プロローグ
長かった夏休みが終わって今日は始業式の日。
先生の終礼の挨拶が終わった瞬間席を立ち家に帰るために出せる限りの速さで歩いていた。
すると特別教育棟への連絡通路と廊下の交差点から突如何者かの手が出てきた。
俺はその手に腕を掴まれ連絡通路に引き込まれる。
そして引きずり込まれたと思ったら何者かに腰に手を回され全力で抱きつかれる。
「捕まえた」
俺の左肩辺りから声が聞こえる。
どうやら俺は誰かに捕獲されてしまったらしい。
そして俺を捕まえた人物は声からしてどうやら女性のようだ。
女性の体特有の柔らかさと俺を捕獲した人の高い体温が俺の体に伝わってくる。
そして女性にしかない2つの独特のモノの感触もほんのり感じる。
アーイイ・・・・・・・・この暖かさに一生包まれてたい。
この柔らかさに一生癒されたい。
「よしよし。いいこいいこ」
赤ちゃんをあやすような声でそう言いながら女性は腰に回していた腕の片方を動かして手を俺の頭の位置に持っていき優しく後頭部を撫でてくる。
なぜだろうか。無性にこの女性に甘えたいと考えてしまう。
このまま甘えて甘えて甘えたいという衝動に駆られる。
そして際限なく甘えたいと思ってしまう。
「あなたには私がいる。安心して私に全てを委ねて」
ああ、このままこの女性に全てを委ねて暖かさに包まれていたい。
・・・・・・・・・・って、何を思ってるんだ俺は!?
そして一体誰に俺は捕獲されたんだ!?
俺を捕まえたのが誰なのか確かめるため全身を動かして振りほどこうとするががっちりとホールドされていて全くびくともしない。
「ダメ、じっとして」
透明感のある凛とした声で諭される。
あれ、この声・・・・・・・聞いたことがあるぞ。
というより最近は毎日のようにこの声を聴いている。
なぜなら俺はこの声の主に毎日放課後にデートに誘われるからだ。
もしかして、今俺に抱き着いている女性は綾瀬先輩か!
「今日こそは放さない」
それはそれは熱い抱擁から逃れようとじたばたしていると先輩はイケメンボイスでそう言って俺がこれ以上暴れないように更にきつく抱き締めてくる。
俺を現在進行形で抱きしめて拘束しているこの女性の名前は綾瀬桔梗先輩。3年。
濡羽色の髪、長さは腰まであり色白な肌と相まってよりその美しさが強調されている。
顔も端正な顔立ちで流し目が似合う涼しげで切れ長の目、そしてブラックホールかと見紛う漆黒の瞳。
身長は平均より少し背の高い俺より少し低いくらい。
男性の平均身長辺りってところか。
なので女性としては身長が高い。
3サイズは知らない。考えてみろ。俺がそんなこと知ってたら怖いだろ?
そして俺が通っている学校、県立荒波高校の生徒会現会長であり、成績は学年トップ。
模試ではどの教科も全国一桁の順位だそうだ。
運動のほうは平均程度だそうだ。
順位も学年で真ん中あたりと聞く。
成績以降の情報は本人が教えてくれた。
そんなことは今はどうでもいいな。
今のこの状況から逃れるために俺は未だに俺に抱き着いている綾瀬先輩を引き離そうとしているのだが未だ離れない。
綾瀬先輩と攻防をしていると今度は横から二本の腕が現れて俺の胸に巻き付けられ背中に存在感が凄まじい2つの膨らみを押し付けられる。
「健一郎、何アタシ以外の女に抱き着かれて喜んでるのよ」
そういって後ろから抱き着いてきた女性が力いっぱい体を締め付けてくる。
「い”だだだだだだ」
俺の体にすさまじい痛みが襲ってくる。
あまりの痛みで意識が朦朧とする。
「何してるの栗栖さん、健一郎から離れなさい」
「嫌!そっちこそ健一郎から離れてよ!」
さっき俺の後ろに抱き着いてきたのは栗栖か!
栗栖麻衣・・・・・・・・・・
金髪ショートで気が強そうなツリ目の大きな目。
そして透き通った青い瞳。
背は低いがとてつもなくボン・キュッ・ボンな体型。
ほどよい肉付きと社交的で快活な性格で数多の男を魅了する。
それが今俺の後ろに抱き着いてる女、栗栖麻衣という女だ。
にしてもなんで栗栖がここに?
俺に異常に強い力で抱き着いてくる理由は何?
どんどん白くなっていく意識の中で理由を必死に考える。
終ぞわからずじまいで意識を失う寸前に強烈な締め付けから解放される。
助かったと思ったら今度は栗栖に全力で体が引っ張られる。
「待ってて健一郎。すぐにこの女の束縛から解放してあげるから」
「私から健一郎くんを引き剥がそうとしたってそうはいきません」
栗栖が綾瀬先輩から俺を引き離そうとする。
だが綾瀬先輩もその動きに対抗して強い力で俺の体を引っ張ってくる。
「生徒会長、離して」
「あなたが離せばいいでしょう」
先輩と栗栖の引っ張り合いが始まる。
行動から察するにどうやら栗栖は俺が綾瀬先輩になすがままに抱擁されているという状況が気に食わないらしい。
一方の綾瀬先輩のほうも栗栖が俺を無理やり奪うような真似をしていることに対する怒りの気持ちを露わにしている。
そして俺は二人の美少女に密着されその上挟まれるという男なら誰もが夢見るであろう状況になっている。
そしてそのせいで現在進行形で二人から結果として胸を押し付けられている。
なぜ俺がこんな風に二人の美少女から求められるようになったのか。
きっかけは春に起こった出来事までさかのぼる。




