7-3-11 私は健一郎の気持ちを察してしまった
「こんなところで何してるのかしら」
私が二人に問いかけると静さんが私の問いかけにすっとぼけたような顔をする。
「見てわからない?」
「見てわからないから聞いているのですか」
私は静さんの言葉に非常に不愉快な気持ちになりながらもなんとかそれを出さないようにもう一度私は問いかける。
すると静さんが二人で何をしていたのかをあっさりと話す。
「明日から健くん夏休みでしょ?
で、連休になるからいつ帰ってくるのかとか帰ってきたら何するか聞いてたの」
私はそれを聞いてそういうこと、と思う。
しかし今度の連休は健一郎の夏休みではなく盆連休のはず。
なのにどうしてこんなタイミングで?
そう思って再度静さんに問い質す。
「夏の連休は盆連休からで健一郎の夏休みからではありませんよ?」
「そのことは誰が決めたのかな?」
「契約の中にきちんと書いていますよ」
「契約の中には連休についての明確な定義はなかったはずだけど?
なら健くんの夏休みも言ってしまえば連休なんだからうちに帰っても問題ないよね?」
「そんな屁理屈通用するはずがないでしょう!」
私は静さんから発せられる屁理屈にしか聞こえない論理に激昂し机を叩く。
周囲がしんと静まり返るが私は構わず続ける。
「連休をいつからと決めるかは私達の判断です。
それを勝手に決めるのはやめてください。
それといつまで手をつないで親し気にしてるんですか」
私は健一郎を家に帰してよいかどうか判断する権限はこちらにあると間接的に牽制する。
そしていつまでもいい感じに手をつないでいることに関して咎めると静さんが私の咎めに反論する。
「姉弟で手をつなぐくらいいいでしょ?
一体何の問題があるの?」
「静さんと健一郎のその手のつなぎ方は明らかに恋人同士のものです。
明らかにおかしいでしょう!」
「おかしくない。
これがわたしたちのお互いの手のつなぎ方だよ」
私は静さんの言い分に馬鹿馬鹿しい気持ちになり健一郎の手を取って連れて帰ろうとする。
「そうですか。でもとりあえず健一郎は連れて帰らせていただきます。
健一郎、帰るわよ」
そう言って健一郎の手を引っ張るが少し引っ張ったところでつっかえる。
見ると健一郎が静さんとつないだ手を離していなかった。
「健一郎、静さんとつないでいる手を離しなさい」
「桔梗、もう少し姉さんと離したりしたら駄目か?」
手を離してないことに戸惑っていたら健一郎が私にそんなことを言ってきた。
しかもそのときの目が最愛の人と別れたくない、という目だった。
雰囲気もまるで今この瞬間愛しい人と引き離されるというようだ。
それで私は気付いた。
彼の心が静さんに向いていることを。
そして彼がこちらを見ることもないことを。
私はそれを悟ったけど無理やり健一郎の腕に手刀を入れる。
健一郎が私からの手刀の痛みで手をつなぐ力が緩んだところで強い力で引っ張って手がつないでいるのをほどく。
「帰るわよ!」
私は大きな声でそう言って健一郎のことを全力で引っ張って店の外に連れ出す。
そして私は車に戻り健一郎を羽交い絞めで締め落した後家へと向かう。
「そう、そうなの・・・・・・・・わかったわ。
なら私にも考えがあるわ」
私は家に帰って健一郎を部屋に運んで鍵をかけそれから大学へと戻った。
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