ませてもらうことに対して、マザー・パラスピリトはミモ・ラィアを通して、丁寧にオーンたちに感謝の心を伝えたからだ。
もともと、ラピテーズたちは、パラスピリトに対して畏敬の念を抱いていた。
それはラピテーズに限ったことではなく、ストリギダ族も同じであり、仲間の多くがパラスピリトに寄生されているヤドラレ人も同じだった。
パラスピリトは、彼らには想像もできない高度な文化をもち、平和的で羨むような生活を送っている。ヤドラレ人が、彼らの仲間の多くを宿主にしていることに対して反感をもたないのは、寄生された仲間が大事にされ、幸せな生活を送っているということを知っているからだった。
グラニトルの町に着くまでの間に、輸送部隊はグヮルボの偵察隊を3度ほど発見したが、いずれもミアが警報を鳴らすと同時にミモ・ラィアがグヮルボたちの脳を操作して全速急降下させ地上に追突させ始末てしまった。
いずれの偵察隊も5匹から7匹だったが、ミモ・ラィアの力にオーンたちはあらためてパラスピリトの能力のすごさにおどろいた。
興味深いことに、ラィアは墜死させたグヮルボたちの近くに行くと、両手を死骸の方に向けて何やら詠唱らしきものを唱えはじめた。するとラィアの両手から暖かそうなオレンジ色かかったぼや~とした光が出て、グヮルボたちの死骸を覆いはじめた...
見ていると、グヮルボたちの死骸から線香花火のような小さな赤い光が舞い上がり、草原や森の方に消えて行った。
オーンたちが唖然として見ていると、ラィアはみんなの方をふり返って言った。
「これは、死んだグヮルボたちの霊をソーウェッノーズしたのです...」
「「「「「「「ソーウェッノーズ?」」」」」」」
「はい。エスピリティラに生きるものすべてには霊と呼ばれる“コア”があります...」
そしてラィアは、エスピリティラの世界の根幹のことについて、「わたしがマザー・パラスピリトさまから教えていただいた限りでは...」と説明しはじめた。
最初の精霊、イヴンとアーヴァが “生まれ出でよ!”と念じて創られたた星― エスピリティラ。
アーヴァは、元祖母とパラスピリトたちに呼ばれており、この元祖母・アーヴァは、まだ時間という概念が生まれていなかったエスピリティラで、悠長な時間の中で無数の霊を産み出し、それらがすべての生けるものの霊となったということを。
イヴンとアーヴァは自分たちの後継者として、娘のエイダと息子のアモンの二人の子どもをも産み出したが、アーヴァに対する嫉妬から、アモンは元祖父を殺してしまった。
以来、アーヴァはエスピリティラの地底深くにかくれてしまい、アモンは闇の勢力を作り上げ、ダークムーンを創り、本拠とし、そこからエスピリティラを征服すべく悪霊集団を続々と送りこみはじめたのだ。
アモンの姉妹であるエイダはライトムーンを創り、これに対抗した戦いが数百年の長きに渡って続いているのだそうだ。
「マザー・パラスピリトは、エイダさまに一度だけお招きを受けたことがあるそうです。
そのときに、“いかなる悪霊であっても、そのルーツは善なのです。ですから、どのようなことがあろうとも、決して霊を消さないでください” とお願いされ、そのときにソーウェッノーズの術を授けられたそうです...」
「だから、いくらグヮルボと言えようとも、その魂を肉体の崩壊とともに消えさせてはならないのです!」
そう言って、グヮルボのコアが飛んで行った草原や森の方向を優しい目で見た。
「ソーウェッノーズによって、草花や虫に生まれるとしても、今度はふつうに善霊として生きていくことになるのです」
オーンたちも知らないことであったが、ユリアたちもエスピリティラにおけるミモ・パラスピリトたちの存在の重要性にあらためて刮目するのだった。
グラニトルの町の入口で輸送部隊を迎えたのは、復興責任者となったゼナノンだった。
