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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第三章 天災竜 イグニス
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エーテル王国騎士団団長、ユウ・テンペスト。

「エレーナ様!どちらにおられるのですか!!」


王城を駆け回るエレーナ・エーテル。エルを探すのが平和な水の都エーテルの騎士団団長であるユウのいつもの役目だ。


ユウはエルが生まれた頃からエルの世話をしており、ユウにとっては妹のような存在である。


またエルも物心着いた時から遊んでくれるユウを兄のように慕い、ユウへの気持ちが恋心に変わったのは10歳を超えた頃である。


「エレーナ様!!!今日はこんな所におられたのですね...私はもうヘトヘトです。」


「あらユウ。これで終わりだとでも?」


エルがまた走り出す。


「はぁ。少々はしゃぎ過ぎですよ。」


ユウが腰を低くして足に力を込める。


「瞬神。」


ユウがその場から消え、次の瞬間には逃げるエルをお姫様抱っこでしっかりと捕まえていた。


「こ、こらユウ!!風魔法つかっちゃダメ!!ずるい!!!あと恥ずかしいから降ろして!!!」


「できません。降ろしたらまた走り出すのでしょう?私の魔力はそんなに多くないのですから有事の時に魔法が使えないと大変なことになります。」


「こんなに平和な国で有事なんか起こらないわよ。分かったわ。自分で歩くから。」


そう言ってエルはユウから飛び降り、自分の足で玉座の間に歩いていく。


「団長!!」


騎士団の兵士が走ってくる。


「何事だ!!」


「侵入者です!!エレーナ様をお守…がっ…」


兵士の体が大剣によって引き裂かれる。


「どいつもこいつも大したことねぇなぁ。平和ボケしてやがる。」


「何者だ。」


「騎士様に名乗れるような高貴な名前は持ち合わせてねぇよ。そんなことより姫様の心配はいいのか?」


「!?しまっ…」


エルは大剣を持つ男の仲間に捕まり、転移の魔法石で消えてしまった。


「返して欲しかったら王国に伝わる秘宝。ウンディーネの涙を用意しろと国王に伝えとけ。そしたら返してやるよ。五体満足かは知らねぇがなぁ。」


「貴様ぁ!!!」


ユウが剣を抜くと同時に大男が魔法石を砕き、消える。


「エレーナ様…」


エルが消えた場所を見るとエルがいつも身につけていたロケットの蓋が落ちていた。


ユウが手に取るとロケットの蓋は水色の光を放ち、光は南西を差した。


「さすがはエレーナ様。エーテル王国騎士団団長。ユウ・テンペスト。必ずや姫様をお助け致します。」


そう言ってユウは消えた。いや、ものすごい速さでエレーナが残したロケットの蓋が指した南西へ走っていく。


「上手くいったなぁお頭!!王女誘拐なんて土壇場でよく思いついたよなぁ。」


「おうよ!!俺様の機転がきいたなぁ。ウンディーネの涙が見つからねぇからうろうろしてたら王女みたいな格好のガキがいやがった。国王の野郎隠してたんだろうなぁ。」


ガハハと酒を飲みながら騒ぐ盗賊達。


「そんなにお酒飲んでいいの?私を助けに騎士様がきっと来るわよ。」


縄で縛られてなお、エルは気丈な態度を崩さない。


「馬鹿言ってんじゃねぇよ。高い転移の魔法石まで使ったんだ。そう簡単に見つかってたまるもんかよ。ガハハ!!」


「馬鹿なのはあなたたちよ。うちの騎士様。怒るとすっごく怖いんだから。」


エルが言い終わると同時にアジトの扉が吹き飛んできた下っ端で吹き飛ばされる。


「は?」


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