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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第四章
60/70

同じ失敗はしない質なんでね。

シャンスの体を無数のベロニカの刃が貫き、身を斬る。


「よくやった。君のことは忘れないよ。」


シャンスとともに貫かれたオークが魔力の霧となってベロニカへと流れていく。


「…くそっ。この魔物の統率もお前の能力か。」


「そうだよ。私は魔物なら自分の意のままに操れる。範囲、数、魔物の強さは関係なくね。」


「アイリスの魔物バージョンかよ。しかも霧で包むとかいう条件もなし、チートじゃねぇか。」


「その傷じゃもう思うように動けないだろう?私の剣には『エンシェントフラワー』の蜜が塗られている。体が麻痺して動けないはずだ。」


「懐かしい感覚だなぁと思ってたらやっぱりそれか。」


シャンスの体が麻痺し、倒れ込む。


「君はこのまま私のかわいい魔物に喰われるといい。おいで。」


ベロニカが呼ぶと地面から3頭の二足歩行の斧を持った牛の顔をした魔物、ミノタウロスが現れる。


「グモォォォォォ」


3頭のミノタウロスが麻痺しているシャンスに斧をつき立てようとする。


「俺は何回も同じ失敗はしない質なんでな。」


シャンスは口の中に隠していたミルクから貰った世界樹の葉を噛んで飲み込む。


世界樹の葉は体力、魔力、状態異常を全回復する超絶貴重なアイテムである。

カルアの妹、ミルクから1枚だけもらって、決戦前にいざと言う時に使おうと口の中に含んでいた。


完全復活したシャンスが剣を握って起き上がりながら回転し、次の瞬間には3頭のミノタウロスの首が吹き飛んでいた。


「よくも…僕のミノタウロスを…よくもよくも…」


ベロニカが肩を震わせる。


「あれ?大切なペットだったのか?じゃあちゃんと檻に入れて飼ってろよ。倒しちゃったぜ。」


シャンスがベロニカを煽る。


「…!!もっと勇者らしい発言をしたらどうなんだい?それでも主人公かい?」


「生憎、なりたくてなった勇者じゃないんでな。言葉遣いまでとやかく言われる筋合いはねぇよ。特に魔人にはな。」


シャンスが聖剣を握り直し、ベロニカへと切りかかる。


勇者の鎧を身にまとったことにより、シャンスの体重は移動する際5kgもない。

それによって可能になる高速移動をベロニカは目で負えなかった。


次々と繰り出されるシャンスの連撃を受けきれず、ベロニカの体にいくつもの切り傷ができるが、神経を研ぎ澄ませ、致命傷は避けている。


「くっ…」


ベロニカが手をかざす。


シャンスの上空に20体のオークが出現し、その体重でシャンスを押しつぶそうとする。


見えてるよね。シャンス。


「当たり前だろう?チャトラ先生。」


ひょいっと後ろに飛び、シャンスの目の前にオークの塊が降ってくる。


「…おかしいな?君の中にいるのはエンシェントタイガーじゃないのかい?さっきから操ろうとしてるんだけど上手くいかない。」


僕は偽物のエンシェントタイガーだからね。そんなもの効かないよっ


「だそうだ。」


「聞こえなかったんだけど。」


ベロニカを無視してシャンスが再び構えて光の速さで消える。


ベロニカがそれに反応し、シャンスの剣を止める。


「やるじゃねぇかベロニカ。止めたのは褒めてやるぜ。」


シャンスはベロニカの剣に受け止められたまま体を捻り、剣先をベロニカの心臓へ向ける。


「悪いな。俺の剣、伸びるんだわ。」


「…!?」


シャンスの剣に魔力が流し込まれ、光が伸びてベロニカを貫く。



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