別れ、母から貰った愛情。
「俺が…あんたと親父の息子…!?」
「ちゃんとフォルスに伝えてあげられなくてごめんね…追手が迫っていて時間もなかったし、なにより、あの人に会わせる顔がなかった…」
「俺は…」
「いいのよ。洗脳されてたとはいえ私はあの人…フォルスを殺した。あなたはしっかりとお父さんの仇を討ったの。」
「俺はてっきり…あんたが魔王軍の手先で親父を抱き込んで信用させて…殺したとばかり…」
「さっきも言った通り最初はその通り、あんなに女の人の扱いを知らない人なんか…好きになるつもりじゃなかった。でもね。気づいたら好きだなって。一緒にいたいなって思っていたの。そこにあなたという証を授かった。」
血だまりをすべて吐いて、カデルが話を続ける。
「嬉しかったわ。とっても。ずっとこの幸せが続けばいいと思っていた。でも魔王は許してくれなかった。あの人…フォルスはちゃんとお父さんとしてやってこれた?料理は私よりも上手だったけれど。」
「ああ。最高の親父だった…料理は俺が味覚音痴だから文句言いながらも作ってくれた。」
「味覚は私に似ちゃったのね…私も一応魔人だから。人間の味覚とは少し違うの。」
シャンスの中でいくつも思い当たる節が出てくる。
「ああ。シャンス。何もしてあげれなくてごめんなさい。もっとあなたと…あの人と三人で生きていきたかった…」
涙を流しながらシャンスの頬を撫でるカデルを見てシャンスの胸が締め付けられる。
「何言ってんだよ。まだこれから時間はあるだろう?今までの空白の時間分。一緒にいてくれよ。」
シャンスがポーションを取り出すがそれをカデルが手で押さえる。
「魔人にポーションは効かないの。それに、もう長くないのは自分がよく分かってる。最期に勝手なお願いをしていい?」
「…っ」
「アイリスは今頃水の王国、エーテルの国王を洗脳して兵力を集めている頃よ。」
「アイリス…ラエビガータ…」
カデルが頷く。
「アイリスと…魔王を倒して。あなたは私とフォルスの子供だもの。絶対に倒せるわ。」
シャンスの手を握るカデルの力がどんどん弱まっていく。
「さようなら。私のかわいい息子。愛しているわ。」
「…母さん!」
カデルはシャンスの腕の中で息を引き取り、魔力の霧となってシャンスを優しく包み込んだ。
溢れる涙を拭い、シャンスが覚悟を決める。
はじまりは勇者に助けられ、その代わりをすることになったシャンス。だが母をアイリスに操られ、父を殺させ、自分をも手にかけさせようとした魔王とアイリスへの怒りがこみ上げる。
「絶対。倒してやる。」
拳を強く握り、シャンスはポーションで回復していたカルアの元へ。
「傷は大丈夫か?」
「はい。ポーションで再生させました。そんなことより、シャンス様は大丈夫ですか?」
「ああ。今回は強がりじゃない。カルアからもらった魔法の言葉があるからな。」
父さんも母さんも。俺が幸せにしてやる。一緒にいれなかった分もすべて。
「ならよかったです。私も魔王討伐、手伝いますよ。」「姫が望むのであれば。」
「ありがとう。カルア。メビウス。チャトラも力を貸してくれ。」
「フォルスにシャンスを頼むって言われたしなぁ。トメイトゥ5年分で手を打つよ。」
「はいはい。頼んだよ。チャトラ先生。」
シャンスの顔に笑顔が戻り、立ち上がる。
「そういえばシャンス様は魔人とのハーフだから味覚が人間と違うのよね?…もしかして私も…」
「姫はただの味覚音痴でござるよ。証拠にミルク殿の味覚は普通でござる。」
メビウスを睨むカルアを見ながらシャンスとチャトラが笑う。
いい仲間達に巡り合えた。俺は本当に運がいい。
シャンスがそんなことを思いながらエーテルに向かう準備をするために雪原地帯を王国に向けて歩いて行った。




