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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第二章 父親
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魔王軍人事課、ニル・イポメア。

黒い影が教会から飛び降り、その姿が明らかになる。

オークよりも巨大な体で、その体には革製の拘束具のようなものが巻かれ、口にはテープのようなものが×印に貼られている大男だ。


「へっむぅぅぅぅぅぅ!!!ふむぅぅぅぅ!!ふごぉぉぉ!!」


大男が口のテープ越しに何かしゃべっている。


「何喋ってるか分かんねぇよ。」


大男は勢いよくテープを剥がし、口を開いた。


「へっむぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」


「いや最初からそう言ってたんかい!!!」


シャンスのツッコミと同時に大男がシャンスへ突進する。


剣を抜くのが遅れたシャンスは鞘で大男の突進を受け止めるが、凄まじいパワーでチャトラと共に後ろに飛ばされる。


「シャンス様!」


大男が足元に突き刺さっている斧を軽々と持ち上げ、カルア達に振り下ろす。


メビウスが翼を巨大化させ、カルアをつかんで後ろへ飛んで回避する。


「めーちゃんありがとう。」


「姫をお守りするのは当然の事。」


話が通じない大男とシャンス達の戦いが始まる。


「私が隙を作ります!シャンス様たちはそこを叩いてください!」


カルアが炎の中級魔法「フレイムトルネード」を詠唱し、大男を炎の竜巻が覆った。


大男は表情一つ変えず、斧を一振り。その勢いに負けて炎の竜巻が消滅する。


「中級魔法じゃダメってことね。それなら…『ファイアスコール』!」


カルアが炎の中級魔法フレイムレインの強化版。上級魔法「ファイアスコール」を詠唱する。


空に無数のファイアボルトと同等の火の玉が生成され、大男に降り注ぐ。


「へむぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」


カルアの魔法は大男の皮膚を焼き、その巨体にダメージを蓄積させる。


爆炎の中へシャンスが突っ込んでいく。


大男はそれに気づかず火を消している。


シャンスが剣を大男の背中に突き刺す。


「へむぅぅぅ!!!!!」


背中の痛みに叫び、膝をつく。


「カルア!!!」


剣をひねり重傷を負わせ、シャンスが後ろに飛ぶと同時に叫ぶ。

カルアが極大魔法「メテオラ」を放つ


巨大な火の玉が分裂し、そのすべてが大男に直撃していく。


「倒した!?」


「カルアさんそれ言っちゃダメなや…」


シャンスが言い終える前に大男から膨大な魔力が放出され、大地を震わせる。


「シャンス。あいつは魔力を暴走させようとしてる。自我を失ってそこら中の魔力を吸いながら最後には膨張して爆発する。まぁあいつに自我があったかは分からないけどね。とにかくそれまでに倒さないとここら一帯がなくなるよ。」


チャトラから恐ろしいことを聞き、大男へとどめを刺すためシャンスは踏み込んだ。


「待たれよシャンス殿!!」


メビウスの声に足を止める。


「あの大男は確かに魔力を暴走させた。だがあやつの体が膨張しておらん!」


流れ出た膨大な魔力が大男の元へと戻っていく。そして大男はその姿を変える。


「わざと暴走させて魔力を増やすなんて…めちゃくちゃだ。僕も初めて見るよ。」


珍しく動揺したチャトラの声にシャンスも剣を握る力が強くなる。


大男は魔力をまとい、一瞬光った後、静かに喋り始める。


「クソゴミの下等生物にこの姿を見られるとはね。」


大男ではなく、シルクハットを被り、黒いコートを着た細い体の男が姿を現した。だがその実力は先ほどの大男の時よりも数段上がっている。


「魔王軍人事課採用担当、ニル・イポメアだ。よろしく頼むよゴミクズども。」



杖をつき、帽子を外したニルがお辞儀をする。

礼儀正しい素振りだがその目は獲物を見る目をしていた。









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