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ヴァンター王国の王都であるオウルは、三重のカーテンウォールに囲まれた城塞都市である。
カーテンウォールは街の拡大と共に作られていった為、中心に向かうほど低くて古くなり、所々崩れていた。
自然に崩れた箇所もあれば、街の拡張のために新しいカーテンウォールを作る目的で崩され、再利用された箇所もある。
だから実際に防御力を持っているのは最外壁のカーテンウォールと城壁だけだった。
何故ここまでの予算と労力を掛けるのかといえば、頻繁に北方の小国群と小競り合いを繰り返しているからだ。
オウルには秋と春がない。夏が終わると急に雪でも降るかのような寒さになる。
カーテンウォールの外は急激に気温が下がる季節ではあったが、中は蒸し暑かった。
「あつ~~い。何でこんなに暑いの」
ティア姉の心からの叫びが部屋の中にこだまする。
よせば良いのに涼しい場所を求めて部屋の中をうろついているので、更に暑くなっていた。
昨日も確かに暑かったけれど、今日は更に気温が上がっていた。しかも、外は二日にわたって雨が降っているのにも係わらず気温が下がることはなく、おかげで室内はサウナのような状態だった。
「ティア姉、暑いのは分りますけど、下着姿でうろつくのは止めた方がいいですよ」
その下着姿を見てだらしないなと思いながらも羨ましくなってしまう。
それほどに暑い。
部屋は六階で、宿の前に背の高い建物はないので、窓が開いていようと覗かれる心配はなかったけれど、だからといってパンツ一枚でいるのは無防備すぎる。
仮にも一国の姫様がして良い格好ではないだろう。
「だって暑いのよ。寒い時に着込むように、暑い時は脱ぐしかないでしょ」
勝手の良い理屈だったけれど、道理だとも思う。
「でも北の方の国なのに暑いですよね」
ヴァンター王国はシェレフティオ大陸にある六王国の中でもっとも北にあり、冬は雪で閉ざされると云われるほどの豪雪地帯である。
だからといって夏が暑くない訳ではないけれど、今の季節は少し厚着をしていてもおかしくない時期だった。
「もう、こんな国、早く出て行きたいのに足止めされて、しかもこんなに暑いんじゃ愚痴の一つや百くらい出るってものよ」
オウルに入ってから六日が経っていた。
先日の北方連合軍壊滅戦のおかげで道という道が無くなってしまい、オウルから出るに出られなくなってしまったのだ。
確かに最初から蒸し暑かったけれど、日に日に温度が上がっているような気がする。
気温が下がっていくのなら理解できるのだけれど、上がっていくのは理解できない。
これで雨が上がったら、いったい何度になってしまうのだろうか。
「う~~、水がぬるくて、おいしくないわ。誰か氷水を持ってきてぇ」
無茶な事をティア姉が言っているとドアをノックする音が響いてきた。
「はい。どちらでしょう」
リータがドアに近づきながら返事をするとヤスカの声が聞こえてきた。
「俺だが、入れてくれないか」
チラリと下着姿でうろついているティア姉を見てから返事を返す。
「すみませんが、今は駄目です。簡単な用事なら、このまま伺ますが」
「ああ、じゃあいいや。昼飯のとき話すから」
それだけ言うと、ヤスカは行ってしまった。
果たしてお昼の鐘が鳴る前に、リータはティア姉に服を着せることが出来るのだろうか。
簡単そうで難問だった。




