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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第三章 天災竜 イグニス
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旅行気分と悪者になった本物勇者。

「皆準備はいいか?」


雪原地帯から戻り、一日体を休ませたシャンス達はアイリスを止めるため、水の都エーテルへ向かうべく、カルアの荷馬車に荷物を積み込んでいた。


「待ってください!パジャマと…シャンプーと…自撮り棒と…」


「旅行か!!!遊びに行くわけじゃないんだぞ…せめて自撮り棒はおいて行け…」


「ええっ…せっかく水の都に行くんですよ?とっても綺麗なところなので写真に残そうと思って…」


涙目で上目遣いに訴えてくるカルアにシャンスがため息をつく。


「しょうがないなぁ…」


「やったぁ!ありがとうシャンス様!」


カルアが荷馬車にお泊り道具一式を積み込む。


「シャンス殿!!重要なお話があるでござる。」


「どうした?メビウス。」


メビウスが神妙な顔つきで耳打ちする。


「実は…水の都とやらには和菓子屋という甘味処があり、その店のわらび餅が絶品とのこと。しかし味がきなこか黒蜜の二種類あり、拙者はどちらに…」


「そろいもそろって気楽だねぇ!!!!!俺はきなこ派だよこの野郎!!!!」


シャンスがツッコむと同時に荷の積み込みが終わる。


「さて。行くか。」


シャンスが御者台に座り、手綱を握って、水の都エーテルへと向かう。


----------------------------------


その頃、異世界転生し、勇者となったツバキは。


「キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」


エルフの国にある世界樹を守る妖精竜フェアリードラゴンと対峙していた。


「エルフが悪なんて変わってんなこの世界は。世界樹をつかって世界を支配しようなんてな。この世界のストーリー考えた奴は相当ひねくれ者だったんだろうよ。」


勇者ツバキは世界樹を守るエルフがいる村を襲撃、皆殺しにして奥に眠っていたフェアリードラゴンを起こした。


「あいつが世界樹を操るドラゴンか?フレア。」


「左様。かなり強いので油断するなよ。我も力を貸す。」


炎竜フレア。と名乗っている天災竜イグニスが魔力の光となり、ツバキに憑依する。


「力が溢れる…負ける気がしねぇ。」


この小僧。我が憑依しても精神が崩壊せぬとは…やはり勇者か。存分に利用させてもらおう。


イグニスが嗤う。


『天災竜イグニス…復活の噂は事実だったようですね…なぜ勇者があなたのような者に力を…』


フェアリードラゴンがイグニスに竜語で話しかける。


竜の言語は魔力を介して会話する。よってツバキには声が聞こえていない。


『先代の勇者が死に、異世界から転生してきたようでな。この世界の事情を何も知らん。力だけはあるのでな。利用させてもらっている。』


『ではあなたがエルフや私を悪と教え、殺させたのですね…あなたの目的は私の魔力。世界樹のことは眼中にないようですね。』


『左様。我は今一度世界を統べる力を手に入れる。忌々しい魔術師ヨハンがいなくなった世界で。巨大なだけの木などに興味はない。』


木の枝やツルに注意しろよ。ここでは森すべてが奴と思え。


「了解。全て。焼き尽くす。」


ツバキが魔力を解放し、ツバキを中心に炎が広がる。


『なんて魔力…!』


ツバキの周りの木や草がすべて焼き尽くされて後には何も残らない。


『このままでは…』


フェアリードラゴンが翼を広げ飛ぼうとする。


『…!?』


「逃がすかよ。悪いドラゴンさんよ。」


翼を氷の魔法で凍らせ、ツバキは剣を抜き駆け出す。


「炎王剣。」


ツバキがつぶやくと剣が炎に包まれ、刀身が2倍になる。


『こんなところで…ごめんなさい。リーフ…』


ツバキの剣がフェアリードラゴンの首を切り落とした。絶命した妖精竜は魔力の塊になる。


よくやったツバキよ。


ツバキから憑依を解き、フェアリードラゴンの魔力を取り込む。


「これで世界樹が暴走することはなくなるんだな。やったなフレア。」


「ああ。だがまだまだ竜がいる。次に行くぞ。乗れ。」


「ちょっとは休ませてくれてもいいんじゃねぇの…まぁいいか。」


ツバキがイグニスに飛び乗り、エルフの国を後にする。




世界樹を守るエルフとフェアリードラゴンが突如として姿を消した報せはすぐに世界中に知れ渡る。


勇者ツバキは気づいていない。イグニスに騙され、世界を滅亡へと導いていることに。





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