16 グラトニトル
翌日の朝、五芒星 がいつものように、六色の光を放ちながら地平線から昇ってしばらくたったころだった。
「警報が鳴っているわ!」
「仲間たちの悲鳴や恐怖の声が聞こえるわっ!」
「助けてーって叫んでいるわ!」
「大勢の仲間が悲鳴をあげて逃げ回っている!」
チルリとミルリが真っ青な顔になって大声で騒ぎ出した。
「えっ、どうしたの、チルリ?」
「なんの警報だよ?」
「悲鳴や恐怖って...」
「パラスピリトが誰かに襲われているの?」
ユリアたちがおどろく。
彼らはラピテーズたちがダーマガの原と呼んでいる平原にいた。
昨夜の作戦会議の結果、ストリギダ族の申し出を受け入れて、グヮルボとの決戦はレムザー湿原周辺の森ではなく、森から30キロメートルほど離れたところにあるダーマガ平原ですることが決定された。
その理由は、アイの超絶魔法にあった。
ストリギダ族は、アイの雷禍魔法や氷結魔法が森林が跡形もなくなくなってしまうほどの破壊力を持っていると聞いて、グヮルボから奪還後に自分たちの棲むことになるレムザー湿原周囲の森での戦いを避けるように申し出たのだ。
そして、グヮルボとの戦いに備えて、レンは森から切り出した丸太の先端を削って尖らせ、ダーマガ平原にずらーっと西部劇に出てくる騎兵隊の砦の柵のように立てる作業をしていた。
ユリアたち、それにラピテーズ族、ストリギダ族、ヤドラレ人たちも大勢来てその手伝いをしていた。
もちろん、グヮルボたちは偵察隊を送りこんで来たが、ミアが常時上空で警戒していて、グヮルボを発見するとすぐにユリアたちに連絡し、ダーマガ平原に近づく前にすべて撃ち落とした。
偵察に出したグヮルボで撃ち落とされた数が2百匹になったころ、さしものグヮルボたちも怖気づいて、もっとも近くても10ロメートルほど先から偵察するだけになってしまった。
ダーマガ平原近郊の図
チルリとミルリの急報を受けたユリアたちは、アイとミアとレオタロウを警備に残して、急いでパラスピリトのグラニトルへ向かうことにした。いっしょに行くのは、パラピリストであるチルリとミルリ、それにリュウ、モモコ、マユラ、リディアーヌの6人だ。
もちろん歩いて行っては間に合わないのでティーナ・ロケットで行く。
ティーナ・ロケットはみんなの提案をいれて改良され、キャノピーが付けられたので、以前のように乗っている者が凄まじい風圧にさらされることはない。
(ねえ、リディアーヌ、わたしのこと怒ってない?)
チルリが念話で恐るおそる亜麻色の髪の美少女に訊く。
昨夜、彼女と姉のミルリがしたことを訊いているのだ。
(そ... それは... あんなコトをされるのは初めてだったし... おどろきました... けど...)
(けど?)
(いやっ!恥ずかしいわ!それ以上聞かないでっ!)
(気持ちよかったの?)
(...... 知りませんっ!)
リディアーヌは真っ赤になってしまった。
他人の思考や感情の波長を感じ取ることができるパラスピリトであるチルリは、リディアーヌの思考が肯定的であることを感じ取っていた。
つまり、表面上は恥ずかしがってイヤがっていたが、内心ではチルリにされたことをよろこんでいたということを。
パラスピリトは、他人の思考や感情を読み取る能力のほかに、他人の脳を支配できる能力も持っている。相手がこちらを警戒しているときは難しいが、気を許しているときは簡単に支配できる。
昨夜、チルリとミルリは、その能力を使ってモモコとリディアーヌと交歓したのだった。
(モモコー!)
(何よ、ミルリ?)
ミルリも朝から口も利いてくれないモモコに話しかける。
(昨日の夜のこと、怒っているの?)
(そりゃ怒るでしょ?私の体の自由をうばって好き放題なことをするなんて!)
