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エスピリテラ漂流記  作者: 空創士
オールド・ブレイブス
117/123

114 レヴェレイション(前編)

【Revelation 真実①】


 

 ウォンブ・ホロスから出ると、女官長タレイアと副女官長のモイラが出迎えてくれた。


「みなさま、いらっしゃいませ!エイダさまがお待ちです!」


「あら...」


 モイラがレオたちといっしょにいるカロリエーとクリューネを見て小さく声をあげ、おどろく。

エイダは、「ミィテラの世界の勇者さまたちだけ」を招待したはずだったからだ。

しかし、そんな些細なことでエイダさまのVIPの機嫌を損ねたりするような野暮なことはしない。


 なにもなかったかのように、にこやかに笑ってレオたちを先導して、宮殿前の広く、よく手入れされた庭園の中の道を歩く。

 みんなは緑の芝生と池と色美しい花々が咲き、噴水が水を高く上げている庭園などまったく見ずに、プラネタリウムの内側にいるかのように、星空の代わりに、見渡せる限り、緑の草原や山、川などがグ――っと全周囲に広がり、頭上に向かってせり上がっている景色を、あまり上を見過ぎて首が痛くなるほど上げて見ていた。

 前回も見たのだが、想像を絶する景色に、みんなは口を開けっぱなしだった。

中天に煌々とあの黄色い太陽が輝き、そして太陽より大きい月が太陽の前に来つつあった…


 カロリエーとクリューネも呆けたように空を見上げている。

「あいたっ!あまり上を見過ぎて首がおかしくなりましたわ!」

クリューネが首をコキコキして文句を言っている。


「わたしも首がおかしくなりそうです...」

カロリエーもようやく首を元にもどし、目の前の宮殿を観察しはじめた。


「ルークラインテン・パレスより立派ですね、ここは!」

風に吹かれて少し乱れたブルーバイオレットの長い髪を直しながら、カロリエーがレオに言う。

カロリエーも最早ガーディアン(守護者)としての役目はもう必要ないので、エスピリティラの女性が着るキトンを羽織り、腰のベルトに剣を差している姿もなかなかスタイリッシュだ。


 レオはカロリエーとクリューネをミィテラの世界へ連れて行くつもりだった。

「レオタロウたちをエスピリティラに置いて行くんだから、バランスをとるためにもエスピリティラから何人かミィテラの世界へ連れて行かなくちゃな!」

とイザベルたちに言い訳をしていたが、クリューネはともかく、美女ガーディアン(守護者)であるカロリエーにレオが()()()()()()()のをみんな知っているので、何も言わなかった。

