水の都エーテルの歩き方。
翌朝…
「ん…ふぁ…ふぁっ??」
シャンスより先に目を覚ましたカルアは目の前で眠っているシャンスに驚く。
「そうだ私、酔っ払って…シャンス様に言っちゃったんだ。それでキスされて…キス!?」
記憶をなぞって行く途中で信じられない事実がカルアの記憶から語られ、カルアは固まる。
「シャンス様にキスされた…?嘘…うろ覚えだ…」
カルアは緊張をほぐすためとはいえ、大量の酒を飲んだことを後悔した。
「もう1回…ちゃんと…」
カルアがシャンスの唇へと自分の唇を近づける。
「ふぁ…ふぁっ…へくちょいっ!!!」
可愛らしい音とともにカルアの鼻水と唾がシャンスの顔に直撃する。
「ぶわぁぁぁぁぁぁ!!!!なんだぁぁぁぁぁ!???」
「うぇ…あっ…ごめんなさ…」
鼻水をたらしながら謝っているカルアが目の前にいる。
「俺に恨みでもあんのかよ!!!完全に目が覚めたわ!!!…ちょっと顔洗ってくる。」
洗面台へと向かうシャンス。
「またやっちゃった…私のバカ…」
ふかふかのシーツに顔を埋めて、カルアが呟いた。
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朝食をとるため、シャンス達は下の階にあるレストランに降りた。
先にチャトラとメビウスが来ていたが、二人とも目にクマができている。
「おはよう。どうしたんだ二人とも。」
「ちょっとメビウスとはしゃいじゃって。」
「ろくに寝れてないでござる…」
眠そうにゆらゆらと揺れるチャトラとメビウス。
「もう。せっかくのいい宿だったんですからちゃんと休まないとダメじゃないですか。」
君たちのせいだよとチャトラとメビウスが思うが、昨日のやりとりを見ていたなんて口が裂けても言えない。
「今日は思う存分エーテルを楽しもう。久々の休日だ。」
「そうですね!白玉粉も買いに行かなきゃですし!」
「悪かったよ…アイリスを倒せたんだから許してくれ。」
「じゃあ今日のお代全部シャンス様が出してくださいね。」
「仕方ない。わかったよ。」
「やった!!私ここ行きたいです!!」
カルアが「水の都エーテルの歩き方。」の本を取り出し、ページをめくる。
その本はいくつも折り目が付けてあり、赤ペンでカルアが優先度を書き込んでいた。
「もしかして折り目のとこ全部回るのか?」
「当然です!どれも欠かせません。」
「今日中に終わるのかな。」
シャンスがカルアの膨大に折り目が折られた本を見つめながら呟く。
「スケジュールは3日分とってます!!」
朝食を食べ終え、カルアの案内の元、エーテルの街へと出かけた。
最初に立ち寄ったのはエーテルの特産品。ウォーターグラスの工房。
ここでは自分の魔力を使ってエーテルの水を変化させ、アクセサリーやワイングラスが作れる工房である。
その人の魔力の特徴がグラスに反映されるため、同じものは世界にひとつしかない。
旅の思い出や夫婦でのペアグラスなど、人気の工芸品である。
「綺麗…」
「そこのカップルのにーちゃんねーちゃん!体験していくかい?お安くしとくぜ。」
「だってよカルアさん。」
「やります!」
「じゃあ4回分お願いしてもいいか?」
「構わねぇぜ。1人2つ作るってことだな。毎度ありぃ。」
「これでチャトラとメビウスも作れるな。」
「分かってるじゃないかシャンス。僕も欲しかったんだ。」
「拙者も少し興味があったでござる。」
シャンスとカルアが奥の作業場に通され、説明を受ける。各々が水の入ったガラスの容器に魔力をかざし、形にしていく。
そして全員分のウォーターグラスが完成する。
「僕のは小さな僕だよっ。」
チャトラは魔力を器用に調節し、小さなガラスでできたチャトラを作った。
「チャトラ先生はほんと自分大好きだよな。」
むっふふと満足そうに腕を組むチャトラ。
「拙者は殿が付けていたピアスを模して作ったでござる。」
メビウスが作った黒曜石のようなクリスタルがついたピアスをカルアに頼み、耳に付けてもらう。
「メビウスが眠ってたクリスタルみたいだね。」
「左様。殿のピアスに魔力をそそいで作った封印のクリスタルでござる。」
「俺のは自分用じゃなくてカルアに…これを付けてくれ。」
シャンスがカルアにガラスでできた透き通るような指輪を渡す。
「え!?私にくれるんですか??…嬉しい。」
カルアが指輪をぐっと握った後指にはめる。
「ぴったしじゃないですか!!綺麗…」
「カルアの事考えながら魔力流したからな。」
カルアの顔が赤くなっていく。
「チャトラ殿!!月9!!!月9でござる!!!」
「めーちゃんやばいよ!!!シャンスがおかしいよ!!!」
後ろで2匹が騒いでいる。
「大切にします…私からもシャンス様に渡したい物があるんです。」
カルアが差し出したのは白い玉のようなガラスが黒い紐についたネックレス。
「これは…何をモチーフにしたんだ?」
「ぜんざいです。」
「ぶっ。カルアさんらしいな。ありがとう。」
シャンスが笑いネックレスを首にかける。
「お似合いですよ。」
「ぜんざいが似合う勇者って格好つかねぇな。」
二人が笑う。
工房を後にし、エーテルのいろんな美味しい店や景色の綺麗な所を巡る。
束の間の休日はあっという間に過ぎていった。




