1-E-1 わたしは弟に関する悩みを友人に打ち明ける
なんとか今日中投稿間に合った・・・・・・・・・
4月のある日。
大学内のベンチでわたしは悩んでいた。
彼とわたしとの距離感について。
彼というのは、わたしの弟の健一郎くんのことだ。
彼は高校の入学式の日に起こった出来事のせいで両親を亡くしてしまった。
そして紆余曲折あって昔から付き合いがあったわたしの家に養子として迎えられることになった。
彼はわたしの家に来てから今まで一度たりともわたしのことを姉さんとかお姉ちゃんと呼んだことはない。
そもそも彼がわたしに話しかけてくるどころか呼び掛けてくること自体ほとんどない。
わたしは彼に家族として認められていないのだろうか。
彼はわたしのことを家族と、姉と認めていないのだろうか。
だとするとどうしたら彼はわたしのことを姉と、家族と認めてくれるのだろうか。
そんなことを考えているとわたしが座っている席の前に一人の女性が座ってきた。
「し~ずか!」
わたしの前に座ってきたのはわたしの友達の湊ちゃんだった。
「あれ、湊ちゃん。どうしたの?」
「いや、履修登録する帰り道に偶然見かけてさ。静は履修登録終わった?」
わたしは湊ちゃんにそう聞かれたので終わったよという。
湊ちゃんはそう言った後わたしの顔を見てどうしたのかと問いかける。
「で、どしたん?そんな悩んだ顔をして」
「うん、実はね・・・・・・・弟のことで悩んでるんだ」
わたしは健くんのことで悩んでると湊ちゃんに打ち明ける。
「弟?静に弟なんていたっけ?」
そういえば湊ちゃんには弟ができたことをまだ言ってなかったっけ。
わたしは弟ができたことを湊ちゃんに説明する。
「3か月くらい前にね。4歳下の義理の弟ができたんだ」
「4コ下!?え、もしかして親同士が再婚したとか?」
「違うよ。彼が身寄りをなくしたからうちで引き取ったんだ」
わたしに弟ができた理由を説明するとなるほどと湊ちゃんは納得した表情をする。
「で、ちなみに弟くんはイケメンだったりする?」
湊ちゃんが彼の顔について訊いてくる。
彼女は結構な面食いなのだ。
「残念。私の弟は湊ちゃんの好みの顔じゃないよ」
そういって家族と撮った唯一彼が写った写真を見せる。
「ん~?確かにアタシの好みとはちょっと違うけど、でも見た目はそこそこいい男じゃん」
湊ちゃんは彼の顔をそう評価する。
「で、その弟がどうしたって?」
「うん、弟がね、いまだにわたしと距離をとってるの」
「それはそうでしょ」
湊ちゃんがそれは当たり前だという。
「どうして?」
「だってさ静、自分がそういう立場になったらどうするかって考えてみ?」
湊ちゃんに言われて考えてみる。
自分が何らかのいたたまれぬ事情でどこかの家に突然養子に入ることとなったら。
その家に年下の男の子がいてその子が弟になると言われたら。
「・・・・・・・・・・湊ちゃんの言うとおりだ。わたしも弟と同じような態度をとる」
「でしょ?」
湊ちゃんはわたしの答えを聞いてドヤァという感じの顔をする。
「だからさ、彼の気持ちの整理がつくまで待ったほうがいいと思うよ」
湊ちゃんは彼がわたしを姉と認めるまで待ったほうがいいという。
でもわたしは・・・・・・・・・・・・わたしは!
「でも、私は彼に姉として今すぐにでも認められたい。彼にわたしとは本当の姉弟のような距離で接してほしい」
「いやいや・・・・・・・・なかなかわがままなことを言うね」
わがままでいいよ。
だって健くんは・・・・・・・
「ところでさ、弟くんって何歳?」
「16だけど?」
湊ちゃんに健くんの年齢を突然聞かれて答える。
「ってことは今年高校1年なのね」
「それがどうかしたの?」
「いやさ、静の悩みを解決する妙案を思いついてさ」
湊ちゃんがわたしの悩みを解決するアイデアがあるという。
一体それが何なのか興味がわいたので湊ちゃんに聞いてみる。
「そのアイデアって?」
「簡単なことさ。弟を襲っちゃえばいい」
そのアイデアについて聞いてみると湊ちゃんが突然おかしなことを言う。
「な、何言ってるの湊ちゃん」
「弟を襲えばいいって言ったんだよ。でさ、そこでわたしのことを姉としてちゃんと見てほしいって、距離をとらないでほしい言えばいいんだよ」
湊ちゃんが訳が分からないことを言い出した。
け、健くんを襲うだなんてできるわけがない。
「み、湊ちゃん!いいい、一体なにを言ってるの!?」
「だってさ、弟くんはそもそも静に近づいてこないわけでしょ?ならこちらから無理やりにでも物理的に近づいていくしかないじゃん」
た、確かにそうだけど急にそんなことしたら健くんに嫌われちゃうよ・・・・・・・。
「それにさ、静の弟ってさ、思春期の高校生なわけじゃん?健全な男子高校生なら年上のきれいなお姉さんに襲われたいって願望も少なからずあると思うんだ」
「彼にそんな願望は」
「ないと思う?」
湊ちゃんに聞かれわたしは言いよどむ。
確かに健くんは思春期の男の子だけど、健くんに限ってはそんなこと・・・・・・・・・。
「静みたいな美人に襲われてお願いされたら、どんなに意志の固い男子高校生でもお願いを聞いちゃうと思うよ」
「な、なに言ってるの?わたし別に美人じゃ」
「うんにゃ、静は美人だよ。うちの学科でも静と付き合いたいって男は結構いるし」
わたしは湊ちゃんの言葉に驚く。
なぜならこれまでわたしに告白してくる男性はほとんどいなかったから。
「え、そうなの?知らなかった」
「そうだよ。といっても美人過ぎて近寄りがたいとも言ってたから男どもとっての静は高嶺の花で遠目で見るのがせいぜいのようだけど」
そ、そうなんだ。知らなかった。
「ま、でも襲うってのは言ってしまえば最後の手段だからね。
やっぱり今は彼のほうから歩み寄ってくるまで待ったほうがいい。
その代わり彼から歩み寄ってきたらすぐにでも襲うんだぞ」
「ちょっと何言ってるの?というかよく考えたらそもそもわたしと彼は姉弟だよ?もし何かあったらどうするの」
わたしがそう反論すると湊ちゃんは自分のスマホの画面を見せてくる。
わたしがスマホの画面に書いてあることを読んだ後湊ちゃんが
「義理の姉弟なら結婚できるって法律に書いてあるから何かあっても問題ない。最悪静が何か起こったときは責任取ればいい」
と言う。
確かにこれを見る限り万が一間違いが起こっても問題ないように見える。
いや待って。そういう問題じゃないしよく考えたら別の法律で問題になってわたしが捕まるようなと思っていると
「おっとすまん時間だ。あたしはもう帰らなきゃいけないから帰るね。じゃ」
湊ちゃんが突然そんなことを言って帰っていく。
湊ちゃんを引き留めようとするがその前に姿を消してしまった。
もう、と内心湊ちゃんに怒りながらわたしも用事が済んだため家に帰ることにして家路についた。
誤字・脱字報告はお気軽にしてください。
確認次第修正を行います。




