天災竜イグニスと大賢者ヨハン。
完全にツバキの体を奪ったイグニスが変身を終える。
赤い竜の鱗を全身に纏い、角と翼と尻尾を生やした竜人。
「確かに僕が封印した時よりも君はずっと強い。暗黒竜ヴリトラを吸収して勇者ツバキの体を奪ったんだからね。でも今回僕にもシャンスとメビウスがいるんだ。こっちもあの時と同じってわけにもいかないよ。」
「5属性を手にした我に敵などもはや存在せぬわ。」
イグニスが手を前に出し、5属性すべての魔法を放つ。
「5属性の魔法は僕も同じなんだけど。」
ヨハンが杖から5属性の魔法を放ち、イグニスの攻撃を無力化する。
「そうであったな。では勇者の力はどうだ?」
イグニスが剣を召喚する。
「メビウス。数百年たった今でも僕のことを主と認めてくれるかい?」
「無論でござるよ。拙者の主はヨハン殿。殿とカルア殿だけでござる。」
「ありがとう。」
ヨハンがそう言うとメビウスが光となり、ヨハンに憑依する。
「こうして戦うのは本当に数百年ぶりだね。」
そうでござるな。殿の腕が鈍っていないことを見せてくだされ。
「数百年かかってやっと体を生成するだけの魔力が溜められたんだ。無理言わないでおくれよ。」
ヨハンの右腕に黒い炎を放つ太刀が握られる。
「もう一度封印される準備はいいかい?イグニス。」
ヨハンの言葉にイグニスが反応し、斬りかかってくる。
「シャンス!僕のサポートはないけど手伝ってもらってもいいかい?」
「俺だって偽物とはいえ勇者やってきたんだ。ここで黙って見てるだけなんてありえねぇよ。チャトラ…いや、ヨハン様か。」
「今まで通りチャトラでいいよ。僕は君の師匠。チャトラ先生だ。それはこれからも変わらない。」
イグニスの剣を受け止めているヨハンとシャンスが代わり、イグニスに光の剣を放つ。
「ただの光など、我の闇に消えよ。」
イグニスが空いている左手で闇魔法を唱え、シャンスの放った光は吸い込まれていく。
「その魔法…魔王の。」
「イグニスは炎竜、氷竜、雷竜、光竜、暗黒竜の全ての竜を食べたんだ。普通の魔法はまず効かないよ。」
「それに加えてツバキの体。厄介なんてもんじゃねぇな。」
「僕たちのコンビネーションを見せてあげようよ。シャンス、僕に合わせるんだ。」
「了解。チャトラ先生。」
ヨハンとシャンスがイグニスに向け攻撃する。
二人から次々と繰り出される攻撃をイグニスは剣と魔法でいとも簡単に弾く。
「チャトラ!!」
「分かってるよ。」
一瞬の隙をついてヨハンがメビウスの力を使い、黒炎を放つ。
イグニスの腹に黒炎が当たり、イグニスがよろめく。
シャンスはその隙を見逃さなかった。振り下ろした剣がイグニスの体を斬り裂く。
…はずだった。
振り下ろされた聖剣はイグニスの肩で止まり、その勢いは完全に死んでいる。
「そんな剣で我の体を斬るのは難しかろう?剣とはこういう物のことを言うのだよ。」
シャンスに向け、剣が振り下ろされる。
「シャンス!」
ヨハンが空を飛んで向かうが間に合わない。
「斬れねぇなら斬れるまで斬るだけだ。」
イグニスの一撃を完全には避けきれず、シャンスの左腕の肉を切り落とす。
シャンスはひるむことなく全身の力を足にこめて跳躍、その力を流れるように両手に移動させ、両手で聖剣を持ってイグニスに振り下ろす。
先ほど剣を止められた場所にシャンスの剣が届く。
今度はイグニスの堅い鱗に止められることなく、イグニスの体を右肩から左の横腹へ斬り裂いた。
「ぐっ…なぜただの村人にそんな力が…」
「体の使い方は嫌というほど教えられたんでな。親父と一匹の猫に。大賢者様と王国騎士団団長に鍛えられた村人舐めんじゃねぇ。」
シャンスの言葉にヨハンは笑い、負けじとイグニスに向かっていく。
「人間ごときが図に乗るなよ。少し本気を出すとしよう。」
イグニスの周りに5属性それぞれの魔力を持った5つの光が現れる。