(そんなに怒らないで... 私、モモコ好き...)
(え――っ、やめてよ!キモいわっ!)
(だって、きれいだし、力持ちだし、おっぱい大きくてきれいだし、ツノもチャーミングだし...)
ミルリはモモコをベタボメしながら、巧妙にモモコの脳の報酬系に働きかけ、ドパーミンを大量に放出させる。
そんな操作をされているとは、まったく気づかないモモコは、知らないうちに気分がよくなって来ていた。
(そう? わたしのこと、そんなに好きなの?...)
(うん!大好きだよ!そんなに力持ちなのに、筋肉ゴリゴリじゃないし、肌はすべすべしているし、おっぱいもフワフワだし、オシリもふっくらしているし...)
(てへへへ… もういいよ、ミルリ。あなたのことはもう怒っていないわ!)
(また、あんなコトしたいんだけど... いい?)
(ちょっと恥ずかしいけど、いいよっ!おたがいカレシいないしね!)
念話コミュニケーションが終わったあとで、
“あれっ? なんでわたしはそんな約束をミルリとしたのかしら?”
とモモコは不思議に思った。
一方、リディアーヌの方も、すっかりチルリにドパーミンを大量放出されて、“チルリちゃん大好き”という心理状態になってしまっていた?
ユリアは、直接グラトニトルに着陸するのは危険かも知れないと考えた。
そこで、ティーナ・ロケットをグラトニトルの町の手前5キロメートルほどのところにある小高い丘に着陸させた。
ティーナ・ロケットは改良されたので、以前のように胴体着陸ではなく、ソリを出しての軟着陸だった。
グヮルボたちに見つからないように、丘の稜線の裏側に腹ばいになってからグラトニトルの様子を見る。
丘の上から見た光景は…
チルリとミルリだけでなく、ユリアたちをも戦慄させた。
グラトニトルの町は、真っ黒い雲のような数えきれない数のグヮルボに襲撃されていた。
「グラトニトルが!...」
「マモ・クリスティラさまっ!...」
いつもは、余裕のある言動が目立つチルリとミルリが絶句する。
「マモ・クリスティラさまって誰ですか?」マユラが訊く。
「グラトニトルのマザー・パラスピリトさまです...」
「ええっ? マザー・パラスピリト?!」
「なんだ、そのマザー・パラスピリトってのは?」
ユリアとリュウが同時に訊く。
それは今までユリアたちが聞いたことのない、パラスピリト社会のことだった。
チルリとミルリの説明によると、パラスピリトには大きく分けて三つの階級があり、最下級は生産階級に属するパラスピリトたちで赤色オーラを放つ。
中級はアーチストたちや専門職、特殊技能をもつパラスピリトたちで、黄色、白色のオーラを放つ。そして、それらの全ての階級の上に君臨するのが、ミルリやチルリたちの属する最高階級で、グラニトルの町に住むパラスピリトたち全てを管理する者たちであり、青白いオーラを放つそうだ。
「そこまでは、前にも聞いたわ」
ユリアがグラトニトルの町を、まるで腐肉にたかるハゲタカのように襲っているグヮルボの大群から目を離さずにチルリとミルリに言う。
「その最高階級のパラスピリトの中でも、さらに能力が高く、力のあるエリート・パラスピリトたちがいて、その方たちはハイ・パラスピリトと呼ばれているのよ」
「そして、そのハイ・パラスピリトの中で、最高位にあるのがマザー・パラスピリトであるマモ・クリスティラさまなの」
「いわばエルフ女王さまのような存在なのですね?」
アイミ女王に仕える巫女であるリディアーヌ が納得したように言った。
「ユリアさん、なんとかグラトニトルの町を... マザー・パラスピリトさまを助けることはできませんか?」
「マザー・パラスピリトさまを助けて欲しいです!」
チルリとミルリが哀願する。
「アイたちがいたら、何とかなったかも知れないけど...」
「オレたちだけではムリだっ!グヮルボの数が多すぎる!」
「却って、こちらがやられてしまうわ...」
ユリアとリュウとモモコが残念そうに首を横に振ったとき、マユラが声をあげた。
「なんだかグヮルボたちが仲間同士で争っているみたいです!」
「えっ、仲間同士で?」
「どういうことだよ?」
よく見ると、たしかに真っ黒な雲のようなグヮルボの大群の一部が、大群と衝突しているようで、バラバラっとグヮルボったちが墜落しているのが見える。
