1-2-5 俺はギャルから連絡先を要求される。
俺と栗栖は教室の前までくる。
「先入れ」
俺は栗栖に先に教室に入るように言う。
「一緒に入ろう」
と栗栖は言う。
「一緒に入る必要がないだろ」
俺が反論すると栗栖がなぜかむくれる。
「いいじゃん、一緒に」
そう栗栖が言った瞬間ホームルーム開始のチャイムが鳴る。
「ほら入れ」
俺が教室に入るように促すと栗栖は寂しそうな表情で教室に入る。
なんで俺と教室に入れないというだけで寂しがるんだ?
俺は栗栖が教室に入った後にもう一つの入り口から入る。
俺が席に座った直後担任の教師が入ってきてホームルームが始まる。
その後は何かあるわけでもなくいつも通り放課後になった。
コンコン
生徒指導室のドアをノックすると入れと言う声が聞こえたため俺は生徒指導室に入る。
「失礼します」
「来たな伊良湖」
あの時俺を抑えてた教師が俺の姿を見て感心した顔でそんなことを言う。
「はい。それで、俺に対する処分はどうなりましたか」
俺はストレートに教師に自身の処分がどうなったか質問をする。
「ああお前の処分だがな、今回は全て不問にする」
「・・・・・・・・はい?」
俺は一瞬教師が何を言ったのかわからず首をかしげる。
「お前は無罪放免だ」
俺が言ってる意味を理解できないと思ったようで教師がもう一度俺には何の処分もないという。
「俺は最低でも1週間の自宅謹慎は覚悟してました。いったいどうしてですか?」
「あの後生徒に聞き取り調査とかいろいろしたんだがな、聞いた生徒全員が『あいつが一方的に殴った』と言っていたからな。
伊良湖に関しては何も手出ししてないから悪くないとも言っていた。
お前が手を出したと言う証言も証拠もないから処分する理由もない。
だからお前に対しての処分はない」
教師が俺が処分されない理由を説明する。
「そういうことだったんですね」
俺は教師の説明で納得がいった。
生徒会長のときも栗栖のときも俺はあれらのときには行動には細心の注意を払っていた。
彼女たちだけではなく俺も被害者と認定されるように。
今回はそれが功を奏したらしい。
「そんなわけだから、もうお前は帰っていいぞ」
教師が返ってもいいと言ったので帰ることにした。
だが扉を開ける直前になって気になることがあったので聞いてみる。
「はい。あ、その前に一つ聞いてもいいですか?」
「何だ?」
教師が俺の
「先輩はどうなったんですか?」
俺はあのクズ男が今回の件でどんな処遇となったのか気になったのでついでに教師に聞いてみる。
「あいつか。あいつは退学だ。学校史上初めての退学処分者だ」
「・・・・・・もしかしてあの先輩過去にも似たようなことを?」
「ああ」
あのクズ男、相当過去にもいろいろやってたらしい。
「あいつ、ことあるごとに問題を起こしててな。学校史上最大の問題児と言われていたんだ。
今までは親が親だったから我々教師も対応に手をこまねいていたんだ。
今回の一件でさすがに我々も看過するわけにいかなくなってな。退学処分にした」
これを聞く限りもしやあのクズ男はどこぞの金持ちのボンクラ息子なのか?
何か匂いがするがそれを知る必要はないし知ったところで何の意味もないからこれ以上考えるのよそう。
「なるほど。そんな理由だったんですね」
「ま、そんなわけだ。じゃ、気を付けて帰れよ」
「はい、失礼します」
俺は生徒指導室を後にする。
俺が駐輪場まで来た時朝と同じようにあの女がその近くに立っていた。
「伊良湖」
栗栖が俺の姿を見るや近づいてくる。
「どうしてここにいる」
俺は栗栖になぜここにいるのか問いかける。
「アンタのことを待ってた」
栗栖が俺を待っていたという。なぜ?
「俺を待つ必要はないだろ。何のために」
俺は栗栖に理由を問いかける。
すると栗栖は俺の質問に俺が見たことがない笑顔で答える。
「アンタの連絡先を聞くためにね」
「は?」
たかがそれだけのために俺を待ってたのか?
俺の連絡先なんて聞いて何になる?
俺はその答えに脳内が混乱する。
「だ・か・ら、アンタのL〇NEでもなんでもいいから連絡先を聞くためにここで待ってたんだよ。
アンタの連絡先教えて」
未だ俺の脳内は混乱しているが栗栖は確かに俺の連絡先を知りたいがためにここで待っていたという。
そして栗栖は俺に連絡先を教えるように要求してくる。
俺はその真意がわからないため栗栖のその要求を拒否する。
「連絡先を知ったところでお前が俺に連絡よこすような用事が起きることはないしその逆もしかりだ。
だからお前が俺の連絡先を知る必要はないし俺も教える気はない」
俺がそういった瞬間栗栖は今度は悲しそうな目で俺に懇願する。
「どうしてもだめ?」
さっきまで強気で要求してきたのに今度は俺にすがるようにして聞き出そうとする。
正直ここまで変化が激しいと何か裏があるとしか思えないな
「なぜそこまでして知りたい」
俺が連絡先を聞きたい理由を訊くと栗栖はその理由を朝とは打って変わってはっきりと真っ直ぐ俺を見据えて答える。
「アンタと、まずは友達になりたいの!」
・・・・・・・・・お、おう?
「まずってなんだまずって」
友達になりたいというのはわかったがなぜまずという枕詞がつくのか。
その意味が分からず俺は栗栖にそう質問する。
「アタシね、アンタに、もしかすると惚れちゃったかもしれないの」
栗栖が俺に惚れる?そんな馬鹿な。あり得ない。
それが仮に本当だとしてもきっかけは一体なんだ?
俺にはそんな疑問がわくが今は一旦それについては考えないことにしよう。
「だからね、本当にアンタに惚れたのか見極めるためにアンタとこれから友達になって一緒に出かけたりとかしたい。
そのために連絡先を知りたいんだ」
その答えならとっくに出てるんじゃないのかね。
そう思うがよく考えたら俺自身この高校に入学してから友達と言える人間がいない。
そのため栗栖の友達になるくらいなら構わないと思いその申し出を受け、連絡先を教える。
「・・・・・・・・・わかった。友達になろう。
栗栖、連絡先教えるからとりあえず電話番号を教えてくれ」
そう言うと栗栖は目を輝かせありがとうと言った後電話番号を言う。
俺は言われた電話番号に電話をかける。
すると栗栖のスマホが震える。
「じゃぁ次はメアドを教えてくれ」
栗栖からメアドを聞き、メールを送信する。するとまた栗栖のスマホが震える。
俺の電話番号とメアドが入ったアドレスが映ったスマホの画面を栗栖が見せてくる。
「じゃあ今日からアタシたち友達ね。近いうちに連絡するからその時はよろしく~」
そう言ってスマホをポケットにしまった栗栖は駐輪場から去っていく。
俺はそれを見届けた後いつも通り家に帰った。
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