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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第二章 父親
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魔力を吸収した魔人との戦闘。不死身の肉体。

「人事課ってなんだよ。」


シャンスの質問にニルが呆れたように答える。


「決まっているだろう。魔王軍の労働力確保のために下等生物をさらい、奴隷にする。それが私の役目だ。」


「ふざけんじゃねぇ。無理やり働かされるってのかよ。」


「無理やりとは人聞きの悪い。連れてきた下等生物どもは真面目に働いている。自我を無くし、腕がちぎれようとも、内臓が破裂しようとも、我が主、アイリス・ラエビガータの洗脳を受けてね。」


ニルの迫力に押され、シャンスとカルアが身構える。


「少々、身構えるのが遅かったのではないかな?」


「シャンス!!」「姫!」


チャトラとメビウスが二人を呼んだ瞬間。二人の足元が隆起し、尖った岩が飛び出してきた。


「っ…!?」


シャンスに憑依したチャトラが鞘で岩のトゲを受け止め、体をひねってトゲを受け流した。

同じくカルアに憑依したメビウスは片翼でトゲを防いだ。


「ほう、よく防いだ。人と混ざる魔獣と黒龍。初めて見る。」


この一撃で終わるつもりだったニルが一瞬、驚いた顔をした。



メビウスが憑依したカルアの姿を見てシャンスがチャトラに話しかける。


なんだカルアのあの姿…かっけぇ。なぁチャトラ。俺もあんな感じになりたい。


「こんな時に呑気だなぁ。外見を変化させるのはいいけどシャンス猫耳生えるよ?」


ええ…カルアに言ってチャトラとメビウス交換してもらおうかな。


「バカなこというんじゃないよもう。それに僕たちにも少しは変化あるよ。」


まさか…毛深くなってるのか?


勇者の鎧と仮面でシャンスはその姿が見れない。


「もうシャンスと喋りたくなくなってきちゃったよ…」




「お二方。話している場合ではないでござる。」


言い合いになるシャンスとチャトラをメビウスが一喝。ニルに向けて黒炎を放つ。


メビウスの黒炎を左腕に受けてニルの腕が灼かれていく。


「黒い炎。少々厄介だな。」


ニルはそういうと杖の柄を持ち、引き抜く。


ニルの杖は仕込み杖で、先端が鞘となっていて中から細い刀身の剣がでてくる。


剣を抜き終わるとためらいもせず左腕を灼く黒い炎ごと切り落とした。


切り口から鮮血が噴き出すが、ニルが顔色一つ変えず剣についた自分の血を振り払うと失ったはずの血がニルの腕へと戻っていき、左腕が完全に復活した。


「化け物だね…」「痛みをまるで感じていないようでござる。」


「私はミニマリストでね。必要なもの以外は持たないようにしている。痛みも、感情も。」


絶対あいつの部屋ちゃぶ台と布団しかないぜ。


「ねぇシャンス。お気楽過ぎない?」


だってどうせチャトラ先生が倒してくれるし…


「今回はリコリスみたいにいかないよ…わざと魔力を暴走させてそれを丸ごと吸収したんだ。僕だけじゃ絶対に勝てない。」


初めて聞くチャトラの弱気な言葉にシャンスも言葉を失う。


「チャトラ殿、拙者も微力ながら助太刀いたす。奴も魔人とはいえ魔力に限りはあるはず。」


「頼むよメビウス。君とカルアの魔法が頼りだ。」


「御意。」


メビウスが右手で黒炎、左手でメテオラを同時に詠唱し、ニルに放つ。


「それはさっき見たよ。グランボール。」


ニルの杖から巨大な岩の塊が生成され、メビウスの黒炎とメテオラを消し飛ばし、メビウスへと飛んでいく。


詠唱後の硬直で動けないメビウスは片翼で体を覆い、衝撃に備える。


ニルのグランボールを受け、メビウスが後ろに飛ばされる。


「他愛ない。」



「駄目だよ。油断しちゃ。」


ニルの懐に潜り込んでいたチャトラがニルの左足を切り飛ばした。


「油断?面白いこと言う。下等生物に対して気など引き締めるものか。君たちは家畜を殺す時反撃に怯えながら殺すのかい?」


片足を失ったニルは左手の杖の鞘を地面に突き刺してバランスを取り、右手の剣をチャトラの腹へと斬りつけた。


「うっ…」


急所は避けたが、腹に一撃を受けてしまったチャトラは体制を立て直すため、ニルから距離をとる。


「痛みがないっていうのはそれだけ隙が少なくなる。手強いな。」


ニルは涼しい顔で斬られた左足の再生に取り掛かる。


「おや?」


その瞬間ニルの右足が吹き飛び、両足を失ったニルは地面に崩れ落ちた。


「姫のお体をお借りしている故、近接戦は避けたかったでござるが、これほどの相手。姫。お許しを。」


大丈夫だよめーちゃん。やっちゃえ!


無数の炎の玉を周りに浮かべ、黒く燃える細く長い大太刀を持ったメビウスが倒れたニルへ無数の炎の玉を放つ。


土煙が消えていき。中から両足の再生が終わったニルが現れる。


「もういいかい?無駄な時間は過ごしたくないんだ。」


ニルの剣が関節を外すように伸びてメビウスの翼を貫いた。












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