「もっと近くに行ってみましょう!」
ユリアの提案で、みんなは走ってグラトニトルの町に近づいて行った。
グヮルボの大群は、グラトニトルを襲うのに夢中でユリアたち七人が近づいてもまったく関心を示さなかった。
近くに行くと、同士討ちをやっているのは、ほんの少数だが、たしかにグヮルボ同士が戦っていた。
しかし、グヮルボの数はあまりにも多すぎて、ユリアたちは何もすることはできなかった。
グヮルボたちの狂宴が終わったのは、昼過ぎだった。
魔素を回復したティーナがアイたちを迎えに行き、お弁当とともに連れて来たあとだった。
グヮルボたちはグラトニトルを襲うのに夢中で、ダーマガ平原で行われていることに関心がないだろうと考えたからだ。それでも念のためレンとレオタロウが平原に残った。
グヮルボの大群がグラトニトルを去って、用心のためにしばらく待ってから町に入った。
町の通りはガラスの破片で埋め尽くされていて、足の踏み場もないほどだった。
すべてグラニトルの町のガラスで出来ていた建物だったものの破片だ。
そしてガラスの破片に混じって大量の大きな石が散らばっていた。中には一抱えありそうな大きな石もある。
グヮルボたちは、どうやら河原から石をもって来て投下したらしい。
大きな石は、二匹か三匹のグヮルボで運んできて落とす。
10キログラムの物体を高さ100メートルから地上に落としたときの衝撃力は何と50トンほどになる。
20キログラムも30キログラムもある石を、200メートルとか300メートルの高さから落としたら…
その破壊力は想像を絶するものになる。
ガラスで出来たグラニトルの町の建造物など、ひとたまりもなく破壊されてしまう。
そうしてガラスの家を破壊し、外に飛び出して来た無防備なヤドリレイ人たちに襲いかかったのだ。
街の中は、どこもここも皮と骨だけになったヤドレイ人の遺体が血の海の中に散らばっており、目を背けるような光景だった。ヤドリレイ人は、パラスピリトに寄生されたヤドラレ人のことだ。そしてあちらこちらにグヮルボの死骸も転がっていた。
ユリアたちが町に入って惨状を見ながら歩いていると、どこかに隠れていたらしいヤドリレイ人たちが三々五々と現れて来た。その中には、グラトニトル町西部区域の警備責任者のゼナノンの姿もあった。ダトーゥ族の衛兵数人とストリギダ人の検問官を引き連れていた。
「おおっ、だれかと思ったら、ユリア殿たちではござらんか?」
「ああ、ゼナノンさん、ご無事でしたか?」
「はい。グヮルボどもが、大挙して飛んできて、最初にコントロールタワーを破壊したときに、“こりゃイカン”と思って、ミモ・パラスピリトさまたちに至急連絡をしただ。
ワシも出来るだけ多くのヤドリレイ人に呼びかけて避難をさせたのだが、最初にコントロール・タワーが破壊されたこともあり、混乱に陥った住民たちに非難指示がうまく伝わらずに、このような悲惨な結果になってしまった...」
ゼナノンは肩を落として口惜しそうに言った。
グヮルボたちの知能はかなり高いようだ。
コントロール・タワーの役割を知っていたのか、それとも町で一番高い塔だから真っ先に狙ったのかわからないが、外敵を近づけない役目をするコントロール・タワーをかなりの高度から石を落とすことで破壊に成功し、奇襲を成功させたのだ。
「そ、それでマザー・パラスピリトさまは?」
「マモ・クリスティラさまは、ご無事なのですか?」
ミルリとチルリが一番心配していたことをゼナノンに訊く。
「ミモ・パラスピリトさまたちは、グヮルボたちを操って何とか食い止めようとされていたようだが、はたしてご無事なのかどうか...」
「じゃあ、グヮルボたちが同士討ちをしているように見えたのは...」
「ミモ・パラスピリトたちが、必死にグラトニトルの町を守ろうとしていたのですね?」
自分たちも、チルリとミルリに操作された経験があるモモコとリディアーヌ が異口同音に言う。
「じゃあ... マザー・パラスピリトさまは...」
「 マモ・クリスティラさまは...」
チルリとミルリが、目に涙をあふれさせ、今にも泣き出しそうな顔になっていた。
(私は無事ですよ。みなさん...)
