現れる父の仇、仮定は確信へ。
「カデルでいいんだよな…?なんでここにいる。」
「私が依頼主ですもの。あなたをここで殺すために。」
「…二つ聞きたいことがある。フォルス…親父を殺したのはあんたか?」
「ええ。最期まで私を抱きしめたまま死にましたわ。馬鹿な人。」
シャンスが斬りかかりそうになるが、憑依したままのチャトラが止める。
「…っ。二つ目だ。お前は元から魔王軍だったのか?」
「うふふ。なかなか察しがいいんですね。私は魔王軍諜報部、カデル・フリージア。元王国騎士団団長を誘惑して引退させた。そしてイグニス復活のためフォルスを殺し、あなたとジークをおびき寄せた。」
「もう喋らなくていい。十分だ。」
シャンスが剣を抜き、斬りかかる。
「あら残念。せっかく息子と会えたのです、もう少しお話をしていたいわ。」
「黙れ。」
シャンスが斬りかかるがそれをひらりと躱し、カデルは話し続ける。
「フォルスの最期はとても惨めでしたのよ。大の大人が涙を流しながら私に抱きついて。息子に会ってくれとも言ってましたわ。私が短剣を突き立てたときの表情をあなたに見せられなかったのが残念。」
「黙れっつってんだろ!!!!」
シャンス!!挑発に乗りすぎだよ!気持ちはわかるけどそれじゃあいつには勝てないよ!
「うるせぇよ!!!俺は…あいつを…あいつだけは…」
シャンスの目にはカデルしか見えていない。夢中に剣を振り回しカデルに走っていく。
「あらあら。フォルスよりも弱いのね。」
カデルに見つめられた瞬間、シャンスの怒りの感情が消える。
消えるというより、別の感情に入れ替えられた。
突然怒りを失い、シャンスの動きが止まる。
「まだまだ子供ですね。」
カデルの短剣がシャンスを襲う。
「シャンスは僕が守るんだ。君なんかに殺させやしない。」
チャトラが主導権をシャンスから強制的に奪い、剣でカデルの短剣を受け止める。
おいチャトラ!!!邪魔するんじゃ…
「君は何のために生きてるのか思い出せ!フォルスの仇を討つためじゃないだろう!?少し頭を冷やすんだ。それに…厄介な能力みたいだ。」
「あなたが噂のチャトラちゃんね。リコリスを倒した猫ちゃん。」
「僕の名前も広まっているのかい?光栄だね。」
「チャトラちゃん!離れて!」
カルアの声と共にチャトラが後ろに飛ぶ。
魔法を詠唱するカルアをカデルが見つめる。
するとカルアの頭の中の魔法を放つという意識がなくなり。溜めていた魔力をそのまま大気へと解放する。
「え!?あれっ?私…?」
「やっぱり…人間の思考を別の思考に入れ替える能力かい?」
「あら。種明かしは重罪よ。」
「正解みたいだね。メビウス!!カルアと変わって!!僕たちには思考操作は聞かない。」
「承知した。」
カルアと主導権を交代し、メビウスが黒い炎を纏った太刀を生成してカデルに向かっていく。
「女性に二人がかりはどうかと思うわよ。」
「それについては申し訳ないとは思うよ。でも君はフォルスを殺した。フォルスは僕にとっても大事な家族だったんだ。」
チャトラがカデルにどんどん剣撃を繰り出す。次第にカデルが受けきれなくなり、体に複数の傷を作る。
「このままだとちょっと厳しいかしら。」
「このまま死んでくれたら僕としても嬉しいんだけど。」
「チャトラ殿!避けろ!」
メビウスが太刀を突き出す。
突き刺さる音が聞こえてその場に倒れたのはメビウスの方だった。
「あら。言ってなかったけど私、魔術師なの。」
カデルの背後から氷のトゲが放たれ、メビウス、カルアの横腹を貫いたのだった。




