7-4-5 俺は健一郎の知られざるスキルによって破滅した
次くらいで恐らく完結します。
「典史、これは一体どういうことか説明してもらおうか」
健一郎が運び込まれた病院の病室で、俺はかつてのライバルである巌から非難の目を向けられる。
俺はその目に一瞬怯む。
昔からこいつは怒った時はいつもこういう目をしてにらみつけてたな、と思い出す。
そして俺はこの目がいつ見ても苦手だ。
「ちょっと体調が悪くなっただけさ」
「ほう、入院するようなことが"ちょっとした"体調不良かよ?」
俺が質問に答えると更に巌の視線が非難じみる。
俺は何かあったことを悟られないように平然とした顔になって取り繕う。
「そうだ。"ちょっとした"体調不良なんだけど念のために検査を受けるために入院したんだ」
「検査、そうか。で、その検査ってのは腸閉塞と栄養失調か?」
俺は巌のその答えに驚きを隠せなかった。
何でそんなことを、と思ったら巌が俺に対して更に非難するような言葉をかける。
「で、その原因ってのはお前の娘が健一郎を地下室に監禁してどこにも行かせないようにしたからか?」
俺は巌の発言に更に驚愕する。
おかしい、そのことは巌が知っているなんてありえない。
俺たち以外が知るはずがないことをどうやって知りえたんだ。
対策は完璧にしてたはずなのに。
俺は激しく動揺してしまいしどろもどろに巌の質問に答えてしまう。
「な、何を言ってるんだ巌。
そんなことはしてない」
「ほほう、じゃあこれは何だ?アアンっ!?」
巌がカバンからタブレットを取り出し画面をタップする。
そして巌が向けてきたタブレットの画面に映っていたのは桔梗が床のタイルを動かして地下室へと入っていくところだった。
「な、なぜこんな映像が!」
「お前、契約で監視カメラ付けたのを忘れてただろ。
これはあのとき設置を確認したときにつけたカメラの一つだ」
私は頭の中がひどく混乱した。
なぜだ、あの後監視カメラを全て録画を停止して録画してるように見せかける工作をしたはずだ。
なのになぜ監視カメラはその時まともに録画してたんだ!
私が激しく心を乱すなか巌が俺の考えていることを読んだかのようなことを言う。
「その乱れよう、やっぱりカメラを細工してやがったのか。
お前、どうしてこんな映像がって思ってるんだろ?
なぜ監視カメラが正常に動作してるのか、その理由は健一郎がそのようにしたからだ」
俺は巌のその発言を全く理解できない。
なぜ健一郎がここで出てくるのかが全く分からなかったからだ。
「健一郎はな、チューニングの世界でコンピュータチューンで右に出る者はいないと言われた男、伊良湖 公の息子なんだよ。
健一郎は生まれたときからそいつの英才教育を受けていてな、車以外にも通信機器やPCのハード・ソフト両方の修理ができるんだよ。
だからお前がした細工を元に戻せたわけだ。
尤も、カラクリに気づいたのは俺だがな」
俺は巌の言葉に絶望した。
まさか健一郎がそんなスキルを持っていたとは。
そしてそのスキルのせいで追い詰められた。
俺は心の底から悔しさがこみ上げ叫んだ。
「クソったれが!」
俺が叫んだ瞬間巌が確かめるような口調で俺に質問をしてくる。
「そんなことを言うってことは健一郎を監禁してたことを認めるのか?」
俺は巌からの質問にこれ以上言い訳しても無駄だと観念して認める。
「そうだ。
ただ実際にしたのは娘の桔梗だが」
「認めるかよ。それじゃあ言質も取れたことだしお前のことは告発するからな。
逮捕された後ブタ箱の中でひたすら自分の罪を数えることだな」
巌がそう言って病室を去っていく。
俺ももう何もやる気が起きないまま病室を去っていった。
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数日後
「君、とんでもないことをしてくれたね」
「申し訳ありません!」
俺は社長に社長室に来いと言われ来たところで私の娘が犯した所業について詰問された。
俺は社長の言葉に対しひたすらに土下座をして謝罪をする。
しかし社長は一向に許す気配を見せない。
「はぁ。
君ならもしかすればと期待していたんだがね。
こういうことをするような人間をこれ以上わが社に置いておくことはできない。
よって君は今日付けで解雇だ。
とっととこの建物から出ていけぇ!」
社長の怒声に失禁しながら脱兎の勢いで社長室を出る。
私は元職場に来てすぐデスクにある私物をカバンに詰め込みデスクの整理をして会社を出る。
私が会社を出た瞬間警察官に呼び止められる。
「すみません。綾瀬典史さんですね?」
「っ、はい」
「綾瀬典史さん、あなたをこの逮捕状にある通り、監禁罪で逮捕します」
警察官数名が俺を取り囲み俺の腕を掴む。
パトカーに俺は警察官に押し込まれそのまま警察署へと連行された。
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