その時、チルリとミルリ、ゼナノンたち衛兵、そしてユリアたちに、やさしいがしっかりとした念話が伝わって来た。
「マザー・パラスピリトさまっ!」
「マモ・クリスティラさま!」
「|マザー・パラスピリトさま!」
「よかった!|マザー・パラスピリトさまはご無事なようだ!」
「|マザー・パラスピリトさまはご無事だ!」
「マモ・クリスティラさまさえご無事なら!」
ゼナノンやミルリ、チルリたち、それに街にもどりつつあったヤドリレイ人から一斉に安堵の声があがる。
(ミモ・パラスピリトの皆も無事です。ゼナノンが早めに警報を出してくれたおかげで、かなりのパラスピリトが助かったようです。お礼を言います...)
「いえ、お礼などもったいないお言葉!」
(私たちは、そこにいるミィテラの世界から来たという若者たちとお話がしたいと思っています)
1時間後―
ユリアたちは、ゼナノンに案内されてコントロール・タワーの地下にある聖域にいた。
マザーパラピリストたちは、コントロールタワーが壊され、そのガラスの瓦礫でマザーパラピリストたちの住居区への出入口が塞さがれたため、聖域に閉じこめられていた。
だが、幸いにもそれが却って彼らをグヮルボの聖域への侵入から守ることになり、マザーパラピリストたちは、地下からその凄まじい能力でもってグヮルボの脳を操作し、同士討ちをさせたのだ。
しかし多勢に無勢で、千匹ほどのグヮルボの脳を乗っ取って同士討ちをさせても、グヮルボの数はあまりにも多すぎて町の破壊は食い止めることはできず、多くのヤドリレイ人が犠牲になってしまった。
ゼナノンは、マザーパラピリストたちが閉じ込められていることを知ると、パラピリストたちを集めて瓦礫を取りのぞいたのだ。もちろん、アイたちも一生懸命に手伝った。
1時間あまりにおよぶ瓦礫撤去作業の末に、ようやくマザーパラピリストたちのいる居住区への出入口が再び開けられた。
ユリアたちが案内されたのは、ゼナノンも上位パラスピリトであるミルリ、チルリさえも足を踏み入れたことがないと言う“聖域”だった。
ゼナノンはマザー・パラスピリトからグラトニトルの町復興のための処理という大任をあたえられたので、聖域へと通じるドアの前までユリアたちを連れて来てから引き返そうとした。
だが、(直接、お会いしてお礼を言いたいのです)とマザー・パラスピリトから言われて、ユリアたちといっしょにマザーパラピリストに会うことになった。
ユリアたちは聖域にはいり、床に恭しくひざまずいて頭を深く垂れた。
ラピテーズであるラピアとリーアの体にはいって共生しているチルリとミルリも、同じようなポーズをしている。ユリアたちは、それがパラスピリトたちの風習だと考え、同じように床にひざまずいて頭を垂れている。
その部屋にはまったく人の気配はなく、正面いっぱいに美しい色の渦模様がクルクル回っている空間があるだけだった。
ユリアは、“マザーパラピリストさまって、姿が見えないのかしら?”と考えていた。
(頭をあげてください...)