彼は数十人のダトーゥ族衛兵といっしょだったが、輸送部隊が近づき、その先頭の荷馬車にユリアたちを見て両手をふってよろこんだ。
町の門だったところ ― 先日のグヮルボたちの攻撃で無残に破壊されてしまっていた― をくぐると、そこにある広場はヤドリレイ人で埋め尽くされていた。第一陣が運ぶパラスピリトたちだ。
「おお、これはミィテラの勇者の皆さま、ようこそお戻りになりました!」
「ゼナノンさん、こちらがラピテーズ族のオーン族長と、主だった頭であるゴレンさん、ゴートさん、ギートさん、ジートさん、ヌートさん、ブートさんです」
「族長のオーンです」
「ゴレンだ。よしなに」
「ゴートです。はじめまして」
「ギートだ」
「俺はジート」
「ヌートです」
「ブートです!」
頭たちも、それぞれ自分の名前を言う。
「さあ、マザー・パラスピリトさまとミモ・パラスピリトさまたちがお待ちです。頭の方たちは、こちらへどうぞ!」
ゼナノンはそう言うと、そばにいたヤドリレイ人に町民たちを輸送の馬車に乗りこませるように衛兵たちに指示した。
オーンも頭たちに町民を乗せる手伝いをするように指示し、ゼナノンについて広場を出たところにある、ちょっと大きい建物にはいった。
ほかの建物がすべてそうであるように、その建物も総ガラス作りだ。壁には大きなヒビがいくつもはいっていて、天井のガラス板はもとあった天井は壊されて、どこからか間に合わせのガラス板をもって来て置いたようで、端から空が見え、五芒星の朝の光が差し込んでいた。
建物の奥には、マザー・パラスピリトが、ミモ・パラスピリトたちといた。
マザー・パラスピリトは、先日、ユリアたちが初めて会ったときと同じ、腰まである見事なブロンドの髪と蒼い目でオーンたちを見ていた。
シルクのような光沢のある白く薄い半透明な衣装を通して― 形のいいおっぱいや、髪の毛と同じブロンドの下のヘアがはっきりと見えていた― が、パラスピリトには男性を魅惑するとか、色気とかはまったく考えてもないし、意味もないのだろう。
ミモ・パラスピリトたちも、それぞれ、見事なおっぱいや豊かなおっぱいを見せ、やはりそれぞれ黒っぽかったり、赤毛だったり、ブラウンだったりのヘアをごく薄のキトンの生地越しに見せていた。
前回は来なかったレンとレオタロウが、食い入るように“オトコの目”で、オーンやユリアたちの後からミモ・パラスピリトたちの美しい身体を見ていた?
「オーン族長さま、今回は私たちパラスピリトのために、お骨折りいただき、心よりお礼を申し上げます。また、オーンゾリオ集落の中に、パラスピリトの新しい町を作ることをご承諾いただき、厚くお礼を申し上げます」
男子どもの視線にはまったく関心がないのか、マザー・パラスピリトは、いつも通りのおだやかな声でオーンたちにお礼を述べた。
そして…
なんということか、マザー・パラスピリトは、ガラスの床にひざまずき、頭を床にすりつけんばかりにして最大の謝意を示したのだ。
これにはミモ・パラスピリトも驚愕した。
しかし、彼女たちにもマザー・パラスピリトの気持ちはよくわかった。
ミモ・パラピリストたちも、すぐぎさま床にひれ伏し、マザー・パラスピリトより、さらに頭を下げ、両手を伸ばして最大限の礼をしたのだった。
「そ、そんな... 滅相もありません!このような儂に頭を下げないでくださいっ!」
そう言うとオーンはガバっと床に突っ伏してしまった。
後ろにいたユリアたちも茫然としてしまった。
が、彼女たちといっしょに来たミモ・ラィアも平伏してオーンたちに礼を示していた。
ユリアはアイといっしょにマザー・パラスピリトにひざまづいて近寄り、床の上に伸ばしているマザー・パラスピリトの白い手をとり、立ち上がるようにお願いした。
「マザー・パラスピリトさま、ラピテーズたちには、十分にあなたの感謝の気持ちが伝わっています。さあ、お立ちください!」
モモコ、マユラ、アイたちもミモ・パラスピリトたちのそばに寄り、手をとって立ち上がらせる。
