水の都エーテルとわらび餅、見つめる小さな影。
「見えたぞ。エーテルだ。」
シャンス達がコウン王国を出て四日が経ち、ついに水の都、エーテルへとたどり着いた。
「お待ちを。旅のお方。観光ですか?それとも別件で?」
門番に止められ、シャンスが話す。
「私はコウン王国から来た勇者、シャンスと申します。国王様に魔王軍の魔の手が迫っています。早急にエーテル国王に取り次いでいただきたい。」
「なんと!すぐに国王様へお取次ぎいたします。しばしお待ちを…」
「ありがとう。謁見の時間まで少し観光していってもいいかな?」
「もちろんでございます。ぜひ我が水の都をご堪能ください。」
「やったぁ!!めーちゃん!!和菓子屋さんいこう!!!」
「この4日間寝ずに考えたが拙者はやはり黒蜜でござる!!」
メビウスを肩に乗せたカルアが馬車から飛び降り駆け出していく。
「カルアはもうしょうがないにしてもメビウスキャラ変わってない!?」
あわててチャトラを肩に乗せ、馬車を門番に預けてからカルア達を追う。
「シャンス。」
チャトラに呼ばれチャトラの方を向く。
「僕もきなこ。」
「知ってたよもう!お前こういう時嬉々としてふざけるもん。」
にゃはっとチャトラが舌を出す。
和菓子屋につくとショーケースの中に透明なわらび餅が並んでいて、大量の黒蜜ときなこが入った壺がある。
「綺麗…透き通ってますよシャンス様。」
ショーケースへへばりつくカルアを引きはがして店主に注文する。
「2つくれ。きなこと黒蜜一つずつ。」
「毎度あり。ちょっと待ってくれよ。」
店主がショーケースをあけてわらび餅を2つ分とり、紙でできた船のような形の入れ物に入れていく。
ひとつにきなこ、もうふたつには黒蜜がこれでもかとかけられる。
「あいよ。冷たいうちが一番おいしいから早く食べとくれ。」
「ありがとう。」「ありがとうございます!」
店の前のベンチに座り、わらび餅を一つ口に入れる。
「うまいな。きなこも甘すぎずにいい感じだ。」
「黒蜜も負けてませんよ。ねっとりとした甘い黒蜜が絡まって口が幸せです!」
「黒蜜も気になる。一つくれよ。」
シャンスがカルアの黒蜜を一つとる。
「あ!私の黒蜜ですよ!」
「ん!こっちもうまいな。きなこも食べてみろよ。」
シャンスがきなこを一つ取り、カルアの口へと運ぶ。
「ちょっ…シャンス様…!?むぐっ…」
カルアの顔がみるみる赤くなり、下を向きながらしゃべる。
「…おいひいでふ。」
「だろう?両方買って正解だったな。」
シャンスがカルアのことなど気にも留めず、食べ続けている。
「本当に、本当にうちのシャンスが鈍くてごめんね…」
「そろそろ姫が不憫でござる。もはやシャンス殿の才能か。」
二人から貰ったわらび餅を食べながらチャトラとメビウスがコソコソ話す。
「…きれいなところだな。」
ベンチから見える景色にシャンスは感動しながらつぶやいた。
「エーテルは水の精霊、ウンディーネの加護によって常に清潔でおいしい水がこの噴水から流れ出るらしいですよ。栄養も豊富なので魚がよく育って漁業も盛んなんです。」
「へぇ。詳しいなカルア。」
「これに書いてありました。」
カルアはカバンから本を取り出す。
『水の都エーテルの歩き方。』
「いや観光する人が持ってるやつ!!」
わらび餅を食べた後、いろいろと町を見て回ってた。
お土産屋でチャトラとメビウスが大賢者の杖とローブのレプリカを欲しがり、説得に時間がかかった。
「勇者シャンス様!国王様がお呼びです。こちらの馬をお使いください。私がご案内します。」
「ああ。ありがとう。」
兵士が用意した馬にカルアとまたがり、先導する兵士の後を追ってエーテルの王城へ向かう。
近くの路地で水色の髪の少女が通り過ぎるシャンス達を見つめていた。