マザー・パラスピリトのやさしい念話が響いた。
頭をあげると、先ほどの美しい渦巻は消えていて、部屋の奥にほのかに白く輝く広間が現れた。
ユリアたちのところから30メートルほどのところに、腰まである見事なブロンドの髪と蒼い目の美しい女性がいた。その女性がマザーパラピリストだろう。
彼女はシルクのような光沢のある白く半透明なキトンみたいな衣装を着ていた。
マザーパラピリストからは眩いばかりの青白い光オーラが放たれていた。
しかし、その光は決して目を眩ませるような強烈な光ではなかった。
どこかやさしい感じのする柔らかい、暖かい光だった。
彼女は背の高い華麗な模様の描かれた立派な白い椅子に座っていた。
椅子は床から数段高いところにあり、マザーパラピリストの椅子があるところの一段下には、左右に5人ずつ、やはり美しいミモ・パラスピリトたちが、半透明なキトンみたいな衣装を着て、白い椅子に座って微笑んでいた。
彼女たちも、それぞれ明るいオーラを放っている。全員、青白い光だが、わずかに緑がかったり、ピンクかかったりしたオーラを放っている。
「ようこそいらしてくださいました。わたくしがマザー・パラスピリトのマモ・クリスティラです」
「マザーパラピリストさま、それにミモ・パラスピリトさまたちがご無事なのを知って、これ以上の悦びはありません!... クッ... うっ...うっ...」
ゼナノンが涙を流して男泣きに泣きはじめた。
「マザー・パラスピリトさまーっ!ワ―――ン!」
「マモ・クリスティラさまー! エ―――ン!」
チルリとミルリも大きく口を開けて泣きはじめた。
それを見たマザー・パラスピリトは、椅子から立ち上がると近づいて来た。
ミモ・パラスピリトたちがビックリしている。
たぶん、ザー・パラスピリトはそんな事をしたことがないのだろう。
マザー・パラスピリトは、ゼナノンに近づき、その手をとると、やさしく言った。
「ゼナノン、本当によくやってくれましたね。これからもグラトニトルの町の復興のために尽くしてください」
「も、もったいないお言葉です、マザー・パラスピリトさま。ゼナノン、全身全霊をもってグラニトル復興のために努力いたします!」
「ゼナノン、よろしくお願いします。まず最初は、まだ壊れた建物などの中に閉じ込められているパラピリストたちを救うことです。動ける者を総動員して救出してください」
「わかりました。早速、とりかかることにいたします!」
ゼナノンは恭しく頭を下げ、ひざまづいてから退室していった。
マザー・パラスピリトは、わんわん泣いているミルリとチルリの頭を両手でなでながら話をしている。
「ミルリもチルリも、本当に幸運でしたね。いえ、幸運は私たち、パラスピリトのものかも知れませんね。このようなミィテラの世界の勇者を呼び寄せたのですから...」
そう言いながら、マザー・パラスピリトは、なんと床にぺたんと横座りで座ってしまった。
「マモ・クリスティラさま?」
「マザー・パラスピリトさま?」
「マモ・クリスティラさま、何も床にお座りにならずとも...」
かなり異例のことらしく、ミモ・パラスピリトたちがおどろいて駆け寄ってくる。
「今回のグヮルボの襲撃で、私はたいへん大事な教訓を得ました。グラニトルに住むパラスピリトたちを守るという大事な務めは、わたしたちだけでは出来ないということです...」
「!...」
「!...」
「!」
ミモ・パラスピリトたちは驚いて棒立ちになったままだ。
「あなたたちも、私といっしょにここにお座りなさい。そして自己を紹介をなさい。それから、この異なる世界から来られた若者たちとお話をしましょう」
「はい。マザー・パラスピリトさま」
「はい。 マモ・クリスティラさま」
「はい」
「はい」
ユリア リュウ、モモコと マユラ、リディアーヌ、それにミルリもチルリはミモ・パラスピリトたちに囲まれる形になって、同じように床に座った。
マザー・パラスピリトは、見れば見るほど美しい女性だった。
ユリアたちを微笑みを浮かべた優しい蒼い目で見つめている。
女性であるユリアやアイ、モモコやマユラ、リディアーヌ でさえ茫然とするほどの美しさだ。
しかし...