1時間後、第一陣を乗せた輸送部隊はゼナノンたちを残してグラニトルの町を出発した。
ゼナノンは第二陣、第三陣の準備をしなければならないし、グラニトルの町でまだやらなければならないことが山積している。
輸送部隊は先頭を50匹ほどのラピテーズ族の戦士が守り、隊列にそって戦士たちが脇を固める恰好で護衛しながら進んでいた。
先頭から少し中央よりに、マザー・パラスピリトたちを乗せた荷馬車が数十台続いていた。彼女たちの荷馬車には、日よけのための幌が張ってあった。少しでも暑い日にさらさないようにというオーンたちの配慮だった。
荷馬車の数が圧倒的に不足しているため、荷馬車にはミモ・パラスピリトたちのほかは、ユリアたちや体の調子のよくないヤドリレイ人たちが乗っているだけで、あとはラピテーズの背につけられた鞍や座布団状のものの上に二人、あるいは三人乗って移動していた。
「マザー・パラスピリトさま...」
マザー・パラスピリトたちと同じ荷馬車に乗っているユリアが、後ろに座っているマザー・パラスピリトをふり返って見て話しかけた。
「あの... これは文化の違いもあると思うのですが... マモ・クリスティラさまはじめ、ミモ・パラスピリトのみなさまは、とても美しい身体をお持ちですが...」
「オスを刺激しないような衣装を着た方がいいと言いたいのでしょう、ユリアさん?」
「えっ?ええ、そうです」
「ユリアさんは、やさしいし、よく気がつきますのね?」
「そうですか?ふつうだと思うのですけど...」
「いいのですよ。このままで。先ほど、レンさんやレンタロウさんという元気な男の子たちは、私たちの身体を見て、さらに元気になったようですけど、私はまったくかまいませんわ」
「えっ、まったく構わない?」
「ええ。私たちを暴力で押さえつけて生殖行為をしようなどと考えてないのなら、いくら私たちの胸や下のヘアを見て興奮しても一向にかまいませんわ...」
「!...」
“パラスピリトといっても、宿主はふつうの若いヤドラレ人の娘の身体に寄生しているだから、ヤドラレ人の種族としての男から愛されたい、愛したいというリピドーもそれ相当にあるはずだけど... ミモ・パラスピリトくらいのレベルになれば、リピドーをセーブでもしているのかしら?”
「その通りです、ユリアさん。あなたの考え通り、私たちはヤドラレ人の若い娘に寄生しており、やはり周期的に種の保存本能で交尾をしたくなる時期が来ますが、それを私たちは強い力い自制力で制御しているのです」
「パラスピリトって、心も読めるのですね?」
「守護天使さんほどではありませんけど、自分を信頼してくれている相手の心は読めます」
「だから、先ほどレンやレオタロウが興奮していたのも気づかれたのですね?」
「ふふふ... あの男の子たちって、リピドーの塊みたいな生き物ですから、別にミモ・パラスピリトでなくても気づきますよ」
そう言って、マモ・クリスティラは意味深な目でユリアとアイを見た。
二人とも、マザー・パラスピリトが、ユリアとリュウ、アイとレンの関係を知っていると感じて真っ赤になってしまった。
「でも、 オーンゾリオ集落で、ラピテーズの皆さんといっしょに暮らすようになったら、こういった姿は避けた方がいいでしょうね。ラピテーズのオスたちのリピドーはすさまじいものだそうですから、彼らに馬乗りされて種付けされてはかないませんから...」
「「ええーっ?!」」
ユリアとアイがおどろいて声を上げ、おたがいを見合った。
「それと、せっかくのこの美しい体、このままオバアちゃんにするのも惜しいので、さらに美女の遺伝子を増やすために、イケメンでも見つけて子どもでも産んで育てようと思っています」
「「ええ――っ? 子ども――っ?!」」
ユリアとアイがズッコけ、
((((((((((マザー・パラスピリトさまが子どもを産む―――っ?!))))))))))
