1-1-7 一悶着の後俺はバイクに乗って姉と出かける
「・・・・・・・・はい?」
「わたしとデートに今から行こう!」
姉が俺とデートを今からすると言い出した。
姉弟が出かけるのはデートとは言わないだろ。
俺は家族で出かけるのはデートとは言わないと反論する。
「姉さん、姉弟で出かけるのはデートとは言いません。
デートというのは家族という関係ではない男女が外出してその間同じ時間を共有することを言うのです」
俺が反論し終えた瞬間姉が俺の反論に対して反論する。
「でもわたしたち元々家族じゃなかったわけでしょう?
姉弟にはなったけど血が完全につながってないし、そう考えたらわたしたちが二人で出かけるのもデートと言って間違いじゃないよ」
お、おう・・・・・・・・・・
姉よ、それは屁理屈というのではないでしょうか。
どうにも納得できず姉の考えに反論する。
「ですが、今は私と姉さんは法的にれっきとした家族です。
ですから家族と国に認められてる以上私と姉さんが外出するのはデートではありません」
俺のその言葉に姉は頬を膨らませてむすっとする。
「もう!わたしがデートといったらデートなの!
とにかく今からデート行くよ!」
姉が俺の反論を聞いてこれはデートだと言い張り始めた。
何が何でもデートという名目で俺と出かけたいらしい。
しかし出かけるなんて今さっき聞いたのでなぜ事前に行ってくれなかったのか聞いてみる。
「わかりました、わかりましたから一緒に出かけましょう。
ですが一緒に出かけるなら事前に言ってください。
いつ出かける日を決めたんですか」
「ついさっきだよ。
だって昨日は健くんとイチャイチャするのに夢中になっててデートするところまで頭が回ってなかったんだもん」
姉は隠すことなく今日今この時に俺と出かけることを決めたという。
更にその予定を今しがた俺に伝えて一緒に出かけてほしいと言う。
俺は予定は事前に決めておいて前日には伝えるように姉に注意する。
・・・・・・・・・・・・・・
何ていうかこれ、もはやどっちが年上なのかよくわかんない状況になってるような?
まあいい。
「姉さん、私が行き当たりばったりで姉さんがどうしても外せない用事がある日に姉さんと出かける予定を立てて当日に私がその予定を伝えて一緒に出かけようと言われても困りますでしょう?ですから」
「健くんがわたしとどこかに行きたいというのならどんな手を使ってでも元々あった予定を変更して健くんと一緒に出かけるよ?」
キリッとした表情で姉は俺の例え話に全く予想していなかった言葉を返す。
えっと・・・・・・・・
姉はいったい何を言っているのだろう。
そう思った瞬間姉が俺の両手を取って
「健くんはわたしに対してもっとわがままに
なってくれてもいい。
わたしは健くんのお姉ちゃんなんだから
もっとわたしを頼ってきてほしいし
もっとわたしに甘えてきてほしい」
と、上目遣いで少し寂しげな表情でそんなことを言う。
ちょっと待って。話が脱線、というより話の論点がずれていってる。
今は甘えるとか頼るとかいう話をしてるんじゃない。
と思ってたら姉はきちんと話の論点を元に戻してくれる。
「話を戻すよ。
健くん、いきなり予定も聞かずに自分の気持ちを押し付けようとしてしまってごめんなさい。
でも今日健くんは出かける予定があったの?」
「ありませんけど」
「じゃあ行くってさっきの文句言わずに素直に行ってくれてもいいじゃん!」
姉が俺の返答に対して頬を膨らませて非難の声を上げる。
そして姉は
「健くんはわたしと出かけるのがそんなに嫌なの・・・・・・・・?
わたしとデート、してくれないの・・・・・・・?」
と上目遣いに加えて今にも泣きそうな顔をして俺を問い詰める。
本当に泣きそうに見えたため俺は慌てて姉と一緒に出かけることを承諾する。
「わかりました、わかりましたから。
今からデートしましょう」
「やったあっ!じゃあデートの支度してくるから健くんも準備してね」
そういって姉は自分の部屋に戻っていく。
俺も部屋のドアを閉めて姉と出かける準備をする。
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15分後
俺は出かける準備が終わり部屋の中で姉の準備が終わるのを待っていると部屋のドアがノックされる。
「健くん、準備できた?」
姉が準備を終えて俺の部屋の前まで来たのだろうと思い部屋のドアを開けてみると俺の予想通り部屋の前に姉がいて、俺が出かける準備を終えたのか確かめに来た。
「準備できました」
「よーし、なら行こっか!
あ、ヘルメット・グローブ・ジャケットを忘れちゃダメだよ」
あれ、今日はバイクで行くのか。
なにで行くのか聞いてなかったためそれらの装備を用意していなかった。
バイクで行くのならそれらは絶対に必要だ。
俺は急いでそれらを用意して玄関へと急ぐ。
そして玄関を出た瞬間俺は固まった。
玄関先に俺が父から所有していることを知らされていない、かの有名な重工業会社製のメガスポーツが一台これみよがしに鎮座していたのだ。
「え!?え・・・・・・?姉さん。このバイク、いったいどこから持ってきたんですか?」
「わたしもどこから持ってきたのか知らないんだよね。
今日バイクで健くんとデート行くからバイク貸してってお父さんに言ったらいつの間にか玄関先にこれが用意されていたの。
わたしもこれを見たとき驚いてね。どうしたのあれって聞いたら『まぁちょっといろいろあってね。新車で買って慣らし運転は終わってるから全開にしても大丈夫だよ』って」
てことは俺の知らないバイク保管用の倉庫がどこかにあるってことか。
帰ったら父を問い詰めよう。
「とにかく、今日はこれで行くから。
まずインカムのスイッチ付けてヘルメット被って互いの声が聞こえるか確認しよう」
姉の指示通りインカムの電源を入れてヘルメットを被り声を適当に発する。
少しして姉さんの声が耳のすぐそばから聞こえてくる。
「うん、インカムはお互いに大丈夫だね。
じゃぁグローブ付けてジャケット着てね。
そのあとわたしが後ろに乗るように言ったら乗ってね」
俺はその指示に従いグローブをつけてジャケットを着る。
姉がバイクの運転席に座ったのを確認した後座っていいよと言うので俺は後部座席に座る。
そして姉がキーをONの位置まで回しデバイスの作動音が消えてからエンジンをかける。
「じゃぁ、健くん。しっかりつかまってね」
俺はその言葉に従い右手を姉の腰にあて、左手で後ろのグラブバーをつかむ。
俺がしっかりつかまったことを確認した姉はバイクのサイドスタンドを左足で蹴って上げる。
スタンドを上げた後左手でクラッチを切って左足でシフトペダルを踏んで1速に入れる。
「それじゃデートへゴー!」
姉はそんな掛け声とともに半クラッチを数秒使ってバイクを発進させる。
こうして姉とのデートという名のお出かけが始まった。
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