王女エルと隻腕の騎士、ユウ
「あんたは…?」
「エーテル王国王女。エレーナ・エーテルよ。エルと呼んで。あなたたち、お父様を…この国を助けに来てくれたのでしょう?」
「王女?君は洗脳されてないのか?」
「箱入り娘だったから国民も私のことは知らない。アイリスからもお母様が逃がしてくれたからアイリスも知らないわ。」
「王妃様は今どこに?」
エルの瞳が一瞬震える。
「殺されたわ。洗脳されたお父様に。アイリスは自分が王妃になってこの国の実権を握るみたい。」
「…!?ごめん。」
「いいのよ。それよりお父様を、アイリスを止めて。私の国が戦争の引き金になる前に。」
エルが檻の鍵とシャンス達の拘束を解く。
「看守室にあなたたちの武器があるわよ。看守には少し眠ってもらってるわ。」
「ありがとうエル。でもどうやって?睡眠魔法か何かか?」
「殴ったの。」
「え?」
「何度も言わせないで。殴ったの。」
エルはまだ13歳か14歳ぐらいに見える。それが大の大人を拳で気絶させるなんてことはシャンスには考えられなかった。
「とにかく、この先に隠し通路があって玉座の間に行けるわ。今はアイリスとお父様しかいない。急ぐわよ。」
シャンス達は看守室で装備を整え、エルについていく。
暖炉のある部屋にたどり着くとエルは暖炉の上の絵画を動かす。
静かに暖炉が横にずれて隠し通路が現れる。
「ところで赤髪の魔術師さん。あなた針金で開錠ができるの?」
「カルアです。本に出てくる盗賊さんはカチャカチャって開けてたからカチャカチャしようかなって…」
「一瞬でもカルアさんすげぇって思った俺を殴りたいよ…」
「シャンス様ひどい!もう捕まっても開けてあげませんからね。」
開けてあげませんからね。
「もう二度と捕まることがないように祈るよ…どうせ出れないし...」
後ろでカルアが怒っているが気にせず進む。
「この先が玉座の間よ。チャンスは1度きり。私がお父様を抑えるからあなた達はその間にアイリスを倒して。」
「出来るのか?エーテルの国王は武術大会で8年連続優勝した武闘家って聞いてるぞ?」
「ええそうよ。でもアイリスの洗脳で腕は少し落ちるみたい。本当のお父様はあんなに弱くないもの。」
「洗脳っていってもデメリットはちゃんとあるんだな…」
「行くわよ。準備はいい?」
「…大丈夫だ。」
「私達も大丈夫です。」
エルの合図とともに玉座の間にある本棚が横にずれて、エルとシャンス達が飛び出す。
そこには国王はおろかアイリスの姿はなかった。
「…どうして。」
「きゃははっ。国王が言ってた通り。隠し通路があったのね。それにあなたが国王が大事に育てた一人娘。エレーナ・エーテル。」
玉座の間の扉からアイリスが入ってきた。
「アイリス!!!!」
シャンスがアイリスに切りかかる。
「あら。手が早い男って嫌われるのよ。」
シャンスの剣を隻腕の騎士が現れて受け止める。
「ユウ…」
アイリスを庇った騎士をユウと呼んだエル。
その声はとても悲しそうに、剣がぶつかる音にかき消された。