ミモ・パラスピリトも全員ズッコケた。
「何をおどろいているのですか?ミモ・パラスピリトであるあなたたちも、それぞれイケメンを見つけて子どもを産むのですよ?これはマザー・パラスピリトとしての私の命令です!)
((((((((((ええええええええええ―――っ?!))))))))))
ミモ・パラスピリトたちが全員荷馬車の上で両足をあげてひっくり返った。
だが、残念なことに、彼女たちのシークレットゾーンをしっかりと見たのは五芒星だけだった。
“え―――っ、どうしよう、どうしよう? マザー・パラスピリトさまは、あんなお命令を出されたけど、それなら早くイケメンを見つけないと…”
マザー・パラスピリトの乗った荷馬車のすぐあとを走る荷馬車の中で、ミモ・ラィアは早くも身近にいるイケメンを物色しはじめていた。
「ねえ、ねえ、ラィア、どうするの?マザー・パラスピリトさまは、イケメンを見つけて子どもを作りなさいってお命じなされたけど、あなた誰かイケメン知らない?」
ラィアと歳が近く、仲のいいパープル色の髪と目をもつミモ・ロリィが、隣りに座っているラィアの脇腹を肘でつつきながら訊く。
((((((((じ――っ...))))))))
ほかのミモ・パラスピリトたちが、ラィアの答えを注意深く聞いているのを感じる。
「そ、そうねぇ... ヤドラレ人の森にたしかイケメンの男の子がいたってユリアたちが言っていたわよ?」
「ヤドラレ人の森?」
((((((((ヤドラレ人の森?))))))))
「それとか、今日、来ていたオーン族長とか、ゴレン、ゴート、ギート、ジート、ヌート、ブートなんていうラピテーズ族の頭たちもいいんじゃない?」
「オーン族長に頭たち?」
((((((((オーン族長に頭たち?))))))))
「ラピテーズ族のオスって、リピドーかなり強いらしいし、アレがたくましいらしいわよ?」
「アレがたくましいって、どれくらいの大きさなの?」
「長さが50センチから70センチはあるって聞いたから...」
「ええっ? 50センチから70センチぃ?!」
((((((((50センチから70センチぃ?!))))))))
「ロリィでも十分に満足できる大きさじゃない?」
「こ、こらぁ、ラィア!私はラピテーズ族のメスじゃないんだよ? そんなのに入れたら...」
((((((((そんなの入れたら?))))))))
「気持ち... いいのかしら?」
((((((((ドテ――っ!))))))))
ふたたび、ミモ・パラスピリトたちが、両足を天に向けて広げてひっくり返った。
残念なことに、今回も彼女たちの未踏のシークレットゾーンをしっかりと見たのは五芒星だけだった。
懸念したグヮルボの襲撃もなく、『移動大作戦』はその日の夜に無事終了した。
マザー・パラスピリトは、当然、オーン御殿に宿泊することになり、御殿ではオーンの第一妻であるケイラはじめ、イクシー、マーギュ、ピリュラーなどの妻や使用人を総動員してマザー・パラスピリトの歓迎レセプションが行われた。
少女A~Fはケイラの命令で、マザー・パラスピリトの世話に専念することになった。
ミモ・ラィアはラッキーにも、マザー・パラスピリトの付き人のような形でオーン御殿に残ることになり、ほかのミモ・パラスピリトたちは、それぞれ有力な頭たちの家に宿泊することになったが、頭たちの家でもひっくり返ったような大騒ぎの中、ミモ・パラスピリトたちを大喜びで受け入れたのだった。
その夜、オーンたちがミモ・パラスピリトを歓迎するために開いた豪華な晩餐会も終わり、マザー・パラスピリトもオーンが提供した彼らの寝室― マザーパラピリストは辞退したのだが、オーンは頑として後に引かなかった― に引き上げた。
しばらくして、ミモ・ラィアから、リュウ、レン、レオタロウたち三人の男子に念話で連絡があり、マザー・パラスピリトが部屋に呼んでいるという。
三人ともすでにお風呂にはいってサッパリして、ブリーフにTシャツ姿で冷たいフルーツジュースなどを飲みながら、明日の戦いのことなどを話していたのだが、マザー・パラスピリトのお呼びとあっては行かないわけにはいかない。
コンコン!
