嘘と運と魔法と剣と
はじめまして。さのと申します。今回の作品がはじめての投稿となります。拙い文章ですが、皆様のお目汚し失礼致します。
どこにでも、誰にでも、運の善し悪しは必ず存在する。
だが運というものは目には見えない。
なので実際には起こった結果で運の善し悪しを判断するので運がいいから怪我をしなかった。などというのはただの結果論である。
だがそれは現実の世界の話。
これから語る物語は筋力 技量 魔力 体力 素早さ 、そして運という6つのステータスという概念が存在し、運の数値が高いから怪我をしない、苦労しなくても欲しいものが手に入る世界の物語である。
そしてその世界で、運のステータスが高いのに最も不運な、そして運以外は最も平凡な村人の最も不運な1日から始めるとしよう。
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村人は走った。今までで1番速く。
1番速くと言っても素早さのステータスは一般的な村人の平均、せいぜい50mの距離を8秒ほどで走れる程の素早さである。
村人は何故走っているのか、それは突然現れたこの世界の魔王に暇つぶしに殺されるところだからである。
その名をシャンス。コウン王国の農村区画にある村の村人で、普段は牛や羊などの家畜を育てて生計を立てているただの村人Aである。
「おかしい!!絶対におかしい!!魔王はおかしい!!」
絶叫しながら走るシャンスは生まれ持った運の高さで魔王の攻撃を避けつつ走っていた。
「ほうれほうれ。逃げるが良い。我を楽しませて見せよ。」
陽気に空を飛ぶ魔王が火属性の初級魔法 ファイヤーボールをシャンスに放つ。
その前だけを見て走っていたシャンスは豪快にコケる。
「どぅえっ!」
情けない声で転んだシャンスの頭上をファイヤーボールが通り過ぎ目の前の木々を焼く。
「ほう。運のステータスが異常に高いようだな。だがこれで終いだ。」
魔王の手から無数の火球が飛んでくる。
シャンスは死を覚悟した。
しかし火球はシャンスに直撃する前に上から落ちてきた光によって消滅した。
「大丈夫かい。不運な少年。こんな農道で魔王に襲われるなんて、よっぽど運のステータスが低いんだろう。でももう大丈夫。」
捨て犬を見つけた時のような同情の目をシャンスに向ける青年。
その身に高そうな鎧を纏い、高そうな剣を腰に差し、高そうな仮面を被った人物をシャンスは見つめた。
「勇者か。なぜ貴様がこのような所にいるのだ。」
魔王が不思議に問う。
それはお前にも俺は言いたいとシャンスは心の中だけで呟く。
「君に答える義務はないよ。…国王様がこの村のチーズがすぐ欲しいとダダをこねたものでね。」
「いや言うんかい。そして勇者にチーズ買いに行かせる国王よ。」
シャンスがツッコミを入れる。
「ほう。ではこの村人を我が殺すのには無関係であろう?さっさとはじめてのおつかいに行かなければならないのではないか?」
「残念だが、チーズのおつかいは4度目だ。」
そう言って勇者は輝く剣を抜いた。
「いやいや。せめて私は勇者だから困っている人は見過ごせない。とか言って剣抜けや…チーズのおつかい4度目て…魔王もはじめてのおつかいとか言うな。」
おつかい という単語を繰り返す勇者と魔王にシャンスがすかさずツッコミを入れる。この時点でもうこの物語のツッコミ役が誰か、皆さんならば想像できたことだろう。
勇者が魔王へと一瞬で踏み込みその聖剣を魔王に振りかざす。
魔王は魔法の盾を召喚し、左手て防いだ。そして空いた右腕でシャンスを焼こうと放ったファイヤーボールよりも威力の高い上級魔法。ファイアボルトを放つ。
上級の火球を食らった勇者は少し焦げた鎧とともに後ろに飛ばされる。
「さすが勇者よ。我の魔法を食ろうてもその程度とは。」
「さすがにこの防具でなければ致命傷だったね。」
そして魔王と勇者の戦いが始まる。
魔王城とか王城でもなく、村の近くの林道で。
「最終決戦林道とかどこのファンタジー世界よ???」




