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3-2

 お昼に名前も知らない街の食堂で昼食をとると移動を再開する。

 雨もすっかり上がり、久しぶりに見た青空が暖かくて眠くなってしまう。

「リータね――」

「寝てませんよ、ティア姉」

 それでも日の光は暖かくて、睡魔に負けそうになる。

 リータは眠ってしまわないように、疑問に思っていたことをシルヴィに聞いてみた。

「不思議だったのですが、どうしてオウルは一定の温度を保っていられたんでしょうか」

「それは寒くなったら自動で出力が上がるようになっていたからですよ」

「いえ、冬はそれでいいのだとしても、夏はどうしてたのでしょうか」

「夏は出力を下げて…………あれ?」

「シルヴィさんも気が付きましたか。わたし達が止めた時はすでに出力は最低で動いていました。冬の時期に最低出力で二八度を保っていたのなら、夏は気温上昇分がそのまま上がるはずです。それなのに夏も二八度でした。どうしてでしょうか?」

「それは……、魔道具が止まっていたから…………ううん、あの魔道具は止まったら再起動できないはずです。そうなると考えられるのは……」

 シルヴィは両手で頭を押さえると、しばらくしてから声を上げた。

「しまったのです! 魔道具は放熱と冷却の二つがあったのです!」

 メモ帳をべらべらとめくったシルヴィは、最後に近いページを見せて言った。

「この本はもう一冊、冷却用のがあったはずなのです。すぐ戻るのです。見つけないと大変なことになるのです」

 うとうととしていたティア姉とアイリもシルヴィの取り乱し方を見て重要なことが起こったのを察知したようだった。

「ちょっと落ち着きなさいよ。何が起こるというの」

「シルヴィ、説明してくれ。大変なこととは何だ」

 大きく深呼吸をしてからシルヴィは話し始めた。

「魔道具は放熱の魔道具と、冷却の魔道具の二つで一つだったのです。放熱の魔道具だけでは温度調節が出来なかったので、一緒に冷却の魔道具も使って温度を一定に保っていたのです。でも、今は放熱の魔道具を止めてしまった状態なのです」

「とすると、どうなるの?」

「冷却の魔道具だけが働いて、オウルの気温を下げるのです。調べてみないと分らないですけど、放熱の魔道具の規模から考えて、夏でも零下になっておかしくないのです」

 流石に大げさではないかと思うものの、あれだけ大規模の魔道具を作ってしまうほどの魔術師だ。対になる魔道具が小規模だとは思えなかった。

 シルヴィが引き返すように促すと、ティア姉が嫌そうな顔をした。

「オウルなんてほっとけばよくない。熱くて住めないところを助けたんだから、寒いのくらい我慢してもらって――」

 そこまで言ってからばつの悪い表情になる。

「あっ、今のなし。流石に非人道的過ぎたわ。それにわたし達がオウル壊滅の原因とか言われたくないし」

 後半が本音だろうなと思いながら、リータは聞いてみる。

「アイリさんとヤスカさんはどう思いますか?」

「シルヴィの失敗だと思われるのは心外だな」

「可能性があるなら戻った方が良いんじゃないのか。確認に戻っても一日潰れるくらいのロスだ。今更どうってこともあるまい。それに一五〇〇マルカも貰ってるしな」

 どうやら全員一致で戻ることに決まったようだった。

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