最年長のレンが高さ3メートルもある豪華な両開きのドアをたたく。
「はい。どうぞ!」
中からミモ・ラィアの声が聞こえる。
「失礼しますっ!」
「こんばんわーすっ!」
「おばんでーす!」
三人各様の挨拶で寝室に入ろうとしたが…
最初のレンが急に立ち止まったので、
ドン!
ドン!
とレンの背中にレオタロウがぶっつかり、
レオタロウの背中にリュウがぶっつかった。
「おい!レン、急に止まるな!」
「イテっ!ボクの自慢の鼻がつぶれた!」
レオタロウとリュウがレンに文句を言いながら、寝室の中を見て目を丸くした。
彼らが目を丸くしたのは、天蓋付きの立派なオーンの巨大寝台を見たからでも、この寝室の真の持ち主の趣味を少々疑いたくなるような装飾品の数々でもなく、壁一面に飾られたジャバルドの長い牙やダーマガの曲がりくねったツノでもなかった。
それは、ふっくらした新品の― オーンが特注した― おおきくフカフカした枕に上半身を預け、白い足を片膝だけ立てて真新しいシーツが敷かれた寝台の上で伸ばして魅惑的な碧い目で彼らを見ている、一糸纏わぬ美しいブロンドの女性― マザー・パラスピリトを見たからだった。
「マザー・パラスピリトさま?」
「マ... マザー?...」
「こ、これは一体...?」
そして、美しいヌードを披露しているマザー・パラスピリトの右隣には、これもヌードでベッドボードに背をもたれかせ、両ひざを立てて両腕で抱え込んだ姿― 俗に体育座りと〇〇人が呼ぶ恰好― で、同じく美しい体をさらしているブラウンの髪の美少女―ミモ・ラィアがいた。
ミモ・ラィアの下にはヘアがないので、ミステリーゾーンの詳細が丸見えだ。
さらに巨大な寝台の両端には、これもヌードのチルリとミルリが、ラピアとリーアとの共生の印でもあるピンクの毛と緑色の毛が先についているシッポをベッドの上に所在なげに垂らして立っていた。
そして巨大ベッドの両横の床には、少女Aから少女Fが、それぞれ二人ずつ― 彼女たちもヤドラレ人の森にいたころの姿のまま― 素っ裸で横座りでフカフカ絨毯の上に座っていた。
「いえ、これから私たちパラスピリトは、ラピテーズ族やストリギダ族、ヤドラレ人たちと仲良く共同して生きて行かなければなりません。そこで、これまでのように、好き勝手に宿主を探して寄生し、宿主が老いたら新しいのと取り換えるというのも徐々にやめていこうと思っています。
それで、今後はヤドリレイ人も一般の生物がそうであるように、子どもを産んで育てて行こうと決意しましたが… それには、やはりパラスピリトの最高権威者である私が、率先してお手本を示し、体験をすることが重要だとの結論に達しました...」
レンたちは固唾を飲んでマザー・パラスピリトの話を聞いている。
「そして、その結論を知ったミモ・ラィアが、『是非、私も体験をさせてください!』と願い、ミルリとチルリも同じ希望をもっていることを私に申しました。ならばと思い、今後私たちの世話をすることになる少女A、少女B、少女C、少女D、少女E、それに少女Fにも体験をさせることにしたのです」
「あ... あの... 体験って?」
「オ、オレたちに子どもを産めってことですか?」
「ボ、ボクたち男なんですけど?」
「おほほ。それは面白そうな考えですけど、そうではありませんよ...」
「「「?」」」
「あなたたち三人の男の子が、したくてたまらないコトを、私たちに体験させてほしいと言っているのですよ!」