唯一の男子であるリュウには...
“目の毒”的な マモ・クリスティラさまとミモ・パラスピリトたちだった。
グラトニトルの町でヤドリレイ人たちがハダカ同然の姿で歩いているのには慣れたリュウだったが、それがミモ・パラスピリトたちとなるとまったく違うということにあらためて気づいた。
というのは…
今までリュウが見て来た女性中で、最高の美女ともいえる、マザー・パラスピリトが着ているキトンのようなシルクの衣服がスケスケ過ぎて、マモ・クリスティラや周りのミモ・パラスピリトたちの体が透けて見えるからだった!
ミモ・パラスピリトたちも、マザー・パラスピリトに負けずとも劣らない美女たちばかりなのだが、彼女たちも下着らしいものを一切つけてないので、おっぱいも何もかも丸見だった!
“えっ、な、なんだよ、コレ? しかもオトコはオレ一人?”
リュウはビックリ仰天したが、彼はフツーの男の子ではない。
曽祖父は名だたる白龍王ゴッドリュウであり、父親は美女キラーの異名で知られる― 本当にそんな異名があるかどうかは不明だが― レオン王なのだ。
まったく関心がないフリをしながら、しっかりとマモ・クリスティラさまをはじめミモ・パラスピリトたちのボディを見ていた。
“あれっ、このミモ・パラスピリトは... たしか、「ミモ・ラィアです」って自己紹介していた娘だけど、下は生えてないのか? それとも剃っているのかな?”
ミモ・ラィアという名前のミモ・パラスピリトは、ブラウンの髪とブラウンの目をもったカワイイヤドリレイ人だった。背が低く― 150センチくらい。小学校高学年か中学1年生くらいの女の子並みの身長だ― それに目がクリクリとよく動く娘なので名前をすぐにおぼえた。
「ねえねえ、リュウ!もっとミィテラって言う世界のことを教えて!」
ミモ・ラィアの方も、唯一の男子であるリュウになぜか興味があるようで、マザー・パラスピリトさまがユリアたちと話していることなどまったく興味がないように、なれなれしくリュウの腕をとって自分に関心を向けようと熱心だ?
もっとも、彼女もミモ・パラスピリトなので、マザー・パラスピリト生やほかのミモ・パラスピリトが話している内容はすべてキャッチしているのだが。
チルリもミルリもミモ・ラィアも異性と愛し合った経験はない。
それはマザー・パラスピリトをはじめ、ほかのミモ・パラスピリトも同じだ。だがミモ・ラィアは人一倍好奇心が強いようだ。
「だからさぁ、ミィテラの世界では男と女の数は半々くらいなので、ほとんどの男は大人になると好きな女の子と結婚していっしょに家庭を築いて、子どもをいっしょに育てるんだよ」
「ねえねえ!結婚って、ラピテーズ族やストリギダ族みたいに、おたがいの生殖器官を直接つなぎ合わせて生殖行為をするってことでしょ?」
「そ、それだけじゃないよ!おたがいに愛し合い、尊敬しあって、協力しながらいっしょに困難を超えて幸せな家族を築いていくんだよ!」
「ねえねえ、リュウももう生殖器官でメスとつなぎ合わせたことあるの?」
「そ、それは個人的なコトだから、いくらミモ・ラィアにでも言えないな...」
「ねえねえ、そんなこと言わないで教えて...」
ミモ・ラィアは、リュウの腕を自分の胸に引きつけてせがむ。
ふっくらとしたミモ・ラィアのおっぱいの感触に、リュウの〇〇〇がたちまち元気になる!?




