カルアの思い。そして泥酔。
「カルア。この肉めっちゃ美味しいぞ。」
「…。」
「カルア?おーい。カルアさーん??」
ぼーっとするカルアの目の前でそれを知らないシャンスが手を振る。
「びゃっ…は、はひっ!!」
「なに緊張してんだよ。俺だってこんな高い宿初めてだけどせっかくのスイートだぞ。もっと楽しもう。」
「あはは…はぁ…そうですね…。」
なぜこの男はこんなにも鈍いのか。そんなことを思いながら迫り来る就寝時間のことばかり考えてしまう。
美味しいご飯に美味しい酒を楽しんでシャンスとカルアは部屋へと戻る。
カルアは緊張をほぐすため、酒をたらふく飲んだのだが。全く酔っていないどころかよけいに目が冴えてしまった。
「カルア。先にお風呂入ってこいよ。」
「!???!!?そ、そそそ、そんなシャンス様…まだ心の準備が!!!」
「はぁ?ああ。高い部屋のお風呂だから準備がいるんだな。じゃあ俺が先に入るよ。」
シャンスが置いてあったバスローブを持ってお風呂に入るため浴室へと向かう。
「なんでシャンス様あんなに堂々としてるの?初めてじゃないの?私だけこんなにドキドキしてるの???」
あらゆる考えが浮かんでは消えていくうちに時間が経ってバスローブ1枚のシャンスが風呂から出てくる。
「おいカルアすげぇぞ。バスタブから泡でてくるぞ!勢い強いやつ!!」
「えっ、そそ、そうなんですかぁ!?!?えー楽しみだなぁ!!!」
動揺しすぎて棒読みになったカルアが立ち上がる。
「早く入ってこいよ。待ってるから。」
「っ…!?…もう!!メテオラ撃たない私に感謝してくださいね!!!」
「なんで!?」
カルアがべーっと舌をだすと浴室へと向かっていく。
「やばいやばいやばいやばい。どうしよどうしよどうしよ。え?これって何??バスローブってどうやって着るの???下着とか着けるの???え、わかんないやばい。しんどい。」
半ばヤケになりながらカルアがシャワーで体を洗ってから湯船に浸かる。
「はぁ…すっごい気持ちいい。もうどうにでもなれ…」
湯船から飛び出す勢いのある泡に体を揉まれ、声にならない声がでる。
「シャンス様が言ってたのこれの事かぁ。」
カルアが泡の気持ちよさで寝てしまいそうになるが、これから起こるであろう事を思い出し、我に返る。
「今日ここで…シャンス様と。」
覚悟をきめ、カルアが風呂から上がり、バスローブを着てシャンスの元へ歩いていく。
「下着って多分つけないのよね…多分すぐ抜いじゃうし。」
バスローブ1枚のカルアが寝室へと向かう。
そこにはバスローブをはだけさせ、布団を1枚腰にかけたシャンスがいびきをかきながら爆睡していた。
ブチッとカルアの中で何かが切れる音がした。
「メテオラ。」
カルアが極大魔法をつぶやき、寝ているシャンスに降り注ぐ。
寝室の家具や壁は魔法に守られていて、メテオラを受けても傷一つつかない。
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!何すんだカルア!!??まさか…アイリスか!?」
「その方がシャンス様にとっては都合が良かったかもしれませんね。」
「あれ??カルアさん??なんでそんな怒って…」
「…私は…そんなに魅力がありませんか?」
「は?」
今頃酔いが回ってきたカルアの目から涙か零れる。
「シャンス様にとって私はただの気の合う仲間なんですか?ただの…それだけの存在なんですか?」
「カルア…」
「シャンス様は鈍すぎます。私がうまく言えないのもありますけど、にしても気づかなさすぎです。ひどいです。」
カルアがお酒の力を使って本音を吐き出す。
「私は…シャンス様が好きです。ムンゴーを取りに一緒に行ってリコリスから助けてくれた時から。ずっとシャンス様が…」
カルアが言い終わる前にシャンスがカルアを抱き寄せ、口を塞いだ。
長いようで短い。唇が触れるだけの口付け。
「…ごめんな。カルアがそんなに考えてたなんて。これっぽっちも思ってなかった。カルア。言われてから言ってしまう俺を許してくれ。君が好きだ。もし誰かと一緒になれるなら。それは君がいい。」
「…。」
カルアからの返答がなく、抱きしめていたカルアを離すとドサッと後ろに倒れる。
顔を真っ赤にして幸せそうな顔をしたカルアがすぅすぅと寝息をたてて眠っていた。
「飲みすぎだろ…さっきのこと覚えてるんだろうな??」
「うへへぇ…むにゃむにゃ。」
「はぁ…カルアさんには適わねぇよ。おやすみ。」
それを部屋についていた水晶で見ていたチャトラとメビウス。
「みた?めーちゃん!!!みた??」
「しかと見たでござるよ!!月9だったでござるよ!!」
手を取り合ってきゃーきゃー騒いでいるメビウスとチャトラ。
ここの宿はペット様がご主人様の無事を確認するために部屋のカメラから映像が見れるようになっている。
「うちのシャンスがついに大人に…」
チャトラがニヤニヤしながら手を目にあて、泣き真似をする。
「くっ…姫が幸せなら拙者も幸せでござる…」
メビウスも負けじと翼で目を覆う。
眠ってしまった二人を他所に、2匹は朝まで先程の光景を話し合い。はしゃいだのだった。