 イザベルたちにすれば、レオが何十人、何百人妻を娶ろうが、恋人を作ろうが、自分たちを“夫として満足”させてくれれば問題ないのだ。


そして、そのことに関しては、“まったく問題ない”ことを彼女たちは知っていた。

ただ、クリューネとカロリエーのほかに、誰をミィテラへ連れて行くかは皆目わからなかった。


「クリスティラとかシルレイとかあたりじゃないかしら?」

「えっ?でもクリスティラはシングルだけどシルレイはレンの妻でしょう?」

「そうなのよね... でも、レオは言い出したら聞かないから...」

「好きなオンナは、必ず自分のモノにしちゃうものね」

「みんなそうだったし...」

などとイザベルやアイミやランなどは話ていたのだが。



 前回と同じく、総大理石造りの立派なエントランスホールを通り、見事な装飾がある大窓がずらーっとが左右に並ぶ大回廊を通り、前回と同じエイダの部屋にたどり着く。

タレイアとモイラの後ろを歩いていた女官が前に出て、扉を開く。


部屋の中にはエイダがあの立派な椅子に座っていた。

「ようこそイリュミーヘイムへ!」

椅子から立ち上がり、レオたちの方へ歩み寄りながらエイダが微笑んでウエルカムを言う。


「あら、カロリエーさんとクリューネさんがいっしょなのですね?」

「ええ。この二人は美女なので、ユリアたちをここに残す代わりに、ミィテラへ連れて行こうと思っています」

「あら、そうなのですか?」

レオが悪びれる様子もなく、平然と言う。


「では、ほかには誰を連れていくおつもりですか?」

イザベルたちと違って、エイダも平然と訊く。

「そうですね... 有力候補はやはりクリスティラかな?」

「私はどうですか?」

悪戯っぽい目をしてエイダがとんでもないことを訊く。


「え?」

「エイダさま?」

タレイアとモイラが目を見開いて驚いている。


「エイダさまもシングルだし、最有力候補になりますね!」

レオも悪戯心(いたずらごころ)いっぱいで返事をする。

「ふふふ... 冗談ですわ。私がいなければエスピリティラはカオスになりますもの」

タレイアとモイラがホッと安堵するのが見えた。


「今日は突然、お呼びしてすみませんでした」

みんなが着席し、女官がお茶をテーブルに置いて出て行ったあとで、お茶を勧めながらエイダが話しはじめた。

「いえいえ。(地表)ではラダントゥースさんがうまくやってくれていて、今、ESPOLの組織づくりを一生懸命にやってくれています。彼の町は人材が多いし、ESPOLに加盟した町々にも人材が豊富ですので、あと数か月もしたらESPOLは順調にスタートするでしょう!」


「さすがレオさまですね。ラダントゥースさまの能力を見抜いて、的確な役目をあたえるなんて」

「あれだけの都市を治めて来た男です。スキルの高さは超一流ですよ!」

「それは確かですね」


エイダはティ―カップを置きながら言い、タレイアとモイラをちらっと見た。

「今日、お呼びしたのは、皆さんにもう少し良くイリュミーヘイムを知っていただきたいと思ったからです」

「おう!それは面白そうだな!」

「ステキ!」

「私、イリュミーヘイムを見たかったの!」

「ヤドラレンシス・イリューメンスも見たいわ!」

「ボクは恐竜を見たいよ!」

みんな期待でワクワクしている。


「では、乗り物をご用意していますので、ついて来てください」

タレイアとモイラが先に立って、ドアを開ける。

「レオさまは残ってください...」

エイダがレオを見て言った。


そこでみんなはエイダがレオと何か重要なことを話すのだとわかった。

「はい、はい。じゃあ、レオとエイダさまと(ねんご)ろになれるように、イリュミーヘイム観光に行きましょう!」

「あの... そのようなものではないのですが...」

モモの言葉に慌てるエイダ。


だが、知る者は知る。

エイダとレオの関係は(ねんご)ろを通り過ぎ、()()()()になってしまっていたのだが。

モモははたして、それを察知していたのかどうかはわからない。

とにかく、みんなはレオとエイダを残して部屋を出て行った。



 宮殿の後ろの広大な庭園には... 

巨大なトカゲのようなイキモノがいた。それも10匹も!

全長15メートルほどのそいつらは、銀色の鱗に覆われていた。


バサバサっと羽を広げ、ギャギャー!とタレイアたちを見てうれしそうに鳴く。


「こ、これって... ホワイトドラゴンじゃない?」

「白くないけど... たしかにホワイトドラゴンだわね!」

「どうして銀色のホワイトドラゴンがここにいるんだ?」

みんながワイワイ騒ぐ。


「これはシルバードラゴンと私たちは呼んでいるんですけど、エイダさまがホワイトドラゴンを参考にお創りになられたのです」

モイラの説明にみんなが納得する。


 シルバードラゴンの背にシートが付けられているのを見てモモが訊いた。

「つまり... このシルバードラゴンの背に乗ってイリュミーヘイム見学をするということね?」

「はい。エイダさまの指針は、イリュミーヘイムの生態系に出来るだけ影響をあたえないようにということですので、ティーナ・ロケットとかは禁止されていますので、調査員もこのシルバードラゴンを使っています」


シルバードラゴンの背には、それぞれ4つずつシートがあったので、分かれて乗る。

一匹に一人のパイロット代わりのハイ・パラスピリト(最高階級寄生霊)が付く。

タレイアは「エイダさまのおそばにいなければなりませんので...」ということで、モイラがいっしょに行くことになった。


 バサバサバサ―――っ!

