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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第二章 父親
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カルアの妹と現騎士団団長。新しい杖と武器。

カルアに剣を引き抜いてもらい、傷口をポーションでふさいだシャンスは血が足りず、貧血気味にふらふらしながら教会の中へと入っていく。


奥に拘束され、檻に入れられたキャラバンの商人たちを見つけた。


「ミルク!!!!」


「…おねぇちゃん?おねぇちゃん!!」


カルアをおねぇちゃんと呼ぶ人物。背は低く、カルアと同じ赤い髪を二つにまとめツインテールにしているカルアの妹、ミルクの元へカルアが駆け寄っていく。


「よかった。何もされてない?ケガは?」


「大丈夫。捕まって縛られて檻に入れられただけ。」


「そう。よかった。もう大丈夫だからね。」


「あのへむへむ言う人は?」


「倒したよ。シャンス様がね。」


カルアの後ろでふらふらなシャンスがミルクに手を上げる。


「シャンス様。ありがとうございます。本当になんとお礼を申したらいいのか…」


「いいよいいよ。皆無事だったんだ。それ以上のことは望まないよ。強いて言うならカルアに傷の治療法を教えてあげて欲しい。」


「傷の…治療法ですか?おねぇちゃん何したの?」


「もう。シャンス様は本当に女々しい人ですね。生きてるんだからいいじゃないですかっ。」


「ミルクちゃん…本当に…一生のお願いだ…」


シャンスが涙目で必死に訴える。


「うわぁ…何となく想像つきました…。お気の毒に…でもおねぇちゃんは魔法バカなので…それ以外の知識は『スライムの耳に祈り』ですよ。」


「魔法バカとは何ですか。怒りますよ。」


頬を膨らませて怒っているカルアの後ろから馬の足音が聞こえてきた。


「私はコウン王国騎士団団長。ジークである。状況を説明せよ。」


王国の騎士団がキャラバンの救助へ来たようだ。


「俺が説明するよ。」


「おお、勇者殿。すまない、救援が遅れてしまった。」


ジークが馬から降りてシャンスへ頭を下げる。


「いや。キャラバンを襲った元凶は倒した。護衛のオークもここのカルアと俺で殲滅したから安全なはずだ。」


「なんと…情報によると今回の首謀者はニル・イポメアと伺っている。リコリス・ラジアータだけでなくそやつも打ち倒したと…?さすがは勇者様。このジーク、騎士団を代表して礼を言わせていただく。」


なんで最初へむぅしか喋らないニルの名前が割れているのか気になったが、聞かないことにした。


「とにかく、荷馬車は何台かあるかい?みんなを乗せて王国に連れて行ってくれ。」


「承知した。騎士団よ!商人達の保護を!」


テキパキと動き始める騎士団達を見ながら、シャンスとカルアは近くの石に腰かけた。



「あの…勇者様と魔術師様。」


小さな声で呼ばれ振り向くと、いつぞやのカルアのトメイトゥを投げて潰した中年の商人が立っていた。


「あ!!あの時のひどいおじさん!!!!」


カルアが商人を睨み、チャトラも潰されたトメイトゥの恨みは忘れていない。


「ひっ…あ…あの…この度は本当に助かりました。そして…以前の無礼をどうかお許しください。」


深々と頭を下げた商人が体を戻してから続ける。


「私は王国で武器や魔法の道具を取り扱っておりまして、ストローハット商会の会長をさせていただいております。魔術師様の杖はおそらく非常用のものだと見受けました。よろしければお礼として私の商品を使っていただけないでしょうか?」


「え!?ストローハット商会の会長さん!?」


ストローハット商会は王国屈指の武器商会で、騎士団の剣や鎧もそこから卸されている。


カルアの目が輝き始める。


「杖とかいただいてもいいんですか?」


「ご要望いただければ私共でご提供させていただきます。命の恩人ですので。」


「じゃあイフリートの杖って手に入る?」


「イフリートの杖ですか…一週間ほどお待ちいただければ用意できると思います。」


「やったぁぁぁぁ!!それで!!それでお願いします!!!」


「承知しました。勇者様はなにかご所望の物はございますでしょうか?」


シャンスはニルを倒した際、黒炎に灼かれて灰となった偽物の勇者の剣のことを思い出した。


「剣を一本頼むよ。」


「かしこまりました。我が商会で最上級の一振りをご用意いたします。」


「ありがとう。よろしく頼むよ。」


新しい杖が手に入ると知ったカルアはワクワクしながら荷馬車へと乗り込んでいった。


そしてキャラバンの商人達を乗せた騎士団の荷馬車たちが王国に向け出発したのである。



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「やっぱり一人で食べる飯は味気ないのぅ。」


シャンスが王国へ戻った後の夜、静かになったリビングを見ながらフォルスが一人分の皿を洗っていた。



「あら。一人になっても凝った料理を作っているんですね。」


不意に玄関から聞こえた懐かしい声に意識を奪われ、洗っていた皿が地面に勢いよく落ちて割れる。





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