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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第三章 天災竜 イグニス
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魔王軍の思惑、解き放たれる天災竜。

時間は少し遡り、勇者と王国騎士団団長が不在のコウン王国の地下。


「まだつかないのかい?さっさとしな。」


そこには魔王軍人事課、ニルの上司であるアイリス・ラエビガータと王国の門番が水路を歩いていた。


「お手を煩わせてしまい申し訳ございませんアイリス様もう少しで王国の保管庫でございます」


衛兵が抑揚のない声でしゃべる。その目は光を失い、アイリスの言いなりになっている。


「さっさとしないと勇者様と騎士団長様が帰ってくるじゃん。いや、きっと悲しみに暮れて泣き叫んでんだろーな。きゃはは。」


アイリスが紫色の長い髪を触りながら高らかに笑う。


「止まれっ!!そこで何をしている!」


アイリスと門番の前に騎士団の兵士が立ちふさがる。


「何って天災竜を解放してあげにきたのさ。何百年もクリスタルにされて魔力をこのクソみたいな国に吸われ続けてるなんてかわいそうじゃないか。助けてあげようと思ってね。」


アイリスが笑いながら話す。


「っ!?そんなことさせるものか!!天災竜イグニスは世界を滅ぼす竜だぞ。解放したらど…」


兵士が言い終える前にアイリスが放った紫色の霧を吸い込み、瞳から光が失われる。


「うるさい男は嫌われるんだよ。ちょうどいい保険になるわ。」



アイリスに意識を奪われた門番と兵士が保管庫の扉を開ける。


「うわぁ。超でけぇ。やばくなーい?」


保管庫の中心に巨大な赤いクリスタルが禍々しい魔力を放ちながら浮いていた。


「天災竜イグニス。私の下僕となり、その力を魔王様に…」


アイリスがクリスタルへ大量の魔力を流し込み、クリスタルの赤い光が強くなる。


「っ…!?え?ちょっとまっ…」


赤いクリスタルはアイリスが流した魔力だけでなく、アイリスに残っている魔力を吸い続ける。


「か…はっ…このままじゃ…」


魔力がなくなり死んでしまう。アイリスは天災竜イグニスを見くびっていた。それがこの結果である。


魔力の吸収が終わり、アイリスの魔力はギリギリ生命を維持できるまでに留まった。


赤いクリスタルが割れ、中から天災竜、イグニスが復活する。


「我の封印を解いたのは貴様か?紫の女よ。」


「はぁっ…はぁっ…そうよ。その力、使わせてもらうわ。」


「はっ。人間風情が我を使役するなど、片腹痛いわ。」


「それは…どうかしら。あたし色に染めてあげる。」


アイリスが部屋に充満させていた紫の霧をイグニスへと集める。


「下らん。」


イグニスはアイリスの洗脳の霧を鼻息で吹き飛ばした。


「なっ…」


「ふむ、まだ力が戻らんな。竜の血がいる。」


そういうとイグニスは天井に向け、息を吐いた。

雷と氷と炎と光。4つの属性を持つ息を。


その息は保管庫の天井、王国の地下を破壊し、空へと突き抜ける。


そのままイグニスは翼を広げ、穴から飛び立っていった。


「規格外すぎるっしょ…申し訳ありません魔王様…ってか魔力が足りない。おい!」


アイリスに呼ばれ門番と兵士がアイリスの元へ。


「もう用事ないから。魔力渡して死ねよ。」


門番がアイリスにキスをする。門番はどんどん魔力を吸われる。ミイラのようになるまで。


門番が終わると兵士のキス。


兵士も魔力を吸われ、ミイラのようになってしまう。


「ごちそうさま。」


アイリスは転移の魔法石を砕いて王国を後にする。



カデルがフォルスを殺し、アイリスが門番にそれを伝え、勇者と騎士団長を王国から引き離し、その間に天災竜イグニスの封印を解き、洗脳するという作戦はイグニスの強大な力の前に失敗に終わった。




イグニスは竜の血を求め、飛び去って行った。





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