 バサバサバサ―――っ!

 バサバサバサ―――っ!

 バサバサバサ―――っ!


すごい風を巻き起こし、シルバードラゴンたちは舞い上がった。

宮殿の上を通り過ぎ、しばらく飛ぶと“ブワっ”とした感じでバリアーを通った。


(エイダさまの町、イリュミーシティは外部から見えないように、バリアーが張られています。もちろん、外部からの侵入も出来ません)

モイラが念話でみんなに説明してくれる。


バリアーを張ることによって、イリュミーヘイムのイキモノたちはイリュミーシティを見ることもできないし、イリュミーシティに入ることもできないというわけだ。

(イリュミーヘイムのイキモノたちから見えないように、ステルス魔法で見なくします)

モイラがみんなに伝える。




 外は夕暮れだった。


(あの月は『イリュミルア』という名前なんですけど、イリュミソル(太陽)より大きく、イリュミルアの陰になる部分はおよそ8時間の夜になるのです)

(道理であの太陽より大きいわけですね!)

オリヴィアが感心したように言う。


(でも、イリュミーヘイムに四季はあるのかしら?)

(春夏秋冬はありますわ、ミユさん。冬になれば少しですけど雪も降りますし、春には花、夏は暑く、秋は奥の果物がなります)

(至りつくせりってわけね!)

エマが眼下の夕暮れの光景を見ながら言う。


(はい。海こそありませんけど、かなり広い湖があちこちにありますし、塩水湖もところどころにあります)

(塩は不自由しないってわけだ!)

(はい、カイオさま。火山もあり、ときどき噴火するんですよ!)

(ゲゲっ!火山もあるのか?)

ベンケイ(ソフィア)がおどろく。


ブラキオサウルス

挿絵(By みてみん)




