初めての協力と溶岩竜。
来た道を戻り洞窟とは逆の方向へ進んでいくと今までよりも大きく頑丈そうな扉が現れる。
扉の前には9つの燭台が円を作るように置かれていた。
「きっとこの奥がマグマドラゴンの住処だね。」
カルアが扉に近づき古代文字を解読する。
『手前から右回りに炎の魔法で火を灯せ。一撃で。』
「魔法一回しか使っちゃダメってこと?そんなの無理だよ!私魔法曲げたことなんてない!」
カルアができるのは手から離れないようにする魔力のコントロールであり、自分の手から離れた魔法の軌道を操作するなんて芸当はできない。いままで圧倒的火力で敵を焼き払ってきたカルアには必要のない技術だった。
するとメビウスが円の中心へ飛んでいき、カルアに話しかける。
「姫。拙者なら姫の魔法を曲げられると思います。拙者にファイアボルトを放ってくだされ。」
「何言ってるのめーちゃん!もし当たったら死んじゃうよ。ダメ。」
「拙者はかつて殿に仕えていた黒龍でござる。いらぬ心配はせず、撃ってみて欲しいでござるよ。」
メビウスに説得され、カルアはしぶしぶメビウスに向け魔法を詠唱する。
「いくよめーちゃん!ファイアボルト!」
炎の上級魔法がメビウスめがけて飛んでいく。メビウスは右の翼のみに魔力を集中させる。
するとメビウスの右翼だけが巨大化し、羽ばたくように振り下ろした。
メビウスが生んだ風にファイアボルトは軌道を変え、次々と燭台に火を灯していく。
ファイアボルトが一周し、すべての燭台に火を灯して消えると扉が開かれた。
「めーちゃんすごい!!」
「姫の魔法がなければ扉は開けなかったでござるよ。」
最後の試練を協力して突破した一人と一匹は扉の奥、溶岩竜マグマドラゴンの住処へと進んでいく。
ドーナツ状の岩場へと辿りついた。真ん中の穴にはマグマが今にも吹き出しそうに煙を上げている。
「ここが住処みたいだね。気を付けてねめーちゃん。」
「御意。溶岩竜とは聞いたことがない。きっと拙者が眠っている間に誕生したのであろう。」
カルアとメビウスが警戒しながら進んでいると真ん中の穴から鼓膜が破れるような咆哮が聞こえてきた。
「グルォォォォォォァァァァァァッ!!!!!!!」
「うるっさ!!!でたよめーちゃん!溶岩竜!!」
マグマが盛り上がり、中からマグマの体を持つ液体竜。マグマドラゴンが姿を見せた。
その際にマグマが飛び散り、無数のマグマがカルアを襲う。
「姫!」
メビウスがとっさに右翼を巨大化させ、マグマを吹き飛ばす。
「ありがとうめーちゃん。よし、こっちも攻撃するよ!」
カルアはアイススパイクのスクロールを取り出す。
「アイススパイク!!!」
カルアの目の前で氷のトゲが生成され、マグマドラゴンへ飛んでいく。
マグマドラゴンは再び咆哮を上げる。
「グルォォォォォォァァァァァァッ!!!!!!!」
その咆哮の振動により、アイススパイクは砕け散った。マグマドラゴンは音で氷を振動させ、その形を変形させたのである。
「嘘…唯一の攻撃手段なのに…」
奮発して買ってきたスクロールが効かないとなればもうカルアには攻撃手段がない。紅蓮石はあきらめて転移で帰ろうと転移のスクロールを探す。
「あれ…?おかしいなぁ?転移のスクロールがないよ…」
そう…転移のスクロールは今、カルアのベッドの下にある。
「まさかね。忘れた?いやいやいや。さすがにね?」
変な汗をかき始めるカルアへマグマドラゴンが口からマグマを吐いた。
「うえっ!?」
「姫!!!」
スクロールを無くし、戸惑っていたカルアの元へマグマよりも速く、メビウスが飛んでいく。
…『魔力の黒い光』となって。
さのです。魔力の黒い光となったメビウス。気になりますねぇ??
今日の更新はこれで終わりですが、まだまだ皆さんに更新を待ち望んでいただけるよう、話を考えていきます。
ご報告ですが『第7回ネット小説大賞』(旧エリュシオンノベルコンテスト、なろうコン)にエントリーしました。一つの作品として参加する以上、今まで以上に内容を濃く、かつ楽しいものにできるよう精進していきます。
「これからも僕とシャンスの活躍を見届けてくれると嬉しいんだよっ。」
さのとチャトラでした。




