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「……ティア姉?」
半時ほどが過ぎた頃、リータは目を覚ました。
目の前にティア姉の驚いた様な顔がある。どうやら膝枕をされているらしい。
「ああっ、リータ!」
ティア姉はリータの顔を抱きしめると泣き出してしまう。
顔に胸が押しつけられて息が苦しいけれど、リータ以上にティア姉は苦しそうに泣いた。
リータはティア姉が泣くのは好きではない。その原因を作ってしまったのが自分なのが悔やまれる。
「リータ、体は大丈夫です?」
泣いてしまったティア姉の代わりにシルヴィが聞いてくる。
リータが苦しそうなのに気づいてティア姉はやっと離してくれた。
半身を起こすとだるさが半端ではなかったけれど、普通に動く分には問題なさそうだった。
吹き飛ばしたと思った左腕は付いていた。動かすと微かに痺れがあるけれど、ヒュドラに噛まれたと思った跡がない。
シルヴィが直してくれたのか、それとも幻覚だったのだろうか。とにかくお礼を言わなければ。
「シルヴィさん、リータは大丈夫です。ありがとうございます」
ほっとした様子のシルヴィの代わりにアイリとヤスカが言う。
「無事で良かった。あまり無茶はするな」
「ホントだぜ。まっ、ヒュドラを倒したのは見直したがな」
「皆さん。ありがとうございます」
ヒュドラを倒した辺りの記憶は曖昧だったけれど、褒められているらしいのでお礼を言っておくことにした。
「リータ、本当に大丈夫なの? どこか痛い所とかない?」
泣き止んだティア姉が心配そうに聞いてくる。
「ティア姉、リータは大丈夫です。何ならヒュドラと戦う前よりも調子良いくらいですよ」
もちろん嘘だったけれど、だるささえなければ調子良いのは本当だ。
リータが言うとティア姉はすくっと立ち上がり、泣いていたのが嘘のように号令を掛けた。
「よし、次の階に行くわよ。みんな、リータは病み上がりなんだから、死んでも守りなさいよ」
ティア姉の無茶振りに苦笑しながら、新たに現れた階段を上っていった。