「見て!見て!あそこに首の長い恐竜がいるわ!」

ランが興奮気味に叫ぶ。

「どこ?どこ?あーっ、本当!カップルかしら?中良さそう!」

「それにしても大きいわね!」

「空を飛んでいるヤツもいるわよ!」

「まさか襲って来ないでしょうね?」

「だいじょうぶでしょ。シルバードラゴンの方が大きいから!」



 夕暮れ地帯を過ぎて、昼の地帯を飛ぶ。

ホワイトドラゴン同様、シルバードラゴンもかなり高速で飛べるようだ。

大きな湖を過ぎ、森林地帯に入る。

緑に覆われた山脈の上を通った直後、アイミが叫んだ。


「ほらっ!あそこにいるのは石器時代人とか言っていた人族じゃない?」

「ヤドラレンシス・イリューメンスね!」

「筋骨隆々のオトコたちがいるわ!」

「ほぼハダカ...」

「あの毛皮の下には、筋骨隆々としたイチモツがあるのね...」

「やだ、イザベルったら何を想像しているの?」

「うふふ。今日は私がレオに抱かれる番だから、今から楽しく想像して気分を上げているのよ!」

「あら、私の番でもあるわよ?」とアイミが言えば、

「わたしもですわ」

「私もレオに抱かれてあげるわ」


ランとモモもニンマリと笑っている。

カロリエーとクリューネは、あまりにもあっけらかんとした妻たちに驚きをかくせない。





 一方、こちらはすっかり夜のとばりが降りたイリュミーシティにある宮殿の中のエイダの寝室。


「ふぅ......」


たった今、レオに抱かれて10回目の恍惚の極致に達したばかりのエイダが大きく息をした。


あいさつ代わりにエイダを抱いて、10回恍惚の極致に達させ、自分もたっぷりと満足したレオ。


豊かな胸を大きく上下させレオの腕枕で息をしているエイダの茶色の髪をなでる。


「ふふ... こうしていると意外とかわいいな...」

「恋する女はかわいくなるものよ」

「あれっ? エターナルさま、オレに恋しているの?」

「もう... イジワルね!」

茶色の瞳で睨む真似をするエイダ。


「レオが好きだから、こんなことするんでしょ?」

「たんに男女の営みに飢えているだけかと思っていたよ!」

「まあ、男女の営みは好きだけど、誰とでもはしたくないわ」

「とくに弟のアモンなんかとはな?」


「本当にイジワルね、レオは。アモンにはアーバをあたえたから、あとは心配ないわ」

「アーバがアモンに愛想をつかすってことはないのかい?」

「ちゃんと脳教育しているからだいじょうぶよ。死ぬまでアモンに尽くすはずよ」

「アーバが少し可哀そうになるな...」


「レオ...」

「なんだい?」

「あなた、私が一生、アモンと抱かれている方がいいの?」

「いや、そりゃダメだよ。わかった、わかった!エターナルさんのやったことは正しい!」

「それでよろしい!エッヘン!」


 エッヘン!と胸を張った姿がかわい過ぎて、レオはまたエイダを襲った。

 

 ............  


 ............  


 ............  

 



「ふぅ ふぅ ふーう...... まったく、レオは強いわね... ふぅ...」


エイダはふたたびレオの腕枕で胸を大きく上下させている。


「はぁ はぁ はぁ...... でも、オレも歳のせいか、少しスタミナが減ったような... だから、最近はオレも最後まで行くのは極力控えているんだよ。その方が女性を何度でも抱くことができるから...」

「じゃあ、なんで私の中にゴムなしで2回も出したのよ?」


「そりゃエターナルさまとオレの子どもを作りたいからに決まっているだろ?」

「...... レオ、... あなた、本気でそんなことを考えているの?」

「オレはいつでも本気だよ。好きなオンナを抱いて、オレの体液を中に出すのは、その好きなオンナの子どもが欲しいからに決まっているだろ?」


「............」


 エタナールは― すでにブロンドの髪と蒼い瞳になっていた― レオをまっすぐに見上げた。


それから横座りになり、レオの頬を両手で挟んでじっと目をのぞき込んだ。



「本気なのね... 私、この前も言ったと思うけど、陣痛とか耐えれそうにないし、子育てをしている姿って想像もつかないのよね...」


「陣痛は、あんたの能力でどうにでもなるだろう?子育ては、王国にベテランがいるから自由に使ったらいいよ!」


「わかったわ... それほど言うのなら、産むわ。あなたの子どもを。私、レオのこと愛しているし。でも、今日は排卵期じゃいから妊娠できないけど、排卵期になったら知らせるから、そのときに...」


「本当か?うれしいな!テラに転生したときもうれしかったけど、ミィテラでアイミなどと会い、愛しあったときもうれしかったけど、今のエターナルさまの言葉は3番目にうれしい事だな!」


「私もうれしいわ。前世では、とうとう結婚しないままだったけど、こうして愛する男にふたたび出逢うことができて、愛しあって家族をもてるって... 何物にも代えがたい幸せよ」



レオは愛しいエタナールを抱きしめ、深くキスをする。


「うふん...」


胸を揉まれて喘ぎ声を出すエタナール。


「それはそうと、エタナールさん、あんたオレとヤるためだけに呼んだんじゃないだろう?」


「うふん... もう、ほかの話はヤメて子づくりだけしましょう...」


「今日は妊娠しないって言ったんじゃなかったっけ?」


「ほかの話はヤメて恋人同士の営みだけしましょう!」


二人は、ふたたび愛し合いはじめた。



  ヤドラレンシス・イリューメンス

   挿絵(By みてみん)



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