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運がいいだけの偽物勇者  作者: 麦瀬 むぎ
第二章 父親
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修行二日目、成長と元騎士団団長。

「さっきの動き、ワシが本気を出すまで避けていたのはチャトラじゃろう?」


気絶したシャンスを布団に投げて、フォルスはチャトラへ話しかける。


「なーう?」


「言葉は話せんのか…ならばどうやってシャンスと意思疎通を…」


「喋れるよ。」


もう隠すこともないだろうとチャトラは口を開いた。


「やはりな。チャトラは他の生き物に乗り移ることができるのか?」


「ううん。全部じゃない。魔力の波長が合った相手にしか憑依はできないよ。」


「ふむ。シャンスに憑依したのはさっきが初めてではなかろう?」


「そうだよ。最初は『いにしえの森』でシャンスがリコリスに殺されそうになった時。」


「リコリス・ラジアータか!?あれに会ってよく生きて帰ってこれたな…」


フォルスは騎士団時代、リコリスと何度か戦っている。


「シャンスと僕の波長が合っていなかったら勝てなかっただろうね。」


「リコリスに勝った!?ありえん…あれは腕を切り落としてもツルによって再生する化け物じゃぞ!」


「だから回復しきれないダメージを与えた。そして魔力を暴走させたからそこに大きな魔力を流し込んだだけだよ。」


「チャトラよ…お前は本当に何者なんじゃ…」


「僕はただの魔獣だよ。僕みたいなのにはまだあったことがないけどね。」


チャトラがトメィトゥを口いっぱいに頬張る。


「それで、何故シャンスに力を貸している?」


「僕は森でとても暇してたんだ。そこに弱っちいシャンスが来ておいしいトメイトゥをくれて。それでシャンスについていくことにしたんだよ。」


…面白いことにもなってるしね。心の中でチャトラが笑う。


「そうじゃったのか。とにかく、息子を助けてくれて感謝する。チャトラの憑依があればシャンスは予定よりも早く、剣を振れるようになるじゃろ。」


「僕に任せてよ。今のシャンスじゃいろいろと不安だしね。」


「間違いない。」


ガハハと豪快に笑うフォルスにチャトラもまた微笑むのであった。




そのころシャンスはというと。


「ぼ、木刀が飛んでくるぅぅぅぅ…ぐぅぅ…ぐぅぅ…」


昨日と同じ悪夢を見ながら疲れた体を癒すため、起きることなく眠り続けていた。




翌朝。またもやニワトリの鳴き声に起こされ、シャンスとチャトラは同時に体を起こす。


当然髪の毛と毛は爆発している。


「風呂…」「なーう」


とぼとぼと一人と一匹が風呂場へと足を進める。


「その寝癖はどうにかならんのんか…」


「無理。」「なーお」


寝ぼけた声で返す一人と一匹。


「まったく。さっさと風呂入ってこい。飯にしてそれから修行じゃ。」


フォルスが味噌汁を味見する。


「やはり薄いのう…シャンスはこれがいいと言っていたが…」


味音痴のシャンスの舌をうならせることは難しい。味音痴用のレシピなどないのだから。



「あれ?今日は剣持っていいの?」


「剣を捌くコツはもうつかめたじゃろ。あとはそれが自然にできるように繰り返せ。次は剣での防御と攻撃、その基本を叩き込む。」


向かい合ったフォルスは構えを解く。


「今日はワシに一撃入れられたら終わりにする。もちろん反撃もするけぇ。油断して攻めすぎるなよ。」


「構え解くとか舐められてんなぁ!!速攻で終わらせてやるよ!」


昨日フォルスの攻撃をただ避けていたわけではない。チャトラの憑依によって何倍にもなった反射神経と動体視力でフォルスの攻撃、立ち回り、癖を見ていた。


フォルスの踏み込みを真似て、シャンスは構えていないフォルスへと突進する。


「だから甘いと言っとるじゃろう。まったく。猪のほうがもっと頭を使うぞ。」


フォルスは構えを解いたまま、シャンスの剣を受け止める。


…はずだった。


シャンスの剣はフォルスの剣に受け止められる寸前で止まり。シャンスがしゃがみ体を回転させる。


「っ…!」


予期していなかったシャンスの二撃目をとっさの判断で後ろに飛び、回避する。


「あれ当たらねぇとかどんだけチートだよ。」


ちぇっと舌を鳴らしてシャンスが地面を蹴る。


「今のはいい動きじゃった。ちぃと焦ったわ。」


昨日のチャトラの憑依のおかげで見えるようになったフォルスの動きだったが、本気のフォルスはやはりそれ以上の速さだった。


「せっかく一撃で修行終わらせてやろうと思ったのによ。」


「不意をついただけで成長した気になるのは感心せんのう。じゃがワシも本気で攻撃させてもらうとしよう。」



フォルスが構える。いつもの剣道のような構えではなく、体を斜めにし、剣を片手で前へと突き出す、騎士団時代の構えを。

さのです。ただいま初投稿から4日目の11月24日現在で総合評価18pt、ブックマーク4名様、2名様から感想をいただき、本当にありがとうございます。

これからも1日3話。約5000文字を目標にテンポよく書いていけたらと思います。

一応何回も読み直して誤字や話がおかしい部分は修正していますが。見落としていた場合、ご指摘いただけると幸いです。


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