再会、シャンスへ伝わる報告。
「カデ…ル…?お前…生きて…」
いなくなったはずの妻、カデルが20年前の姿のままで立っていた。
「随分と老けたんですね。おじいさんみたい。」
ウフフと笑い、口が開いたままのフォルスへと近づく。
「本当に…カデルなのか…?全然変わってないな…」
「いつの間にお世辞なんか言えるようになったんですか。元気そうでなによりです。」
フォルスが目に涙を溜め、こらえきれずカデルを抱き寄せる。
「この20年間何してたんだ…ワシはもう死んでしまったとばかり…」
「エルフの森に行って治療してもらっていたんです。こんなに時間がたってしまいましたが。もう元気ですよ。」
「エルフ…そうか…そうか!よかった…息子が…お前がいなくなってすぐ、牛舎で子供を拾った…名前をシャンスという…お前に会ってほしい…」
フォルスから大粒の涙がとめどなく流れる。病に倒れ、いなくなった最愛の妻の体を全身で感じながら。
「こんなに泣く人じゃなかったはずなんですけどね。年のせいですか?」
「やかましいわ…」
「とにかく、私が戻ったんです。もう泣かなくていいんですよ。」
心臓の鼓動も止まるから。
「っ…!?」
カデルの短剣がフォルスの心臓を貫いていた。
「カ…デル…」
カデルの肩を強く握るが、次第に力が入らなくなり、フォルスはその場に倒れる。
「これでアイリス様がお喜びになられる。次はあなたの息子。」
剣についた血を拭き、カデルは家から出ていく。
その右目から、一粒の涙が流れ落ちていった。
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シャンス達一行は王国に戻り、商人達の料理を露店で味わいながら食卓を囲んでいた。
「いやぁ!!シャンス殿には恐れいった!!リコリスとニル!魔王の主力を倒し、未だ五体満足とは!!」
酒が入り、ガッハッハとシャンスの肩を叩くなれなれしいおっさん、ジークが次々と酒を飲み干す。
「ジークさん、飲みすぎだよ…初対面の時の威厳のある団長姿どこやった。」
「ガハハハ!!よいではないかよいではないか!!!!」
バシバシとシャンスの肩が叩かれる。
うっぜぇ…
「ほらカルアちゃんももっと近くに来てくれ!!そのセクシーな体をワ…」
「ファイヤーボール。」
「あっちゃああああああああああ!!!!」
いつもはカルアにドン引きするシャンスだったが、今回はナイスな判断だったと思う。
「あちちち…ガハハハ!!すまんすまん。ちょうど髭がうっとおしくなっていたものでな!!!手間が省けたわ!!!」
無敵かおっさん。髭の8割りを失い、つるつるになった肌を撫でながら笑うエロおやじに心の中でツッコむ。
「もう。ジーク様、次変なこと言ったら髪も焼きますからね。」
カルアの杖に炎が宿る。
「ガハハハ!恐ろしいのう。絶対にないとは言い切れんからワシも次からは回避を覚えるとしよう!!」
無敵かおっさん。もう一回言っていい?無敵かおっさん。
そんな茶番を見ながら楽しく食事をする。
「ジーク団長!失礼します!!!」
騎士団の兵士がジークの元へ息を切らしながら駆け寄ってきた。
「なんじゃこの楽しい時に…緊急でなければ聞かんぞ。」
「恐れながら…緊急です。先ほど前王国騎士団団長、フォルス様が何者かに襲われ、命を落としたと報告が。」
「!!?」「…は?」
一瞬でにぎやかだったはずの空気が変わる。
「お師匠が…?そんな馬鹿な話があるか!!歴代の団長の中でも一番の剣の腕だったんだ!!ご隠居されたとはいえ、それこそ魔王でないと殺すことなどできん!!!」
団長の気迫に押されながらも兵士は続ける。
「…情報の出どころが不確かなのです。門番が見知らぬ女から聞いたとしか…。」
「ワシの馬を用意しろ!!!」
すっかり酔いが冷めたジークが兵士に命令する!
「ジークさん!!俺も行かせてくれ!!フォルスは…俺の親父だ。」
「なんと!?ならば急ごう、あの人が殺されるなど…」
「私も行きます!」
ジークは半信半疑だったが、嫌な予感が過り、額から嫌な汗が流れる。
兵士が用意した2頭の馬にまたがり、三人と二匹は全速力で村へと駆け出した。




